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選り抜き一口エッセイ:「顔がいいから全てを許されている破滅的な性格の女」の最たる例としての夜長姫と夜汽車先生の画力

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 「顔が良すぎるゆえに何でも許されているだけで、性格が本当に壊滅的に悪い女」が大好きという話は何度かしてきましたが、その最たる例が「夜長姫と耳男」に登場する、天真爛漫に人が死んでいく様子を楽しむ蠱惑的なお姫様……夜長姫ことヒメです。
 ヒメはとてつもなく異常な女の子でして、人が死ぬと邸内を駆け回って心底嬉しそうにそれを伝えて回るし、高楼から村人が疫病で苦しみながら死んでいく様を眺めるのを何よりの楽しみとしております。太陽に対して「死ぬ人をたくさん見ることができて羨ましい」と感じるような少女。しかし人々はそんなヒメの笑顔の麗しさに取り憑かれ、憎むよりも先に恐怖をしてしまうのです。
 そんな狂気と耽美の物語である「夜長姫と耳男」は、坂口安吾の美文で書き連ねられた短編ですが、乙女の本棚シリーズでは、そこに夜汽車先生のイラストが加わり、視覚的にも魅力的な一冊となりました。
 夜汽車先生の描くイラストはとても幻想的で、ヒメの魅惑的な容姿と狂気を、これでもかと描ききっております。この作品はどこまでいってもヒメの狂った美貌ありきの物語ですので、それを担当するのはとんでもないことです。それだけ夜汽車先生の画力が素晴らしく、ヒメの魅力を表現するに充分だからでしょう。
 坂口安吾による文章の一つ一つも、夜汽車先生による挿絵の一枚一枚も、その全てがとんでもなく美しい奇跡のような一冊なのでした。

 ※Twitterに連載していたエッセイからの抜粋です。↑で購入できますので、エッセイ集をぜひ読んでみてね。

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