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オタク合コンに参加したので、全力で心理戦をしかけて必勝法にたどりついた話

 知らないフォロワーから突然「奢るのでオタク合コン行きませんか?」と誘われたので、生まれてはじめて合コンに参加してきました。
 正しくはアニメコンでして、女性の参加費が千円なのに対し男性の参加費は一万円。文字通りの桁違い。絶対自腹では行きたくない。

 そんなこんなで会場へ。場所は一般的な居酒屋を貸し切る形で、各テーブルに6人程度、男女比3:3で座ります。
  テーブルに座ると、さっそく前には女性3名が待機。まだ開始時間前で誰も音頭を取らないので、時間になったらイヤでも雑談をするのであろう相手を視界に入れないように過ごす微妙な時間が流れる。

 各テーブルには自己紹介用のプリントが置いてあり、名前や職業などの他にもステータス欄があったり。

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 直前に観たアニメが「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います」だったので、マンガとアニメのみに極振りしたステータスにしてみました。ゲームなら、一部のマニアに愛されるものの基本的には使用されないネタキャラ枠ですね。
 合コンで「マンガとアニメの値がMAXで居住地が秋葉原の男が現れたら、強キャラっぽくて絶対楽しいだろうな」と思いましたが、後から振り返るとオタク合コンはあくまでオタク同士で気が合う異性を見つける会であり、オタク同士が対戦相手を求めて集結する最強トーナメントではないので、こういうネタ振りは止めた方がいいことがわかりました。
 何もかも面倒なので、好きなアニメとか異性とかは適当。僕が合コン参加者の女性なら、こんなヤツと一秒たりとも会話したくない。
 参加者の同性同士での会話は殆ど無し。僕の想像では、新人つぶしのトンパのような存在がアドバイスのフリして偽の情報を与えてきたりすると警戒していたのですが、蓋を開けてみると全員が異性を採点するため観察し続けている最悪のヒソカ状態。

 全員が記入を終えたタイミングで、司会のお姉さんが仕切りだして合コン開始。10分経ったら男子のみ次のテーブルへ移動するので、その間に向かい側の女性とたくさん話してね。と非常にざっくりした説明。
 話した後は会話相手の番号と印象をシートへ記録し、最後に気になった異性の番号を複数記入。そして互いに気になっていた場合はマッチングが成功するシステム。


 会場は「いきなり喋れと言われても……」という空気に包まれ、いくらお互いがオタクである前提があったとしても、この短い時間で親密になるのは不可能だと察する。
 しかし会話の糸口へのヒントとして、先ほど書き込んだシートがある。とりあえずここから無難な話を掘り下げれば「会話」は成り立つ。もちろんただの世間話や上澄みをすくうような会話では意味がない。
 これは相手側のシートの内容を正しく理解し、その中で相手の予想以上の会話を引き出し、他人とは違う「印象」を与えシートに記録させる勝負だと判断する。
 さらに言えば、女性側は基本的に受け身。男側が用意したシートの内容なんて目にも入れない人すら居る。結果的にふざけて書いた僕のシートは、不利にも有利にもならなかった。

 3:3という性質上、バランス良く喋ろうという暗黙の了解を考慮すると対戦は一人3分。せっかく参加するのだからマッチングしてみたい。この3分内で如何に相手を驚かせる会話ができるかの心理戦が始まる。
 初めのテーブルの3人の女性は身内での参加。男性側が戸惑っている間に内輪話に興じており、このままでは数で押される。焦った男性側の一人が「どんな作品が好きですか?」と攻めだす。

 が、それは目に見えて失敗。なぜなら好きな作品はシートに記入してある。「テイルズ」なり「ポケモン」なり書いてあることをわざわざ口に出させるだけで、案の定女性陣は「え~? なんだろ~?」と身内でキャッキャしてはぐらかした。
 しかし、切り込み隊長が作ったチャンスは活かしたい。ここは自分も加勢するべきです。「テイルズ」「ポケモン」……2作品の共通項と流行から会話を考える。相手のゲームのステータスは4。それなりにゲームはしているという自信は数値にあらわれている。


