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ここ最近の「人と話したい欲」と立ち振る舞いの悩みとか

 どうしても寂しさや孤独をふと感じてしまうことが増えました。他人の思考を浴びることが嫌でSNSを見る時間を丸っきり減らしたからでしょう。依存対象から一気に引き剥がしたのだから、喪失感や飢餓感はどうしても残る。
 代わりに本を読む時間を増やして、Kindleで他人のエッセイなどを楽しむことにしています。他人の考え方や生活を読むこと自体は大好きなのだ。特に、本の形でなら筆者と読者の二人だけの世界しかない。綴られた文章がどんなに思想が偏っていたり、不謹慎だったり、あるいは人々が嫉妬してしまうくらい幸せそうだったとしても、「読書」という行為の中では、あくまで「僕が読んでどう感じたか」だけで完結しているので気が楽なのです。
 これがSNSであれば無数のファンやアンチ、無関係の暇人から、いいねやRT、引用やリプライが飛んでくるため閉じた世界でなくなるし、どうしてもそれを意識した文章になる。「僕が読んでどう感じたか」を自分の中へ仕舞うだけで済まないし、だからこその一体感やランダム性、反応や承認があるわけですが、今の僕はもっと閉じていたいのでそうしている。
 ここ数日は、樋口恭介さんの『生活の印象』を読んでいて、樋口さんは僕と相互フォローの作家でして、あまりに率直な方ゆえに炎上も多くフォロワーとの喧嘩も絶えない方でしたが、ある時ぱっとSNSを離れ、他人に読ませることを意識しない文章を書くようになった。そうして家族との生活や日々感じたことをのんびりまとめた一冊が『生活の印象』である。SNSを見るとどうしても喧嘩してしまう自分に恥じつつ、一度離れて俯瞰できたからこそのSNSへの批判も面白くて鋭い。樋口さんが毎日ネットとの距離感で悩んでいた時期も知っているので、スマホの内側の世界を離れて家族と人間的な生活をエンジョイしている姿に安心感を覚える。直接関わったことはないので一方的な所感ですが、著者へ勝手に想いを馳せることができるのも本の素晴らしさだ。


 このような読者習慣を続けているものの、とはいえ本として出版されるからには「意味」があるわけで、疲れて頭が働かなかったり、移動の合間程度の隙間でわずかに読めるジャンクな文字列も欲しくなる。昔はそれがTwitterでの身内のツイートだったわけですが、今や身内ノリで呟いたところで、誰にどう切り取られたり、なにが火種になるかわからない場所になったため、みんなだんだんと呟きが減った。単純な加齢もあるだろうけど。僕らはおっさんになったのだ。仲良い人たち数人で集まったDiscordやLINEグループもあるのですが、そもそもすすんで発言する方じゃないため、ごくたまに会話がある程度で活気がない。SNSでの独り言とちがい、身内の反応ありきの空間へ文章を投稿するのは重いことなのです。
 そういった閉塞感を抱えた人も少なくないだろうと、Twitterでない場所で夜でも他者をほんのり感じられるコミュニティを作ってみようと、誰でも入れるDiscordサーバーを作り、そこは一万人を超える利用者となって、日々誰かが何かを書き込んで(人が参加し易いよう、できるかぎり内輪ノリができないように設計しているつもりです)くれて、そこを眺めるとちょうど誰かの独り言が読めて良い暇つぶしになるのですが、いかんせん自分は管理者の立場だから個人的な発言はしないよう控えているため、ここでは「誰かと話したい欲」が満たされることはない。知らない人の何気ない文章が読めるだけありがたいなと、運営のし甲斐はありますが。ユーザーから問題の報告がない限り、ほぼ放置ですけど。
 似たような悩みを抱える作家の友人もぼちぼち居て、彼らは創作者用の数十人規模のサーバーに参加して交流することで「他人と話したい欲」を満たしているらしい。けれども、そういった場所はボイスチャンネルが存在していて、会話のコストを重く見積もる僕にはちょっとキツい。もちろん僕に合っていないだけで(こんな偏屈野郎の意見なぞ気にする必要はない)、そういったサーバーは多くの方の精神を支えているでしょう。
 だから昔のおっさんは「どうでもいい話」を「話を盛り上げつつ聞き流してくれるプロ」相手に発散するためキャバクラへ通い出したのだ。僕もめちゃくちゃ寂しい深夜にコンカフェへふらっと入ることも年に数回あったが、今だとコンカフェの女の子は超てんちゃんを知っている率が高く、そうなると原作者としてシャキッとした態度でないと夢を壊すから目的が変わってしまうのでダメだ。キャバクラだと単純に怖い。それに今の僕が不必要に女性と絡むと荒れるので基本は仕事とその延長での雑談のみにしている。どうせこの発言すら疑うネット民がすぐあることないこと言ってくるからね。最近は、それもちょうどいい制約に思えてきた。本当にハメを外して堕落するよりかは、ゴシップと人格否定が大好きな方々のストレス発散に使われる方がマシでしょう。代わりにDLsiteへの出費が増えた。催眠モノと寝取られがピークを越えて若干減った気がして悲しい。男女がイチャイチャしている作品は苦手です。
 なので、たまに友人と遊ぶ日が支えですが、現実でのコミュニケーションは楽しすぎる分、それはそれで負担や調整も怠く、やっぱりネットで気楽に人と絡みたい欲求はあるのでどうしようかな〜と思っている。贅沢な悩みな気もするし、この苦悩がこうして文章なり創作の肥やしになるなら、それも良いかと納得しつつもあるのでした。
 一晩だけ試しに10代後半のDiscordサーバーへ匿名で参加してみた。みんなすぐ喧嘩するので賑やかしで意見を書いたら、「句読点使ってるのキショ」と煽られまくり、その剥き出しの距離感が懐かしくて嬉しかった。今の中高生がこうした場所で馴れ合いや喧嘩をして青春を過ごせているなら、おっさんは黙って部屋で想い出のアニメでもぼけっと垂れ流しているくらいでいいのさ。

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