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にゃるらが読んで面白いと思ったマンガ20選 2019

  今年も「このマンガがすごい」で審査員やらせて頂きました。そちらで選んだ作品もいれつつ、今年良かった漫画を20冊紹介していきます。順序に意味はありません。


・ゆりでなる えすぽわーる/なおいまい

 わたくしの(心の)余命はあと1年! それまでに作り上げるの…最高の「百合スケッチブック」を! 高校卒業と共に政略結婚が決まっている心。そんな結婚など「死」と同様。死後の癒しのためにあらゆる百合を妄想する…これは女の子が好きな女の子のために頑張るお話です

  女性同士の恋愛が大好きな主人公が、街中で見かけた女性二人を見て、幸せな百合妄想に耽っていくという、「百合」でなく「百合厨」がメインというメタ的な構造の作品。

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 例えば、電車で見かけたギャル系と真面目系の二人で百合妄想を繰り広げていくも、後半部分で現実は妄想より複雑でそして残酷な人間関係であることが示されていく物凄い構成。

 更に、回が進むごとにメインキャラクターたちの関係も更に複雑になっていき……と、関係の複雑さが好きな読者にはたまらない一冊。パンチの効いた関係性の嵐を浴びたい方にはぜひ。


・シャドーハウス/ソウマトウ

 これまた新しいジャンルの意欲的な作品。あえて言うなら、ゴシック・ホラーやダークメルヘンでしょうか。

 こちら、ねとらぼさんで記事を書かせていただいたので、そちらも参照してもらいたいですが、とにかく世界観と画力が凄まじい。なんといっても、Kindle版ならカラーで味わえるのも嬉しい。巻を追うごとにホラー要素が色濃くなっていき、今年も盛り上がっていくこと間違いなしな期待の作品。


・娘の友達/萩原あさ美

 家庭では「父親」として、会社では「係長」として、「理想的な自分」を演じるように生きてきた主人公・晃介。だが、娘の友達である美少女・古都との出会いにより、彼の人生は180度変化する。社会的には「決して抱いてはいけない感情」に支配されながらも、古都の前では自己を開放でき、社会の中で疲弊した心は癒やされていく……。「社会」のために「自己」を殺す現代社会へ鋭く切り込む、背徳のサスペンスが幕を開ける。

 タイトルだけで判断すると、娘の友達の女子高生と仲良くなってしまい……!? なラブコメだと認識してしまいそうですが、

何故か自分への好感度が異様に高い未成年が迫りくるも、手を出した瞬間に社会的地位の全てが崩壊するという一触即発なサスペンス・ホラー。人間の理性と倫理観に挑戦した、たいへん緊張感のある作品。

・CreepyCat 猫と私の奇妙な生活/コットンバレット

謎の屋敷に住む不気味な猫、クリーピーキャット。連載直後から怖カワイイと話題沸騰! タイ在住の大型新人が放つゴシックコメディ

 タイのイラストレーターが描くゴシックでカートゥーンな日常モノ。

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 この画面は薄暗くも、ほっとする内容のギャップとキュートさが素晴らしい。カートゥーン好きには自信を持ってオススメできる一作。

・メイコの遊び場/岡田索雲

学校に通ったことがないメイコはいろんなことをよく知りません。だけど最近は昼間にいろんな遊びを教えてもらっています。夜はお父ちゃんに頼まれて、知らないおじさんを壊す仕事をします。左目の眼帯を外して……。1973年の大阪を舞台に、眼帯少女が男を壊して壊しまくる残虐エンタテインメント!!

 これまた尖ったバイオレンスなあらすじ。時代が時代ならガロに掲載されていそうな作風。見どころとしては、あらすじにもある通り、眼帯少女が男を壊して壊しまくるグロテスクで残虐なおしおきシーンですが、

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1973年の大阪を舞台とした、背景のノスタルジーかつ繊細な書き込みが美しい。

・魔法の天使クリィミーマミ 不機嫌なお姫様/三月えみ

 クリィミーマミの内容を、マミのライバル視点から描いた意欲作。このシティポップでヴェイパーウェイヴな雰囲気がたまらない。

 こちらの記事に書いたので、詳細は上記へどうぞ。この全体的には今風かつ要所要所に昭和レトロならではなノスタルジーを残すリバイバルの手法は絶対にくる。

・アビスレイジ/成田成哲

盲目の少年・忍は、心優しい師匠と恋人の美琴に囲まれ、古武術「深淵流徒手術」の修行を積む温かな日々を過ごしていた。だが、ある日突然現れた謎の道場破りに師匠と共に惨敗し、美琴を連れ去られてしまう。それから3年後――。絶望から這い上がった忍は美琴を取り戻すため、凶悪犯ひしめく孤島の監獄に降り立つ! 極悪人達との無差別級格闘バトルロワイヤル、開幕!!