 「Switchがお好きなんですか?」
 僕がひねりだしたジャブはSwitch。これ以上ひねっても変なので、先ずは様子見に入りつつ、攻める素振りを見せるための質問です。

 「そうなんですよ~。今日もここに持ってきたんです、ほら」
 なんとパーフェクトコミュニケーション。彼女は嬉しそうにバッグからSwitchを取り出し、ポケモンのプレイ画面を見せてくる。
 それを皮切りに、他の男性も「どんなポケモン好き?」「イヌヌワン見ないで描ける?」と会話を弾ませる。
 ここで安直にポケモンだけで終わっては印象は薄い……。

 「テイルズはSwitchで? それともソシャゲの方もやってたり?」
 ここでポケモンで盛り上がっている中で敢えてテイルズの方にも触れることで、「オモシレー男」を演出する。しかもテイルズにそこそこ理解がある雰囲気も醸し出す。僕はエターニアとシンフォニアしかやっていないので、実は攻められると終わるのだが、もう引くことはできない。

 「ほとんどやってますよー。どのテイルズ好きなんですか?」


 勝った。「色々やったけど……エターニアかな」と多数プレイした上でエターニアにたどり着いた感を出して返すと、「あー渋い!」と好印象。
  他の男はテイルズの話についていけないようで、一歩退き別の女性との会話へ。段々とオタク合コンのゲーム性がわかってきました。

 この調子で、他の女性のシートも見ていく。……が、ここで問題が発生し、好きな作品に「鬼滅の刃 ディズニー」しか書いていない。

 これは…………そもそもあまりオタクではない!

 泣きながら「鬼殺隊でだれすき?」という、今の小中学生が1万回は繰り返したであろう質問を投げる。しかし、これは地獄の始まりに過ぎなかった……。

 そんなしょうもない葛藤を繰り広げた末、別のテーブルへ移動。次のテーブルの女性陣のシートは、「鬼滅の刃 ハイキュー 銀魂」。これはわかりやすい。「ジャンプ好きなんですね。今の連載はなにが好きですか?」と自信満々に訊いてみると……。

「あっ、今はジャンプ読んでません」

 そっか~~。ちなみにハイキューも銀魂も昔読んだだけであまり覚えていないそう。仕方ないので、また「鬼殺隊でだれすき?」という会話に。

 そんなこんなを繰り返しているうちに、「好きな作品が金色のコルダや遙かなる時空の中で」の乙女ゲー推し女性、「流行の作品の中でなぜか無限のリヴァイアスが入っている」サンライズ大好き女性、「声優のステータスが5でとにかく宮野真守が好きという話だけしてくる」女性など色々と話を繰り広げました。
 宮野真守の話だけをする女性は結婚のステータスも5で、要は宮野真守と結婚したいだけだろとツッコミたくなるのを必死に抑えました。

 中には途中でLINE交換を申し込んでくる方もおり、じゃあマッチングする必要なくない? と、この企画の根底を揺るがす裏技に動揺。ウルトラCを駆使するリアル渡久地登場。こんなの甲斐谷忍作品じゃん。

 そして全てのテーブルを回りきった後にようやく真実に気づきます。

 どうせ全員「鬼滅の刃」が好きって書いてあるから、鬼滅の刃の話だけしてれば良くない?

 変にルール内であれこれ考える必要はなかった。ただ鬼滅の刃の話をして、雑にLINE交換すればいいだけだったのだ……。
 先ずは初手で鬼滅の刃の話をする→万が一伝わらなかったらシートから参照する→LINE交換の流れにするの動きで安定。オタク合コンには必勝法がある…………!

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 これは最後に、「記念撮影してもいいですか?」「あっ、私とですか? 別にいいですけど……」「いえ、参加した証拠のために僕だけ映っていれば大丈夫です」の過程を経て撮影された他撮りです。

 最後にマッチングの発表があるのですが、どうせ元からLINE交換を済ませているのでみんな全く乗り気にならず、そのまま帰宅。
 こうして初のオタク合コンは幕を閉じました。おわり。


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