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一口エッセイ:幻覚の親子と中野ブロードウェイを歩く

 休日は中野ブロードウェイを散歩しない。普段はノスタルジーに溢れたレトロでサブカル色強めなオタクショップが立ち並ぶ混沌とした場所ですが、土日の中野ブロードウェイは家族のための賑やかな施設の顔になるのです。
 中野のど真ん中にあるわけだから、中野に住んでいる一般的な家族にとって、休日の出掛け先としてとても都合が良い。仮面ライダーやガンダムの専門店などは親子で楽しめる。ショーケースに並ぶライダーベルトを眺め、お父さんは昭和ライダーのグッズが現存していることに感動し、子供はその隣にある最新作の令和ライダーのベルトを欲しがる。別の階には女児専門のお店やドールのお店があり、女の子はそっちに入ってはしゃぐ。たまに、両親の方が昔を懐かしんで興奮している光景も散見される。
 歩いて数分なのだから、わざわざ人が多い時に散歩する必要はない。土日は「街の観光地」として役割を果たしており、不審なオタクは出番じゃない。
 と言いつつ、稀に暇すぎて土日も散歩することがある。その場合は「幻覚の息子と娘」を連れて行き、嬉しそうにソフビを眺める息子にカッコいいウルトラ怪獣を教えたり、プリキュアの変身グッズをねだる娘に甘々で全部買ってあげる妄想をしながら歩く。子供たちに「父さんの頃のニチアサは〜」なんて話ているうちに、玩具で袋がパンパンになるので、「どっちが子供なんだか……」と幻覚の奥さんに怒れるも、実はその中の一つは奥さんが昔好きだった女児アニメのグッズをプレゼント用に忍ばせており……まで考えながら、今日も暇を持て余した不審なオタクは独りブロードウェイを徘徊し続ける。

 毎日のエッセイをまとめた同人誌をboothにて販売中。最近、新刊がでたばかりです。買ってもらえると、僕が中野ブロードウェイ散歩中に一冊本が買えます。

 商業エッセイ集もよろしくお願いします。中野より秋葉原の話だらけだぜ。

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