一口エッセイ:乙女ゲームと美少女ゲームの性質の違い
「にゃるらさんに、今までにない乙女ゲーム作って欲しいです」といったメッセージが、それなりの頻度で送られてきます。面白そうではありますけどね。もし、そういった仕事がきたら考えはしますが、現状自分で企画することは無さそうです。
乙女ゲームの始まりを話すには、コーエーの歴史を語る必要がある。『光栄』を二人で創業した襟川夫婦は、ご存知の通り『信長の野望』などのヒット作を続々発売し、みるみる業績を伸ばしていくわけですが、そんな中、夫の仕事を支えてきた襟川恵子さんは、どのゲーム雑誌を開いても戦争やアクション……男性が楽しむジャンルばかりの状況を見て、「女性が楽しむゲームが絶対にこの世にあるべき」と確信し、世界初の女性向けゲーム『アンジェリーク』を発売。そのヒットを皮切りに、乙女向け作品でもみるみる伸び始め、超人気作『ファイアーエムブレム 風花雪月』では、コーエーも共同開発に参加しており、その影響もあってか女性ファンからも大好評となります。詳しくは、『ゲームの企画書①』を読もう!
つまり、乙女ゲームの概念自体が、業界の常識を変えた革命なのですね。現在では、Switchでもアプリゲームでも続々新作が製作されております。可愛らしいカラーバリエーションのSwitch Liteは、近年増えつつある女性ゲーマー層に向けているのだろうなと感じました。
豆知識はともかくとして、乙女ゲームと美少女ゲームは、全くもって似て非なる存在。美少女ゲームのノリで軽率に参入しようものなら、確実に失敗することでしょう。まんま、そのような過ちをおかしたメーカーも少なくありませんから。
僕の友人にも、数名乙女ゲーライターがおりますが、話を聞く限りでも、やはり男性向けと女性向けでは、目指すべき方向・求めている性質がまるで違う。これは僕の理解ですが、美少女ゲームは「どれだけ夢を見せるか」で、乙女ゲームは「どれだけ夢から醒さないか」が重視されるように思える。
乙女ゲームは主人公のヒロインへの没入度を高めていくものであり、ヒロインが自分と解釈違いの言動や行動を繰り返すと、すぐにユーザーはゲーム体験の魔法が解けてしまうのですね。あまりに男キャラに甘えすぎて自立心がなかったり、良い子ちゃん過ぎてもダメだし、もちろん悪女に感情移入させるのはピーキー。友人から教えていただいた例として、主人公が異世界転生した際、その後の毛の処理や美容をどうしているかを描写しなければ、そこが気になって不安になったユーザーがプレイを止めることがあるらしい。女の子が可愛ければ基本なんでもいい大雑把な美少女ゲームユーザーとは真逆。
嬉しいことに、拙作のゲームを楽しんでくれる女性ファンはたくさんおりまして、ひとえに超てんちゃんが可愛いおかげなのですが(「あめちゃんに感情移入しました!」という声が多数。ありがとうね)、これが超てんちゃん一人でなく、男女含めた多数の登場人物が入り乱れる状態で、物語の魔法を維持できるかと言うと、難易度が跳ね上がる。
興味自体はある分野ですから(なにごとも挑戦だし)、いつか運命のイタズラで乙女と向かい合う時がきたら、その時は魔法使いとしてキラキラ輝くものを全力でまぶす所存でごさいます。
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他人の日記を読んでいると、その人の思考が混ざっていく感覚が魔法っぽくて気持ち良くありませんか?
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