一口エッセイ:もう他者と会えなくなる夢
コミティアへ行きました。購入した本の感想は、改めてどこかで書くとして、同人即売会へ行くということは、とても体力を消費します。特に、日曜のイベントですから、僕の場合はニチアサを観てから徹夜です。いっぱい歩くし、眠たいしで身体はボロボロ。ここでしか手に入らない書籍のありがたみを考えたら、別に構わないのだけれど。
で。最近ここまで体力的に疲弊したことがなかったので、すっかり忘れていたのですが、この疲れのままデエビゴという「悪夢を見る」睡眠薬を服用して眠ると、僕は必ず金縛りに遭う。一時期は、その対策として音楽を流したり電気を点けたまま眠る(そうすることで金縛りだと気づける)などしていたのですが、今回は考えなしに電気を消してそのまま就寝しました。
案の定、発生した金縛り。真っ暗な部屋の中、身体が一切動かない。しかも、その状態で意識は曖昧で夢の中のようなので、自分が金縛りであることに気づけない。急に起きたと思ったらまったく身体が動かない恐怖に襲われる。不思議なもので、人はどうも身体が動かなくなると安直に「死」を連想するようでして、例に漏れず僕もこのまま動けず死ぬのかなと想像し始めます。
隣にスマホがあることは分かっているので、どうにかそれを開いて安心したい。しかし、手が全く伸びない。ちなみに、この金縛り状態時にもう少し意識をコントロールできたら、幽体離脱のような体験ができるらしい。わりと金縛りに遭ってきましたが、それは一度も体験していません。
動けない状態で、いったい何分の時が過ぎたのでしょうか。確認もできないし、そもそも半分夢の中なので体感時間も合っていない。長い暗闇に耐えているうちに、ようやく再度眠りにつくことができました。が、その先にあるのもデエビゴの副作用による悪夢です。
どうやら、金縛りの後に見る夢は、とびっきり悪夢であるらしい。他人の夢の話なんて、夏目漱石かルイス・キャロルでもない限り語られても仕方ないでしょうが、これは僕の日記なので、自分の夢の話を遠慮なしに書く。
──こんな夢を見た。
まず、僕は誰かと待ち合わせしているらしい。とても大切な誰かで、しかしそれは特定の対象でなく、「他者」という概念の塊なようです。とにかく「他者」の代表とこれから遊ぶ約束をしているのだ。思うに、夢に現れた他者の概念の正体については、金縛り時にスマホがすぐそばにあるのに開かない恐怖からの連想なのかもしれません。スマホ=他者だと認識していたわけですね。今度は、夢の中でちゃんと他者と会おうとしているのです。
「他者」からLINEがくる。どうやらわりと近くにいるらしく、待ち合わせ場所へ移動しようとするも、何故か一向に辿りつかない。他者からは「ここにいるよ」と見覚えのある場所の写真が送られてくるのに、僕はカフカの『城』のように目的地まで着くことができないのだ。どんどん不安だけが募る。
仕方ないのでLINE通話を開始するも、そのたび混戦で知らない大人が応答するので、怖くて切って再び掛けるのを繰り返す。それでも、他者への通話は全く繋がらない。次第に、他者から送られてくる目的地の写真が、見たこともないくらい綺麗にライトアップされた教会になった。
「とっても綺麗な建物があるよ。早くおいでよ」と、他者は無邪気に連絡してくる。スマホの画像データでもわかるほど、煌びやかな空間だった。それが近くにあることは感じているのに、どんなに走っても一向に到着しない。次第に、僕がその教会を一目見ることが叶わないこと、その上で他者はすでに教会のイルミネーションを満喫していることへ、嫉妬と悲しみが混在した感情になっていく。走れば走るたび、感情と思考がぐちゃぐちゃになる。
夢なのでオチは無いまま、気づいたら飛び起きたのですが、起きてもしばらく「僕は、あの絢爛な教会に辿り着くことはないし、他者とも二度と会うことはない」という妄想に取り憑かれ、切ない気持ちになった。次第にあれが長い夢だったと理解し、今度こそスマホを開くと、そこにはSNSを通してたくさんの他者が存在してくれたので、僕は「おまえらと会えなくなる夢見た」とだけ呟いたのです。
毎日の日記をまとめた同人誌や、商業エッセイ集をよろしくね♪
サポートされるとうれしい。