思い出の深夜アニメ まじぽか
いまは、ふと深夜に人恋しくなった時も、動画配信サイトを開けば必ず大手配信者がライブをしているので、適度に寂しさを埋められて良い時代だと感じます。この時間の人たちの孤独に寄り添って配信をしている方はえらい。ただ昼夜逆転しているだけとしても、確実に眠れずに深夜のネットを彷徨うオタクたちの支えになっている。
そういえば、僕が小学校高学年くらいの頃、すでに夜更かしで深夜まで起きていた記憶がありますが、あの時の僕はどう寂しさを誤魔化していたのだろうか。たいていゲームをしていた気もするが、深夜にプレステのポリゴンと向かい合っていると独特の不気味さに襲われる。僕はPS2の時代でもひたすらモンスターファーム2をプレイしていて、だいたい徹夜だった。何度も何度も遊んでも一向に飽きる気がしなかったのです。
が、合間に合間に挟まるロード時間の「暗さ」、円盤再生時の静けさ、鈍く響き渡るディスク読み込み音。あとプレステは起動時の画面が異様に怖い。あとモンスターファーム2はまったく人間の音声が無いので、深夜に遊び続けると感覚が持っていかれて妙な高揚感を覚える。思えば全体的に静かなゲームに感じる。
そうなると、やっぱり人の声が聴きたくなる。僕は小学生〜高校1年生まで母親とワンルームで過ごしており、たいたいお母さんが隣で寝ている中でゲームやアニメに興じていた。僕はモンスターファーム2に死ぬほど取り憑かれていたが、母はトルネコの大冒険2を死ぬほど繰り返していた。ダンジョン探索に疲れた母が眠ると、途端に深夜のワンルームに独りとなる。プレステのゲームはなかなかキャラクターの音声が流れないのでアニメを観るしかない。
そんな僕の気を使って、母は『キッズステーション』に契約していくれていた。キッズステーションは24時間アニメを放送してくれる、全く深夜アニメの流れない沖縄生まれの僕らのようなキッズには神様に等しい存在。深夜の2時や3時。草木も眠り、母も眠り、地上波の番組すらも砂嵐となった夜と朝の隙間に、僕はキッズステーションを視聴する。
当時、大当たりと感じていたのが、まじぽかこと『錬金3級 まじかる?ぽか〜ん』。これは子供ながらに分かるザ・深夜アニメで素晴らしい。過剰に萌え萌えな媚びたデザインの美少女、毒にも薬にもならないけれどちょっとほっこりなストーリー、ギャップを狙った妖精帝國による壮大なOP、のほほんとした作画にED。そして何といっても時代が時代だけに、いわゆる萌え系アニメに関わらずやたらと大人なエロが多い。露出やサービスシーンがあるとかでなく、明確に「性」に関する話が多いのだ。これは小学生には刺激が強く、今でもパキラ(CV:平野綾)を見るとドキッとしてしまう。ナイスデザイン!
かわいい。思えば、この頃はまだ男好き絶対の美少女キャラクターがモブ男と恋愛になる展開があった。ギャラクシーエンジェルも蘭花は容赦なく男を誘惑しまくっていたし。もう少ししてラノベアニメの時代になると、なかなか主人公以外の男が惚れられることはない。性や金に貪欲で良い男と結婚するために積極的な美少女を見ると懐かしさを感じますね。まだまだ「萌え」文化を手探りしていた雰囲気が素晴らしい。
まじぽかの気の抜けた映像と歌詞のEDを観ると、「ああ一日が終わるな」という気持ちになる。これは説明が難しい。正しく深夜だからこそのアニメが終わったのだから、もう次の日に行こうねって、とにかくそういう感覚になるのです。
他にも、キッズステーションは深夜に『ギャグ漫画日和』をヘビロテしていましたが、静かさ漂うワンルームの真夜中にギャグ漫画日和が矢継ぎ早に放送される様子は怖い。脳がハイテンションギャグに対応していない状態で、ひたすら噛み合ってない会話が連続されると笑いより先に恐怖がくる。
『夢のクレヨン王国』が流れた時も同じ感覚でした。隣で母親は布団で眠っており、薄暗い台所をできるだけ見ないように(深夜の闇に呑まれるから)耐えている状態でのン・パーカマーチの底抜けの明るさは、バランスを狂わせて僕の意識をおかしくさせてくるようで怖かった。けれどもシルバー王女はかわいい。かわいいので観るっちゃ観るんだが、深夜に子供向けアニメを視聴するとなんだかアベコベの世界に迷い込んだようでゾクゾクします。子供向けアニメ=朝にしか観ちゃいけないって思考があったからでしょうか。背徳感に浸れて気持ちよかった。
『ぺとぺとさん』、『ストラトスフォー』、『ポピーザぱフォーマー』、『ゆめりあ』、『陸上防衛隊まおちゃん』、『地獄少女』。いろんなアニメを深夜のおともにしてきた。けれども、やっぱりまじぽかだ。まじぽかこそ深夜に流れてこそのアニメだと脳裏にこびりついている。
最近、ホロライブENの新人の子が、好きなアニメにまじぽかを挙げていたらしい。海外の美少女キャラクターもまじぽかが好きか。僕と同じく深夜に何かの配信などで観ていたのだろうか。あるよね、センチメンタルな夜更けにスーっと染みるようなアニメが。あの頃の感覚、またどこかで思い出したいね。
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