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一口エッセイ:文化の継承

 どうしてもわかりやすく「若者」で一括りにされてしまうものの、人間は十人十色、若者が全員若者らしいコンテンツにハマっているわけではない。サブスクや配信で往年の名作どころか隠れた名作にも簡単にアクセスできる時代で。
 なんなら、僕だってみんながPS3とWiiの時代に、セガサターンとVHSに夢中であった。サターンでしかプレイできない美少女ゲームや、当時は配信が整備されてないためビデオでしかないアニメを観るためにビデオデッキが必要だったのです。まだギリギリ那覇に一軒だけビデオを貸し出ししている個人店があったため、そこでマイナーなOVA……イクサー1やKEY THE METAL IDOLなどをレンタルしていました。
 サターンやセル画アニメは、当時からもうオーパーツ扱いでしたが、時代が違うだけでその魅力が損なわれるわけではない。たしかに操作性などの面で不便ではあるものの、そこにしかないものがたくさんある。現代人はショート動画や倍速視聴を覚えてどんどん映像作品を高速で消費するらしい(これは若者だけに限らない)。そこでの論争は置いておくので、興味のある方は『映画を早送りで観る人たち』をご参照ください。倍速視聴は罪なのかだけに焦点を当てた一冊です。


 が、みんながみんなTikTokやYouTubeのショート動画に夢中なわけではないでしょう。むしろ、そういった高速でクラブカルチャーっぽいノリを毛嫌いし、黙々と穏やかに読書や映画鑑賞するのが趣味の中高生だって少なくないはずだ。僕だって10代の頃は「若者に人気!」とされている流行に逆らってきたのだし、Discordサーバーでの様子を見てもやはりいるっちゃいる。この人たちの数%が、過去の名作で現代でも継ぐべきモノだと感じた要素を創作に盛り込み、令和らしい演出と融合させて世に出ることとなる。
 庵野監督も、『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン』にて、愛すべき昭和特撮の演出を継承したいという旨を書いており、実際にエヴァは特撮(主にウルトラマン)・ロボアニメ・私小説の三すくみのバランスで構成されているような印象を受けます。ウルトラマンやセブンで発揮された実相寺監督らしい演出がエヴァに引き継がれている様は、両方とも観比べると一目でわかります。特にメトロン星人の回は、かなりエヴァへ影響を与えたであろうと想像している。
 世の中、一定数「変なやつ」は生まれてくるし、今ではそれが「発達障害」と名前をつけられているかもしれない。けれども、そんな変なやつがなんらかの拘りを拗らせて時代に埋もれそうな文化を愛し、継ぐ意思を見せることもあるでしょう。ショート動画が台頭する裏で、虎視眈々と「曲に合わせて騒ぎたいだけのヤツらに負けねえ!」って鬱屈した感情を膨らませた若者が勝つこともある。流行の人気作品はやっぱりちゃんと面白いんですけどね。それを認めきれない青さも味となるかもしれないし、引き摺りすぎて若くして老害扱いとなる可能性もある。
 といったことを考えているわけですが、カルチャー云々の話をもうどうでもいいとして、先述したセガサターンの画面の話をします。

 僕は、この画面が最もカッコいいと植え付けられていて、ざっくり「この感じ」に憧憬を抱き続けているのですが、ドット絵のねんないさんからも話を聞いて今一度この画面に向き合ってみた際、一つ一つの要素はセガサターンの時代だから味がでたもので今だと、この雰囲気を表現するのはかなり難しいことがわかりました。
 単純に、ドット絵ではないんですよね。UIやアイコンにドットは使われているので馴染んでいるものの、立ち絵はイラストです。それが低い解像度で読み込まれているのでジャギジャギになり、結果的に「ドットっぽい」印象を与えているものの、正しくはちがう。立ち絵までドットにするとさらに古いPCゲームの方に近く、セガサターン特有の輝きが薄れる。この解像度でもみんなが熱狂し、またブラウン管や狭いモニターのおかげで違和感もほぼない、あの瞬間だからこそ堂々と生まれた画面なのですね。

 で、こちらは簡単に再現したものです。どうでしょう? お久しぶり先生のシュッとした絵柄とレトロなUIのミスマッチ具合が逆に気に入っているのですが、元の解像度がめちゃくちゃ高いものをあえてジャギジャギにするの結構いいじゃん……と自分では「うむうむ」と頷いていたりする。もう少し明るさは暗めでいいかなって微調整は必要ですが、ただ「サターンっぽい画面」を眺めて死んでいく老後も悪くないな〜と考え始めてきた次第。結局、本人の「好き」が満足するかどうかが先で、文化の継承自体は後付けの高尚な理由なんでしょう。


 もう合同誌が少ししか残っていないので、BOOTHをそろそろ締めます。いそげ! 商業エッセイ集もよろしくね♪

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