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一口エッセイ:イラストレーターのリアルな鬱への要因

 「ある絵師が人生つらいってツイートしていたけど、その人はフォロワー何十万人もいて月に何十万ももらっていて才能もあって、対して貯金も友達もいないサラリーマンの俺の人生はなんなんだって思う」的なツイートが流れてきました。たいへんだぜ。
 先に断っておくと、この内容に関して何か批判や説教、肯定も否定などをするつもりはありません。今回の日記の主旨ではありません。そっちはどうでもいい。インターネットである以上、このような投稿は無限に流れてくるだけなのだから。「今月も見たな〜」くらいの話で、この人にはこの人の、イラストレーターにはイラストレーターの苦しみがある。
 が、そのツイートに対して興味深いコメントが付いていまして、「きっとその絵師さんは肩凝りが酷いのでは? 肩が凝るとどんどん鬱になるので」と述べている方がいた。たしかに。そうだ。イラストレーターという職業上、いやでも何時間も画面と向かい合い、集中する。もちろん職種によってはサラリーマンだって座りっぱなしではあるでしょうが、プロのイラストレーター程ではない筈。「楽して儲けている奴が文句言うな!」と賛同する者と「絵師の仕事を甘くみるな!」と擁護する者に分かれるなか、始めにイラストレーターの健康を案ずるところから入ったこの人の目のつけどころは興味深い。
 そして、肩凝りの苦痛はとてもわかる! 何故なら僕もいま、肩と首の痛みに非常に悩まされている。夏コミや新しい企画のために、今週は何十時間もキーボードを叩き続けることとなった。おかげさまで、無事につい先程コミケの原稿は終わりました。褒めてください。代わりに、肩と首が犠牲となった。もう無理できない年齢であることも併せ、人生で一番肩凝りがひどい状況なのです。help。
 一言で「肩凝り」と言っても、そう単純ではない。大抵の場合、肩と連動して首も痛いし、頭痛もする。とにかく頭が重くて怠い。「頭が重い」というデバフはデカいぜ。要するに、つねに頭が働かない。痛みのせいであらゆることに集中できず、ストレスが溜まる。ストレスのせいで交感神経が昂り不眠にもつながる。そもそも、肩凝りが悪化する状況はだいたいが締め切り前なので、睡眠時間も普段より削られている。地獄!
 今日もマッサージ店でほくじてもらったものの、一度や二度で改善されるものではない。帰宅後も作業はあるし。ストレッチも頑張ってみたけど即効性はない。ロキソニンのみが味方である。起きたら今日はストレッチを指導してくれるお店へ行こうと思う。そのレベルで生活の全てを「肩の痛み」に支配されているのです。
 これが何ヶ月も続くのであれば、間違いなく精神が荒れる。一度荒れた精神は瞬く間にあらゆる支障に連鎖し、壊れる。ただ文字を打つだけの僕ですらこの有り様なのだから、イラストレーターや漫画家の痛みとプレッシャーは半端ないであろう。羨ましがられるほど稼いでいるのなら、なおさら身体に鞭打っている筈。それは確実につらい。
 もちろん、サラリーマンが頑張っていないと言っているわけではない。単純にフリーランスの作家が、「肩凝り」という現実的かつ非常にカッコ悪い症状と隣り合わせであることは事実なのだ。「あいつだけ楽してズルい」なるネット上のよくある無限ループに、打開策の一石が投じられたような感覚。具体的な意見だ。「イラストレーターは肩凝りで鬱になる可能性が高い」。「肩凝り」の字面が間抜けすぎるだけで、これは由々しき問題じゃないか。
 一般的な社会人も肩凝り以外のトラブルを多々抱えているし、イラストレーターにも肩凝り以外のこうした悩みは数多い。つまり、みんな生きるために戦っていることに変わりはなく、他人の苦痛も幸福も誰も図ることはできないのですね。そんな綺麗事な締め方すらどうでもいい。そんなことより今もマジで肩が痛い。助けて。

 やむを得ないので、整体マッサージやストレッチも行いつつ、散歩がてら夜の公園で謎の棒にぶら下がっている。僕もついに「夜の公園で運動している不審なおっさん」の仲間入りである。それなりに恥ずかしいし、棒の下でぶらぶらしている自分の姿が情けなくて仕方ないが、これで首と肩が良くなるならもう四の五の言ってられない。
 人類全員の痛み・苦しみはわかってやれないけれど、少なくとも「肩凝り」の苦痛は共感できる。みんなで柔軟がんばろう。ネットで加齢臭まみれの健康の話をする勇気を知って欲しい。マジで痛い!
 頑張ろうとは言ったものの、本心ではお前らも肩凝り地獄に苦しんで欲しい。


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