一口エッセイ:特別展アリス
現在、六本木で開催されている『特別展アリス』を見に行きました。水木しげるの展示も行ったけど、そちらの話は後日。
不思議な国のアリス……世界で最も読まれたおとぎ話であり、僕が求め続けてきた最も感性の鋭い少女の物語。今回の展示は、そんなアリスの世界観のみでなく、モデルとなったアリス・リデルや、作者のルイス・キャロルの生い立ちや、当時のイギリスの風習までも展示と解説がなされ、どうやってアリスのお話が生まれ、広まったかまでを追体験できる素敵なイベント。
アリス関連の書籍や作品を集めてきた中でも(ちなみにアリスをテーマにした最高傑作は、ヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』だと認識しております)、今回の展示は大変満足であり、凝った内装や仕掛け、特にサイケデリックに色が変化していくお茶会の再現は素晴らしかった。まさに夢の世界は落っこちたような幻想的な非日常感。参加者自体が、この不思議な展示会に迷い込んだアリスそのものなのですね。100点! ちゃんと、アリスとサイケデリック・カルチャーの関係性にまで網羅していて感動……。そう、アリスの世界こそが、少女の感性が生み出した理想のトリップそのものですから。
さて、そんな自分が一番「アリスの実在性」として完璧だと感じた写真集が、まだ規制が緩かった昭和時代に出版された『少女アリス』でして、まるで本物のアリスのような可憐な少女を巨大な本棚の前で写した写真に心奪われて10年以上となります。時代ゆえに少女のヌードがありまして、法的に現在は所持すると怪しいですけどね。元からロリータを撮影していた写真家でない方の作品であり、以前や以降の作品は、ほぼ少女アリスの魅力とは別の方向の写真集しか出版しなかったため、突然変異で生まれた奇跡の写真集なのです。完全版として再販された際に買ったんですよ。18くらいの頃に。10代には大金な万札握りしめて。
最も心惹かれた「アリス」には、もう法を破らねば会うことができない。むしろ、その事実こそが美しく、アリスはそれくらい天真爛漫で、凡人の手に届くことのない少女でなければならないのです。
毎日の日記をまとめた同人誌や、商業エッセイ集をよろしくね。場合によっては、読者も一種のトリップ体験です。
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