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ネットの悪者

 超てんちゃん誕生日&100万本記念を無事に終えられ、ひと段落つき、スタッフや自分的には満足したので、こんな場末の独り言まで読むような変わった方相手には、踏み込んだ話を書いてしまうことをお許しください。
 100万本記念とは言うが、こんなゲームがここまでヒットすることなんて、どう考えてもおかしい。そんなこと自分でもわかっている。ポルノグラフィティだって「100万人のために歌われたラブソングなんか」を皮肉っている。が、ニディガはそうなった。世間的に許されることではない。精神に悪影響を及ぼす演出も多く、教育に良いことなんて何一つないし、ほぼ毎日製作者の倫理観を疑うと苦情も入る。反社会的で不健康。こんな作品を世に出す作者は常識がなく、いたずらに治安を悪化させるゴミだ。そのうえインターネットやサブカルチャー文化内で持ち上げられ、同じ場所にいる人間たちにとって非常に迷惑。今すぐ、にゃるらは死んだ方が世のためであろう。
 残念ながら、だからこそニディガはヒットした。プロデューサーは「(少数で製作するのだから)インディーゲームに必要なのは怨念だ」と語っており、間違いなくニディガは怨念と執念の塊である。なので売れてしまった。僕は、もっと美少女キャラクターを……ヒロインを「人間」として向き合うべきだと信じているし、『ドキドキ文芸部』で先にそれをやられた上で、特に悔しがらずに続いた美少女ゲーム業界も、逆にヒロインの数だけ増加していくソシャゲ関連も好きになれなかった。たくさんの美少女とスマホの画面で簡単に触れ合えて楽しめることは、現代の最適解に思える。そういうものはあってもいいし、そこにも確実に愛はある。が、誰かがヒロインとゲーム性を融合させた美少女ゲーム文化を、日本から出すべきだと感じた。
 そんな怨念と偏見から「超てんちゃん/あめちゃん」という美少女を創造したうえで、現代を生きるための人間として、不健康さや性格の悪さも与えた。現代でどんどん偶像化されていく推し文化へのアンチテーゼもあったのかもしれない。本来、人が見せたくない部分も組み込み、時と場合によっては薬の過剰摂取や自傷も行うし、それらをネタに自虐やかわいいに昇華することもある。不器用な道化として笑われながらも、誰かに見てもらうために必死で、そんなどん詰まりな状況でしか咲かない花もあると信じている。それを悪の華と呼ぶのかもしれない。
 アナタたちがどう感じたかは知らないけれど、僕にはこのようにしか生きられない人がいることも、それを安全圏から観察するSNSの環境にも、真摯に向き合ったつもりである。
 自分がゲーム本編で切り取ったネットの一瞬には確実にその側面はあったと思うし、混沌としていたからこその魅力と可能性も存在しているはずだ。本来そんな悪影響を及ぼす思想なんて許されないだろうが、これは創作物であって、創作の世界は自由である。けれども、世界が正しくあって欲しい人間は、そうでなくとも単純に僕が嫌いな人間たちは、こんな未熟なジメジメした創作物と作者なんて批判も批難もして然るべきだ。僕自身がこんなこと正しいなんて認識していないし、主張するつもりだってないもの。ただ自由にやらせてもらっているだけで。
 そうして他人から人格を否定されるたび、畏敬するマリリン・マンソンが「悪意の象徴」として世間の敵に認定されたことを連想し、彼に僅かでも近づけたことにピカレスクな気持ち良さも感じてしまっている。そこまで含めて僕はたいへん気持ち悪いだろう。反面、同調圧力と妬み嫉みへなにかもっともらしい理由をつけなければ、他人を叩くことすらできないネット民に対して、僕側も醜く感じているのだからお互い様です。そのような大衆に同化しないため、今の僕はネットから離れるよう心掛けている。結果的に、アナタと同じく健康を目指して現実と向き合うこととなったのだ。笑い話ですね。
 そんな不快な自己憐憫やナルシズム、傲慢や浅さ、醜さに、ジメジメに自閉した最新の弱さに囚われたうえで、商業的に成功してチヤホヤされているオタクとサブカル気取りのカスゴミなんて嫌われてる当然でしょう。僕は、もはや周辺人物以外のネット民は僕のことなんかバカにしているし嫌っていると認識している。客観的に見ても不当なヒットで調子に乗った"ネットの悪"そのものでしかないのだから。アナタが正義側や文化の理解者になって気楽に人格攻撃できるサンドバッグであり、アナタが信仰する文化の破壊者。
 ただ、悪者なりに悪の美学はある。ごくごく僅かな僕と同じ思考の人間の気持ちはわかるつもりでいる。100万人のファンが自分にいるだなんて考えていない、購入者の中で僕の人格まで肯定する人間なんて1割にも満たない。それでいいのだ。こんなふさげたゴミ人間とその創作物なんて、一刻も早く次の「正しい作品」とやらが台頭して風化させていくべきだ。思いっきりダサく見えるようにしてくれ。それまで僕はネットの悪者としての役割を全うするつもりだし、なによりあめちゃんには愛着がある。これまでもこれからの創作物にもね。倒すべき相手に手を抜かれたって苛立つだけなのだから、僕も僕で自分が美しいと思ってしまったものを全力で貫くしかない。僕なんかが上に居ていいわけがない。せめて誰かの踏み台として潔く散るくらいが落とし所だ。
 少し先の未来、こんなみっともない思考の子供人間が持ち上げられた恥ずかしいシーンを過去に埋めるため、「善く」「正しい」、または僕のような勘違いクリエイター気取りへの怨念を込めた作品の出現で、僕を散々蔑んで嘲笑ってきたその顔と手で、次は不謹慎な流行りモノを正義側から殴って成敗してください。ノベルゲームにはまだまだ多くの可能性があるのだから、悪を滅ぼすためにアナタはそれを実行する必要がある。
 

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