 盲目の主人公が、目が見えないゆえの格闘術で凶悪な格闘家たちを次々倒していく格闘マンガ。無差別級格闘バトルロワイヤルだけはあり、その残酷さと迫力はひとしお。去年で一番燃えた格闘マンガです。

・五等分の花嫁/春場ねぎ

貧乏な生活を送る高校2年生・上杉風太郎のもとに、好条件の家庭教師アルバイトの話が舞い込む。ところが教え子はなんと同級生!! しかも五つ子だった!! 全員美少女、だけど「落第寸前」「勉強嫌い」の問題児! 最初の課題は姉妹からの信頼を勝ち取ること…!? 毎日がお祭り騒ぎ! 中野家の五つ子が贈る、かわいさ500%の五人五色ラブコメ開演!!

 去年で一番夢中になったラブコメ。毎週毎週予想外の展開で楽しませてくれるエンタメ性が非常に高い一作。水曜日が来る度にドキドキしながらマガポケを開く日々にまだ間に合う。未読の方は今すぐ読みましょう。

 こんな記事をやったりもしました。

・児玉まりあ文学集成/三島芳治

比喩・記号・語彙……文学の構成要素をテーマに、
孤高の才能が描く静寂と浮遊感、とびきりのポップ。
詩情あふれる台詞と画面、ミステリのように反転する物語。
近いようで遠い文学と漫画が、かつてないほど接近した奇跡の怪作!

 文学についての構成要素をポエミーに、そしてポップに描いた、正しく怪作。

 こういった作風や台詞回し、エロゲオタクは好きになってしまう……。

・チェンソーマン/藤本タツキ
・呪術廻戦/芥見下々

 今更という感じですが、やはりジャンプの中でもとびきり好きなこの二作はどうしても入れておきたかった。

 チェンソーマンは、タツキ先生特有のエモに振りつつ先が読めない展開が、呪術廻戦はダークな世界観のまま敵側の魅力と残虐さにどんどん油が乗って素晴らしい。そして、両者ともジャンプであるだけはあり、各戦闘の気持ちよさと読後感は王道で爽快。

 この2作は未読であれば今すぐ読んで追いつくべき。

・踊るリスポーン/三ヶ嶋犬太朗

壇ノ浦調子(だんのうら・ちょうし)は、死んでも最後に寝ていた場所で復活するという、リスポーン体質の持ち主。山崎声(やまざき・あん)の命を助けたことがキッカケで、彼女にホレられてしまう。声ちゃんは壇ノ浦の死因にすら嫉妬するほどのヤンデレっ娘。彼女だけでも大変なのに、母やらライバルやら強烈個性に囲まれて、壇ノ浦くんは今日も愛され、死んでは生き返ります。新感覚の【死ンデレ】ラブコメ、開幕なり!

 死んでも生き返る少年と、すぐに過激な暴力に走るメンヘラヤンデレっ娘のゆめかわラブコメ。

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 独特の絵柄とテンポよく進むストーリー展開が癖になる。登場人物たちのファッショナブルなデザインと色彩など、かなりアニメと相性の良い作品だと感じており、陰ながらアニメ化を望んでおります。

・ぼっち・ざ・ろっく/はまじあき

「ぼっちちゃん」こと後藤ひとりは、ギターを愛する孤独な少女。 家で一人寂しく弾くだけの毎日でしたが、ひょんなことから伊地知虹夏が率いる「結束バンド」に加入することに。 人前での演奏に不慣れな後藤は、立派なバンドマンになれるのか!? 全国のぼっちな少年少女に届ける、いま最高にアツい音楽漫画!!

 「陰キャならロックをやれ!!」と熱いアオリが入った、バンドもののきらら作品。きらら作品の華々しく明るい表紙とは一転し、オシャレで暗めの装丁がイカす。

 特にオススメしたい点は、主人公ぼっちちゃんの陰キャっぽさのリアリティ。ネガティブ思考や行動の不純さ、それでいて根暗なのになにか良いことがあるとすぐ調子に乗ったり、言動がおかしくなっていくコミュ障らしさ。それらを可愛らしい絵柄でポップかつロックに、そしてなんだかんだきらららしく綺麗に描かれます。作中で散りばめられたバンドネタなども嬉しい。

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 現代のオタクに刺さるような力強いネガティブ発言がSNSとの相性抜群。

