一口エッセイ:現実と向き合いたくなくて脳が拒否する

　起き上がれないので一日中眠っていました。
　「起きる→最低限の行動・連絡を行う→睡眠薬」を繰り返す。さすがに少しずつ体力と精神力が回復してくのを実感しますが、途中、現実に直面したくなくて頭が痛くなる現象が発生する。頭痛というか極度の眠気が正しいか。脳味噌が「これ以上考えてしまう」ことをシャットダウンし、強制的に眠らせて夢に誘うような感覚です。
　そう。起き上がったら、ベッドから降りて人間に戻ったら、横になっていた期間に放置していた諸々と向き合う。Discord、LINE、メールなどの各種連絡を確認し、それぞれに対応する。もちろん原稿としてテキストを執筆する必要もあるでしょう。それが嫌で本能的に身体が起き上がることを拒否する。どうせ頭痛と眠気でまともに動けないのだから、睡眠薬や向精神薬を飲んで寝ていようぜと脳が囁く。
　これがとてつもなく怠い。全身がスマホを開くことを拒否するものの、スマホを開かねば暇つぶしができない。ローカルで遊ぶ用のゲームボーイアドバンスはあるが……どうしてもKindleやブラウザくらい開きたくなる。あと、予定を確認したくもなる。ストレスの負荷でうつ病に近い……自己判断なので明言を避けたものの、要するに徹夜や連絡の多さで疲弊して鬱になっている。察してはいたが自認すると色々面倒なのでそこまででは無いフリをしていた。実は米青ネ申禾斗から最近も遠回しに診断はされていますが。書いたところで休日は手に入らないのだから、こうして日記上で鬱々しくなることくらいは許してもらいたい。
　自覚したとてどうしようもない。文字が打てるだけまだ軽度である。本と映画が楽しめず、スマホなど人間関係を想起させるものを持つと頭痛がして、身体が睡眠を欲する。食事に関しては元から楽しむものではないので判断材料にない。抵抗したところで医者が言ってるのだからそうでしょう。連日の徹夜以来、白髪が増えて肌が荒れた。あと僕は自律神経が乱れると異様に発汗するのですぐわかる。「発汗→生え際に汗がたまる→ニキビができる」という経緯を辿るので、生え際にニキビができたら危険信号。今は4つある。精神どころか身体がシグナルを送ってくれている。誰から見ても休む合図なのに、不思議なことにだんだんとこうなると自己認識ではまだまだいける気がするものですね。日常生活を送れるフリをすることで何事もなく元に戻ろうとしている。
　もう一日18時間くらい眠っている（正確には1.2時間くらいベッドの上でゴロゴロしてますが）ので、今はさすがに回復気味です。4日くらいこんな感じだったかな。今日は歯医者へ行かねばなりませんが、ちょうどよい散歩かもしれない。日光を浴びよう。
　途中、僕の頭は確実に「起きると現実を見るぞ」と警告していた。倒れ込んでいる時に先送りにした課題や、自暴自棄になって疎かにした人間関係のカバーを一気に行わねばならない。まとまっているので常時よりつらい。そんな苦しみが眼前にあるのに、どうして冷静でいられようか。このまま曖昧にうだうだしておけば、それはそれで苦しいものの、何もしなくても許される。というか頭痛と眠気で何もできない。僕の自暴自棄はまだ僅かな社会性がセーフティネットとなって軽症でしたが（勢いで中国行きを不参加にしたものの実際行くとなると負荷もかかるので合理的でもある）、この状態で暴れちゃったら余計にリアルへ戻りたくなくなる筈です。誰もが「あの時はたいへんだったから」と許容や理解を示してくれるものでもない。謝罪や釈明で追い詰められる自分を想像すると、またまた塞ぎ込んでしまう。
　こうして眠れずベッドの上にいると、休むつもりでもよからぬ想像が膨らんで、不安と焦燥感で圧迫される。人間、苦しい時に眠れずいると無意味にイヤな妄想をしてしまうものだ。最悪なケースは想定していた方がいいですが、そればかりしか考えられないなら、ただの臆病な愚か者。わかってはいるけれど、弱るとすべてが敵に見えて無闇に精神力を消耗する。本当に頭ではわかっているつもりなんですがね。
　さて、現状を把握した（つもりでしかない。人間、こんな数行のテキストで心情をまとめられるほど単純ではない）ところで、対策です。まず、歯医者まで眠る……そこから日光を浴びたついでにお散歩をしよう。幸い、季節的に暑くない。それからゆっくり、ゆっくりと溜まった仕事を崩す。また未来の原稿に取り掛かる。隙あらば漫画でも読んで少しずつ感性を取り戻す。「楽しい」「嬉しい」を確認する。僕の場合はこういう時、不思議と一回なにかを楽しんだらスルリと感覚が戻っていく。本を読む、アニメを観るくらいが楽しみのくせに、それが頭痛に邪魔されるイライラが最も障害なのだ。逆に言えば今は読書すらするなというストッパーには従った方がいい。脳と身体は意外とわかりやすく助けてくれます。
　初の海外＋イベントでファンと会う機会が潰れたことは悲しい。しかし、考えたって仕方がない。代わりにのんびり一人で国内でも回ろう。明日から通常に意識を矯正していこう。暗い意識は文字にして書き込むことでさらに増幅されるので控える。時と場合によって、正直に落ち込んだ様子を見せるくらいは薬になるけれど。変に取り繕うのも疲れるし。
　この数日学んだこととして、やっぱり他人は他人で、究極的に自分を救うのは己だけだ。これは諦めや敵意でなく、「追い詰められたら他人が察して助けてくれる」なんて甘えで、みんな疲れているから他人の危険に気づく余裕もない、が正しい。いざとなったら自分で判断して速やかに眠るしかない。初めから眠れなくて困っているんだろうが（怒り）。