可愛ければ変態でも好きになってくれますか? 7話の良演出
「可愛ければ変態でも好きになってくれますか?(以下、変好き)」、良いアニメですね。OP曲がいかにも一昔前のラノベ感があり、一種の安心感があります。未視聴の方は、以下からどうぞ。
さて、変好きはタイトル通り、変態のヒロインたち……ドSだったりドMだったり、腐女子だったり、匂いフェチだったり……に常識人の主人公がいつの間にか囲まれハーレムになっていく、ラノベ然としたわかりやすいストーリー。合間合間のギャグのテンポと緩急がよく、淡いタッチの作画がかわいい。
中でも変好きは特にレイアウトが凝っていまして、一癖ある画面づくりが特徴的。例えば、主人公と親友ポジションが会話する際も、階を挟んで視点を上下させたり、
ヒロインとの会話中、大胆に画面を引いて部屋の説明などが入ったり、
主人公の語りが長いシーンなどは、人形劇風の演出が挿入されたり(とてもかわいいので毎回挟んでほしい)と、とにかく飽きさせないよう凝った画面づくりが多く、軽いノリの会話も相まり視聴していて小気味良い作品です。
今回は、そんな変好きの中でも、特に演出が素晴らしいと感じた7話について書いていきたいと思います。
・7話『小春ちゃんは一年生だよ☆』大作戦 完結篇
7話は、ライトノベル原作のハーレムアニメでは珍しく、ヒロインの一人が主人公の親友ポジションへ告白する話です。なんだかんだ主人公の方へ惚れたり勘違いだったりするパターンでなく、サブキャラ同士による直球の恋愛話が新鮮。
天文部部長の小春ちゃんが、主人公の親友である翔馬に優しくされた思い出があり、それ以降ストーカー状態になった女の子。スコープから覗く相手は夜空の星座でなく、地上に輝く一番星の翔馬くん。この影で構成された小洒落た画面が良いですね。
印刷された翔馬くんの盗撮画像だらけの部室。GTOを彷彿させます。
さて、このアニメのヒロインは全員変態でして、例に漏れず小春ちゃんもストーカー気質という異常性を抱えているわけですが、翔馬くんもまた変態の一人であり、彼は生粋のロリコンでした。
小春ちゃんは3年生ながらロリ体型であることもあり、翔馬くんに気に入られているものの、年齢を隠して接近したため、ロリコンの翔馬くんへ先輩であることを隠してしまいます。
翔馬くんに拾ってもらった、なによりも大切な帽子。ここが後に重要なカットになる。小春ちゃんは、自身が先輩であることを隠したまま、主人公の助けを借りて翔馬くんとのデートへ。
デート自体はそれなりに楽しめている様子ですが、小春ちゃんが常時パーカーを開いていることが気になる翔馬くん。「胸が小さいのが恥ずかしい」と誤魔化し、ロリコンの翔馬くんにクリティカルヒットさせますが、実際は胸のリボンの色で学年が判明することを恐れる小春ちゃん。特に問題なくデートは終わったものの、いつまでも騙し続けていては発展しません。
小春ちゃんは、告白の決心を主人公に表明。プロジェクターに映る巨大な翔馬くんを背に、小さな胸を膨らませ決意をあらわに。映像の光で七色に照らされた銀髪が美しい。
告白結構日。木漏れ日の路を歩く二人。変好きのアップはどこを切り取っても淡く綺麗ですが、このカットは特に背景と期待と不安が入り交ざった表情にかかる影のバランスが良い。
実は既に一年前に会っていて、大事な帽子を翔馬くんが拾ってくれたことを明かす小春ちゃん。二人の間を分かつ街路樹。
「ここで初めて会った時からずっと…ずっと…翔馬君のことが好きでした!」
パーカーを開きつつ胸の内も明かす。パーカーの中には、当然3年生のリボンが見え、小春ちゃんの気持ちだけでなく正体も分かってしまう。
しかし、ロリコンである翔馬は先輩からの告白を受け入れない。やはり二人の間は街路樹によって左右に分けられ、小春ちゃんはそのまま泣きながら走り去ってしまう。可愛くて変態でも付き合えるかも知れない、しかし男側まで変態だった場合、更に話は別であることがわかる。
小春ちゃんの回想。毎日毎日ストーキングしては、大切な帽子を中心に広がっていく翔馬くんの写真。天体観測が趣味の彼女が見つけた、何よりも大きく輝く一等星。
傷つきながらも、思い出の帽子を被る小春ちゃん。主人公に慰められながら翔馬くんの性的嗜好について文句を吐露するも、本当の気持ちまで嘘はつけないのが分かる。
自身の文句を聞きながら登場する翔馬くん。慌てて小春ちゃんが否定するも、「ロリコンだから年齢はまだ受け入れられないが、一緒に居て楽しかったのは間違いないので、これからもリハビリとして仲良くして欲しいと告白する」翔馬くん。今度は告白する側の翔馬くんが右手にまわり、二人を分かつものはもう無い。
「変態でも好きになってくれますか」というテーマが、ヒロインの方へバトンが渡されていく。
「ラブコメの主人公とかよくその台詞使いますけど、それってつまりはっきり付き合うとは断言せずさりとてばっさり断るでもなくとりあえずキープだけしておくという最低な選択なのですよね?」と急な早口でばっさりいく小春ちゃん。二人がラブコメのメインでなくサブキャラクターであることも踏まえ、メタ的な発言が光る。
が、次の瞬間「冗談なのですよ」と、ぱぁっと明るくなる小春ちゃん。ロリ体型の彼女でも間違いなく年上の女性であることが分かる。ここで終われば感動話なのですが……
部屋が明るくなった瞬間、初めて小春ちゃんの異常性に気づき動揺する翔馬くん。「変態でも好きになってくれるか?」のバトンは小春ちゃんでなく、翔馬くんの方に再び託され、このアニメのテーマ性がここに返ってくる。
翔馬くんがロリコンであることは些細なことであり、本質はストーカー気質の小春ちゃんを「可愛ければ変態でも好きになってくれますか」という話に帰結。
「やっぱり年上は無理かもしれない……」とたじろぐ翔馬くんの様子に、「?」ときょとんとした小春ちゃんのカットでED。このほんわかしたオチが変好きらしくとても素晴らしい。変態には変態をぶつける、なんとライトノベルらしい関係性なのでしょう。
なんだかんだ、この二人の仲はこれからも描かれていき、今度は主人公が小春ちゃんへ相談する側になったりと、人間関係の進みがハーレム外にも広がっていくのが良いですね。
特殊EDで、二人の歩いた路が実写に。これだけで、このアニメがスタッフに愛され、如何にこの回に気合を入れてくれたのが伝わるのですが、特に良かったカットが、
ここ! この影はズルい。
急に実在性を見いださせてきてエモで殴ってくるのはズルです。こんなの誰だって認めざるを得ません。しかも影を見る限り自撮りでピースしているのが良いですね。小春ちゃんの表情が目に浮かぶよです。この一枚から一気に引き込むのを逆算したんじゃないかと疑うほど良い……。
そして最後のカットはアニメに戻り、関係の始まりとなった帽子がなくなり、代わりに増えたのは翔馬くん一人でなく二人で並んだ写真。小春ちゃんだけの思い出が二人の大切な思い出へ。
二人の心情と関係性の変化をあらわしていく細かい演出、サブキャラクター同士の恋愛ながら作品の本題に大きく切り込んだ、熱の入った良回でした。可愛ければ変態でも好きになってくれますか7話…………100点!!!!
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