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一口エッセイ:二次元キャラクターへの祈り

 生活保護の友人の部屋が、ものすごくカッコよくなっていました。必要最低限のものしかない。プロジェクター、画面を見るための椅子・机・パソコンで終わり。眠る時は床に段ボールを敷いているらしい。ひたすら、暗い部屋でぺこーらの配信を見ている。これはもう祈りに近いと思う。友人として心配ではありましたが、むしろ今が一番幸せなようです。たしかに、見方を変えれば、ただ起きて画面を眺めて眠るだけに行動が定まっているので、余計なことを考える隙もない。ただ、二次元美少女への祈りだけがそこにある。
 ここで急に自分の趣味嗜好の話ですが、僕は二次元キャラクターが洋楽を、それもレトロな曲を歌っているカバーが凄く好きなんですね。理由を言語化するのは難しいのですが、すごく安心する。神聖なイメージを受ける。
 そこで、そのような映像を探していたところに、ホロライブの海外製音MADにたどり着いた。日本人の音MADだと、彼女たちの言語が理解できてしまうので、どうしてもギャグ的なテンポ、要はニコニコ動画っぽい映像になる。「ここで笑わせる」的なポイントが入るんです。
 が、外人の作る音MADは、もっと根源的に音楽に合わせて彼女たちを楽器のように使う。あくまで音楽が主役で、彼女たちはリズムを奏でるだけ。これはかなり近いと思い、そのホロライブ好きな友人と一緒に探してみた。海外の動画を漁るのは難しいですが、おかげで色んな文化を知れて面白かった。その話もいずれ。


 中でも特に好きなものが、こちら『Canon Memories (ft. Haato, Fubuki and Matsuri)』。
 ご存知カノンの美しい旋律に合わせて、ホロライブのメンバーたちが楽器のような音を奏でてくれます。まず、カノン自体がどう組み合わせても素晴らしいものであるのですが、なんとこの曲のラストのサビで、赤井はあとさんがボーカルとして歌うのですね(実際にデビュー当初、ワンフレーズだけ歌った動画があるらしい)。それが本当に綺麗で、まるで聖母のような優しさで包んでくれる。これは日本人では、めったにでてこない発想でしょう。ただ、宿泊の音楽に合わせて彼女たちがいる。この映像からは、海外オタクたちによる二次元キャラクターへの祈りに思える。コメント欄も、彼らの涙で溢れている。海外勢たちの祝福の際に流れるのが、このカノンとはあちゃまであると良いですね。
 そして、僕の友人もまたひたすらプロジェクターで壁に映し出された巨大な二次元キャラクターをひたすら眺め続ける。それが真の幸福であることを、それだけが真実であることを知っているのだから……。


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