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一口エッセイ:不眠人(ふみんちゅ)

 この前、ひどい低気圧で起き上がれず米青ネ申禾斗をサボってしまった。そのため睡眠薬の数が合わず、いまもこうして入眠が上手くいかずに昼夜逆転してしまっています。ああ、せっかく一人旅を経て夜に寝て昼に起きていたのに。結局はこうなる運命だったのか。
 悩んだのだ。米青ネ申禾斗へ通う理由は、とうぜん乱れた精神を安定させるためである。定期的に医師へ近況報告し、処方される薬を調節して、日々の生活を楽にする。しかし、あの日の低気圧はひどかった。僕はあまり気圧の変化に影響を受ける方でないと思っていたが、あまりの眠気に起き上がれる気すらしなかったのです。
 精神を楽にするための通院なのに、そのために起き上がるには多大な精神力を消耗する。それに外は大雨で、この状況で眠い頭を抱えてどうにか外出したとてフラフラのヘトヘトでしょう。だったら寝転がるしかない。大丈夫、先生もわかってくれるさ。以前に予定日を間違えてサボった時だって笑って許してくれた。
 が、やはり罪悪感に苛まれる。電話で伝えればいいのですが、どう言ったものかと悩んでしまう。それに、実はウチは妙に電波が弱くて外に出ないと通話が繋がらない。なんて建物なんだ。そんな簡単に外に出れるのであれば、そもそも通院だってできるわけで本末転倒だ。
 うーん、うーん。頑張って起きあがらなければ、罪悪感を抱えたうえで薬も切れる。助けてくれ、助けてくれと虚空に叫んだところで意味がない。落ち着くために向精神薬を飲もうと手を伸ばすけれども、よく考えると通院日の直前なのだからちょうど薬が切れているのです。詰んだ。
 あー……となっているうちに気圧に潰され就寝してしまった。それなら睡眠薬も切れて今に至る。眠れない。
 低気圧なんてものともせず、果敢に傘を掲げて通院できれば今頃幸せだったのに。ああでも、あの状況で怠さに勝って起き上がれる人間であれば、そもそも通院していないか。
 ちょうどいい機会かもしれない。睡眠薬抜きの自然な眠気に挑戦してみよう。自然、自然か。生物として当然のルーティン。思えば、小さな小さな粒一つで強制的に脳をシャットダウンしていたのもすごい。生き物なんて、あの小粒で今まで何千年も繰り返してきた生活のリズムに抗えてしまう。恐ろしいことだ。そんな自然の摂理に反するくらいなら、やはり自ら何も飲まずに静かに眠るべきです。
 が、やっぱり眠れない。どうしても枕の上でも頭から忙しく忙しく余計なことを考えてしまう。誰か強制的にシャットダウンしてくれ、僕の電源を抜いてくれ!
 助けてーと叫んでみるものの、時間はすでに朝であり、これから出勤するため規則正しく起きる人たちに、こんな不眠人(ふみんちゅ)の戯言を聞かれるのが恥ずかしいので、黙ってじっと耐えるモードへ移行します。見ているからな、お前らが今から健康的な生活を始める様子を。朝も眠れない僕が。太陽を怨みながら。布団の中で。


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