・蓬莱トリビュート中国怪奇幻想選 /鮫島円人

 中国の古典をベースに描かれる中華ファンタジーな短編集。

 どの回も幻想的で怪奇。そしてなにより……

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 顔がいい! 中国古典のリズムなのか、さくさくとお話が進んでいく上にコマ割りが巧みで読みやすい。国語の教科書がこの形式だったら、自分も勉強していたのに……。

・かげきしょうじょ!/斉木 久美子

「渡辺さらさ、オスカル様になります!」大正時代に創設され、未婚の女性だけで構成された『紅華歌劇団』。その音楽学校に入学した少女たちの青春が、幕を開ける──! 

 演劇モノの少女漫画。

 自分は演劇に関して完全な門外漢でガラスの仮面の知識しかないのですが、それでもこの漫画の登場人物たちの魅力とバイタリティに、どうしても惹きつけられてしまう。それこそ歌劇だけでなく過激にもかかっているタイトル通りの破天荒。今回紹介した記事の中で最も元気と活気に溢れる作品。

・すずらん通りの洋服店/fouatons

 「Louemil(ルーエミル)」ブランドの服や小物、街にある個性的なお店の紹介、
春夏コレクション、衣装協力として携わった映画や広告、
そして秋冬コレクションまで
繊細に描かれた服とセンス溢れる小物が女の子心をくすぐる
オールカラーのストーリー形式イラスト集です。

 漫画というよりは、ストーリー性のあるイラスト集に近いのですが、どこを切り取っても美しいオールカラーの一冊。

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 各ページに美麗な洋服や小物がセンスよく配置され、ページを捲る度に興奮がある。綺羅びやかな世界観に浸りたい時にオススメの一冊です。

・夢彩廻紀/紅木春

 こちらもストーリー形式のイラスト集。表紙買いでしたが、この装丁でピンと来た方は購入してまず間違いない。

 話としては、アジアンファンジーの世界を次々巡っていき、各地にあった雰囲気のイラストを鑑賞していくといった内容。こちらも和レトロやアジアンな世界観に浸りたい際にはオススメです。

・東島丹三郎は仮面ライダーになりたい/柴田ヨクサル

「いくぞ、ショッカー!!!!」
40歳になっても本気で仮面ライダーになろうとしていた東島丹三郎(とうじまたんざぶろう)。
だが、その夢を諦めかけた時、世間を騒がす「偽ショッカー」強盗事件に巻き込まれ…。

 とにかく柴田ヨクサル先生らしい迫力と大胆さがあり、それが仮面ライダーという作品のパロディと非常に噛み合っている。いつもどおり狂人一歩手前のキャラクターたちが多数登場するが、彼・彼女らの共通点は仮面ライダーが大好きであること。その芯がぶれないので読んでいて小気味良い。

 本作を読んで以来、電波人間タックルの生涯について考えさせられる日々が続いております。

・センサー/伊藤潤二

千獄岳の麓を歩くひとりの女・白夜京子。
そこへ男が現れ、清神村へと案内をする。
驚くべきことにその村ではすべてが黄金に輝いていた。
村人が語る村の歴史はさらに奇妙な世界へと京子を誘っていく。
謎の女・白夜京子に世界が翻弄されるスペクタクルホラー!

 潤二先生の新作は宗教や宇宙をテーマにした壮大なスケールに。ありそうでなかった潤二先生の宗教ホラー。だんだんと回を追うごとに狂っていく登場人物たちの変貌を楽しめる。

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 潤二先生の描く美女は相変わらずとても美しい。もちろん、一番美しいのは富江ですが……。

・おとぎ古書店の幻想装画/夜汽車

イラストレーター・夜汽車が「時代と国を自由に行き来する装丁画家」に扮し、世界の名作童話や小説の装丁画を独自の視点で描く人気Web連載『おとぎ古書店の幻想装画』で発表された全24作品と本書描き下ろし作品を多数収録! さらに、本書初公開のオリジナルストーリー作品やサイレント漫画も掲載しています。奥深い物語と美麗な作品の数々に浸れるイラスト作品集です。

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 ひたすら美しい。とにかくどのページもたいへん美しいんです。

 一応、サイレント漫画が数ページ載っているものの、基本的には童話や戯曲などの紹介に挿絵が入った形式。

 夜汽車先生の繊細で美麗なイラストがこんなに沢山読めるだけでも、とてつもなく価値のある一冊です。服と装飾品など、小物だけのページも、これまた味わい深い……。非常に完成度の高い画集でした。


去年のもの↓

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