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ザラブ星人 The Love

 中野ブロードウェイで人間サイズのザラブ星人スーツを見かけ、食い入るように見惚れてしまった。ザラブ星人の一目で分かる怪しげなデザインが素晴らしい。


 人間サイズの光の巨人たちはわりと見慣れてしまったけれども、こうして怪獣が展示されているとすごく嬉しい。それにザラブ星人は本編でも人間サイズで登場するわけで、そうなるとリアリティを感じてより見惚れてしまう。「いま目の前の異星人が実際に動いたら、話しかけてきたら」と想像してゾクっとする感覚がたまらない。

 ザラブ星人の魅力は、なんといってもその知的な侵略手段だ。シンウルでもそうでしたね。他怪獣とちがって人類へコミュニケーションを試みて接近する異質さ。会議に乗り込んで対話を始まるザラブの描写は非常に怖い。
 常識が一瞬で塗り替えられる恐怖。巨大な怪獣が街中で暴れ回るのとは違った、等身大のいやな汗が噴き出す。目の前に地球上ではありえないフォルムの生物が動いていて、しかも我々と同じ言葉で会話ができる。ありえない生物との会話ができてしまうことの不穏さは正しく空想科学特撮ならでは。
 ザラブ登場回のサブタイトルが、またかっこいい。『遊星から来た兄弟』。じんわりと日常が侵略されていくようなジメっとしたホラーが感じられる。

 この回の大きな魅力は、大人気怪獣(?)ニセウルトラマンだ。正義のヒーローが悪堕ちした姿というのは、どんな時代でも少年の心を刺激する。そりゃシンウルでも抜擢されるほどだ。
 正義の味方であるはずのウルトラマンが街を破壊している! 果たしてウルトラマンは人類の敵か味方か!? 現代なら数話引っ張りそうなテーマなのだが、そこは昭和。本物のウルトラマンが現れすかさず偽者を撃退!
 現実的に考えたら、このウルトラマンもまた人類の味方を演じる偽物の可能性を考えたり、そもそも意思疎通できない宇宙人をまた信じるのか? と議論されていくのでしょうが、この回は「やっぱりウルトラマンは正義の味方だ!」で締める。このスピード結論が良い。「結果的に人類の味方に見える巨大な存在をどれだけ頼るか」といった深い問題は平成ガメラが完璧に描いている。昭和ウルトラは「絶対的なただしい正義」を示す。ヒーローはそうあるべきで、子供達はそう育つべきだから。
 姑息で卑怯なザラブ星人など、真っ直ぐに強いウルトラマンが必ず倒す。みんなも悪いことなんか企てちゃいけないよ。でも、そんなザラブを愛してしまう捻くれたガキが居たっていいんだ。

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