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「いたいけな彼女」と壊れた共依存の形

 ※以前に書いた記事を加筆修正したものです。近々、ZERO関連の記事を書きたかったのでついでに。

いたいけな彼女

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 今回は、自分の中で想い入れの強い作品である「いたいけな彼女」の話をします。

 一見可愛らしいジャケットながらも、首輪や破れたノートから漂う不穏な空気や、教室の端で白いカーテンの下照らされる儚げなヒロインというアンバランスさで本作の歪さが表現されており、100点。

 この「ほのか」ちゃんがタイトルであるいたいけな彼女でして、本作唯一の攻略ヒロイン。

 かわいい。特に最後の「過激な性的、暴力的表現、行為は絶対に真似をしないでください、なのっ。」が、ありがちな美少女ゲームらしい警告文とのギャップで、急にどうした!? という感じが素晴らしいです。


求め合い傷つけ合う不器用な偏愛AVG


 いたいけな彼女は、ZEROから発売されたミドルプライスの美少女ゲームです。はじるすシリーズのメーカーですね。
 ZEROは本物のメーカーなので、本作のような名作を生み出した次に「妄想念波通信」なる、エロエロな超能力で女の子をエロエロにしていくだけのゲームを打ち出してきます。

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 いじめられっ子であるほのかちゃんと、クラスでもカースト高めな少年の偏愛がテーマ。ジャンルは「求め合い傷つけ合う不器用な偏愛AVG」

 簡単なあらすじとしては、友人との罰ゲームでいじめられっ子に告白した、付き合うこととなった主人公。残酷な事に罰ゲームを与えた友人たちのグループこそ、積極的にほのかちゃんを虐めているスクールカーストの高い生徒たち。こうして、求め合い傷つけ合う不器用な偏愛が始まっていく。
 因みにリニューアル版のタイトルは「いじめられっ子物語」に。直球すぎる。

あまりに辛辣すぎる主人公

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 クラス上位かつイケメン設定の主人公からすると、罰ゲームで付き合っているだけの目障りな存在であるほのか。当然、愛情の欠片もない彼女に主人公は厳しく当たり、「俺が本気でお前なんかと付き合うなんて、あり得ないだろうが…」と純愛ゲーの主人公なら気が狂っても発さない台詞がぽんぽん出てきます。

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  序盤の楽しみは主に主人公の辛辣なセリフ集にあります。健気に自分についてくるほのかちゃんに対し、内心で悪態をつくばかりか……

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 作ってきた弁当を床に叩きつけることまでできます。ここでのポイントは飽くまでプレイヤーの選択次第なので、自分の意志で彼女を傷つけているという罪悪感を植え付けられる部分。

 今後もプレイヤーは彼女の好意を踏み躙るばかりか凌辱する事さえできますし、それらは全て主人公でなく自身の選択という意思が確かに介入する仕組み。普段は遠慮なく凌辱モノで射精しているオタクの良心は、どこまで耐えきれることができるか、ほのかという存在に試される。

 ちなみに、一時期「作ってきた弁当をゴミ箱に叩き込みたい東方キャラ」というスレが流行していましたが、本作の影響が伺えますね。今作の主人公は、彼女の弁当を床に叩きつけた上で「10年早いんだよ」と格ゲーの勝利台詞のような発言がでてくる本物の男です。

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 そんな主人公を相手にしても、彼女は「へーきっ」と毎日毎日後ろをついてきてくれます。この作品はモブまで含めて異常者しか居ないので、体育教師からクラスの生徒まで全員が彼女を性的に狙ってくるのですが、なんだかんだ一応彼女ということで助けてしまう主人公……。

 このまま、ずっと信頼してくれるほのかちゃんの献身的な態度に惹かれ、正式な恋人に……なる訳でないのが本作のポイント。むしろここまでは序章にすぎず、これから底なし沼のようにドロドロとした求め合い傷つけ合う不器用な偏愛が始まり、真にいたいけの意味を知っていくのです。

【いたいけ】:幼くてかわいいさま。いといけなさま。

 ある日、主人公は遂に過酷な虐めに耐え続けることや、決して誠実に接していない彼氏についてき続けることに対し疑問を感じ、単刀直入に彼女へ訊き出すことに。

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 そこで飛び出した予想外な返事が「あの…私、変だって…言ったでしょ…?」

