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「存在しない泣きゲー」で泣く

・マンデラ効果

 泣きゲーの話をしますね。その前に、突然わけのわからない話をしますが、後で話題が繋がるので、信じて読み進めていただけると幸いです。

 「マンデラ効果」という現象があります。

マンデラ効果(マンデラこうか 英: Mandela Effect)とは、事実と異なる記憶を不特定多数の人が共有している現象を指すインターネットスラング、およびその原因を超常現象や陰謀論として解釈する都市伝説の総称である。

 つまりは、実際の事実は違うのに、なんとなくで大人数が「アレはこうだったよね」と思い込んでいる状態。
 わかりやすい例で言えば、まずピカチュウの姿を想像してみて下さい。そのピカチュウの尻尾の先は黒くなっていませんか? ピカチュウを特別好きでない限り、曖昧に認識してしまいますよね。答えは「黒くない」です。
 こうして「ピカチュウの尻尾の先は黒くない」と言われると、「いや黒かったんじゃない?」と「誤った記憶」を参照してしまう。これがマンデラ効果です。
 広げると、パラレルワールドの話になってしまい、それはそれで面白いのですが、今回の話題となんの関係もないので割愛します。

・マンデラ効果が起きた泣きゲーコピペ

 古の2ちゃんねるにて、以下の文章が投稿されました。

「あたし、あなたのことが、好きだったよ。知ってた?」
「ちゃんと言えなかったこと、すごく後悔してたんだよ。知ってた?」
「誰にも渡したくないって、今でも思ってる。知ってた?」
「じゃあ、さよなら。もう逢えないけど。…これは知ってたでしょ?」

 良い……。脳内で勝手に水月陵のBGMが再生され、それっぽい制服のヒロインが登場し、気合の入ったイベントCGが表示されてしまう。「こんな感じ」の作品に触れ続けてきたせいで、会話の断片から「存在しない記憶」が形成され、どんどん理想の泣きゲーが構築されていきます。
 一体、この会話はどんな名作ゲームのセリフなんだ……!? と、ネット住民たちは困惑。各々が「なんとなく見たことある」せいで、「あれじゃないか」「これじゃないか」と議論が盛り上がっていく。
謎のエロ漫画『第四話「狂宴」』のように、集合知による謎解きが開始されました。

 結局、近しい会話のある作品は見つかったものの、答えとしては「創作」でした。「狂宴」と違って答えが出てきて良かったぜ。僕たちは「無い」泣きゲーの文章に心を掴まれ、全員が必死に幻想を追いかけ続けていたのだ。押井守作品か?

 つまり、全員が「あるんじゃないか」と思い込んでしまった、泣きゲー版マンデラ効果が起きたのですね。僕は、このオチまで含めて美少女ゲームのシナリオっぽくて大好きな話です。よかった「もう逢えない女の子」は存在しなかったんだ……。

・坂本龍一を聴いて存在しない泣きゲーを創造する

 「泣きゲー」っぽい曲の頂点は坂本龍一だと考えております。坂本龍一のピアノはすごい。「TONG POO」をYMOのアルバムで聴いた際、みんな愉快な印象を受けるでしょう。それが坂本龍一本人がピアノだけで演奏したらどうだ、一気に「泣きゲーのメロディ」になる。
 以下のリンクから、その様子を聴くことができますが、とにかく坂本龍一のピアノに、先程の例のような僕らが勝手に感じる「泣きゲー」っぽさが詰まっていると感じております。

 その最たる例が「The Other Side of Love」
 ただでさえ、勝手に涙が溢れてくる坂本龍一の演奏に、優しい声の英語女性ボーカルが合わさり、最強となっている。
 とにかく聴いてもらえるとわかるのですが、聴いているうちに脳内で「存在しない最高の泣きゲー」が再生され、聴き終わる頃には「名作美少女ゲームを一本クリアしてエンディングを観終わった」気持ちになるのだ。

 「存在している泣きゲー」は、所詮は他人が作ったものなので限界がある。各々が「脳内で錬成した最高の泣きゲー」こそが、至高の泣きゲーなのです。
 先述した「無い」泣きゲーコピペのような文章をテキストエディタに打ち込み、坂本龍一の曲を聴きながら、「虚構」のヒロインに想いを馳せ、涙を流して生きていきましょう。

・蛇足

「短いやりとりの泣きゲーっぽさ」は、上記のパワポケのやり取りが一番好きです。パワポケのライター、美少女ゲームを作らないか?
  パワポケって、とうぜんギャルゲーではないので、ゲーム部分に集中させるためテキストが凝縮されている分、行間を読んで「最高の演出」が脳内補完されるんでしょうね。良い……。
 ちなみに上の会話が気に入った場合、「ある日、爆弾がおちてきて」を読むと良いですよ。

 ↓これは、僕が坂本龍一の曲について触れている記事です。死ぬほど暇な時にでも読んでみてね。


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