 穏やかなBGMが急に止まり、蝉の声のみが反芻した後、動揺する主人公を見つめながらほのかちゃんが続ける。

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 次々語られる彼女が「変」である部分。両親から虐待を受け、命令をこなさぬ限り食事すら許されない生活を続けてきたほのかにとって、他人の言うことを受け止め続ける人生の方が楽であると。そして、恋人である主人公の命令に従い続け生きていきたいと本音を吐露。

 クラスで虐められる前から、主人公と付き合う前から、立派にいたいけな彼女の精神は壊れてしまっていました。

 大多数のエロゲユーザーなら、ここで主人公が彼女のトラウマを救うシナリオへ進んでいくと予想すると思われますが、今作では、実は主人公も物語開始前から両親とのトラブルにより既に壊れていたのです。

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 彼女の力になるばかりか、自分だけの玩具ができたとドス黒い感情に支配され、ますます厳しくなっていく主人公。上記のセリフ語に「でないと、別れる」と続く。間違いなく本物の男に。

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 翌日からさっそく有言実行する主人公。排泄すら命令を受けなければ行けなくなったほのかちゃんに対し、トイレに行く許可を出さず授業中に漏らさせます。これにはいじめっ子もビックリ。何度見ても、ほのかちゃんより後ろの席の男子のほうが険しい表情をしているのが謎。

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 主人公の過激な命令はどんどん加速し、ほのかの全身もボロボロに。彼女をクラスメイトに金で売ったり、ノーパンやバイブ付きで登校させるというAVの見過ぎな鬼畜行為を行う毎日。それでも、「へーきっ」「好きだから、いいの」と彼女は必ず後ろをついてきます。

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 最悪の選択肢。

純愛ルート・凌辱ルート

・純愛

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 ここで、物語は純愛と凌辱ルートに分岐。過酷な命令に耐え続けるいたいけな彼女に負けた場合、どんどん主人公の感情が軟化。「なんだ、所有物」と口は悪くとも、確実に彼女との距離感は近くなっていきます。

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 このルートの本質はここで、命令を受け続けることで彼女は生きている実感を得ている本心を突きます。
 虐められなければ、命令されなければ、そもそも他人と関われず存在すら認知されない人間も居るのです。

・凌辱

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 凌辱ルートでは、当然彼女に酷すぎる仕打ちを続けていくのですが、人間の精神は不思議なもので、与えられた命令をこなしていくうちに、段々と命令者へ特別な念を抱きはじめ、やがてはどちらが依存しているのか分からない程に、関係は醜く進んでいきます。

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 彼女の愛情に負け始め、次第とポエミーになっていく主人公。「その儚さを、もっと俺で儚くしてやる」あたりは、DV彼氏の枠を飛び越えて詩人の域に。

 度重なる凌辱……それも主人公相手でなくクラスメイトや校長などを相手に行われる性的な虐めに、何度も挫けそうになるほのか。しかし、その度に抱きしめられては恋人への愛情を再確認し、またも命令を忠実にこなす儚い人形に。

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 あまりに幼気すぎるほのかに、流石の凌辱ルートでも遂に「なんでぇっ!?」とギャグ漫画のように怯えます。更に、それに対しての返しが

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 「好きだから」と単刀直入かつ、この上なく歪な答えが。どれだけ他人から見て穢れていても、暴力とセックスに塗れた異質な感情でも、二人は惹かれ合っていく……。凌辱の中で芽生える壊れた純愛。

 周りの価値観は既に関係なく、例え物語上はエンディングの流れないバッドエンドだったり、シナリオ上は凌辱ルート扱いだろうと、きっと二人はいつまでも離れられず愛し合っていく。それはそれで幸福なのでしょう。

 純愛・凌辱の両シナリオのどちらが幸せなのかプレイヤーの解釈次第であることが、僕の考える本作の一番の魅力です。

 そんな「いたいけな彼女」は、DLsiteにて約2000円! こんな駄文で少しでも興味を持ってもらえたならば、明日は3食抜いて代わりにほのかちゃんのためにお金を回してあげてください。

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