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【翼の翼】親が知っておくべき中学受験の苦しみが詰まっている!親子関係が破綻しない中学受験をするためには?

お友だちに勧めてもらった、翼の翼、という朝比奈あすかさんの新刊を読みました。



中学受験をテーマにした小説は数あれど、この本は間違いなく親の視点から描いた中学受験小説の金字塔と言える作品になるのではないでしょうか。これからお子さんが中学受験に挑戦する親御さんは、是非読んで頂きたい本です。

これからお子さんの中学受験が控えている方で内容を読み、もし、自分には関係のない話だと感じた方がいたら、もう一度、お子さんが受験生となった時に読み返してみて欲しいと思います。きっとこの本に描かれた景色の見え方が変わる。そう思います。

以前、塾の先生が中学受験は通過儀礼、イニシエーションであるとお話しされていましたが、受験終了後、この通過儀礼とは子どものためだけの儀式ではなかったと気付きました。

そう、親にとってもこの通過儀礼は、これまで庇護するだけの我が子が自立する、子どもと切り離される痛みを伴う儀式でした。

だから、苦しくて当たり前なんですよね。苦しいということは、それだけ子どもとしっかりと繋がっていたということ。それだけ子どものことを思い、重ねてきた時間があるという何よりの事実だったんだ、と。

1.あらすじ

物語はこの本の主人公、円佳の一人息子、翼が新小3の全国テストを受け、出迎えるシーンから始まります。

翼は幼い頃から賢く、自分で本を読み始めたのも早く、周囲のママ友たちから一目おかれる、そんな存在でした。

待ち時間に開かれた保護者会で、塾の担当講師から「子どもはみんな、お母さんを喜ばせたいと思っている。休みの日にテストを受ける。それだけでもとてもすごい。」ということを念を押され、「結果は問わない。お休みの日に頑張った」と呪文のように唱えて翼を出迎える円佳でしたが、翼が答案用紙に答えを書いてこなかったことに心が波立っていることに気づくのです。

単身赴任で中国へ行っている夫の真治は、「子どもは野山をかけまわる」ものだと説き、入塾はまだ早すぎると言いながら、自身も中学受験経験者で、第一志望に落ちていることもあり、翼の結果をどこか気にしてしまう。

そして、出来ると思っていた我が子が、中学受験を目指す母集団の中ではそれほど出来るわけではないと知った円佳は、「この子のため」と言い聞かせ、疲れてつい眠ってしまう翼を起こし、真面目には勉強しない時には小さなペナルティーを与えながら、ただ上を目指して勉強に向かわせるのです。

わたしはこの子の可能性を広げてあげたいのだ。そう思った。これは希望ではなく、義務のようなものだ。もしこの子が高学年になってから中学受験をしたいと言い出した時に、もうバスに乗れなかったらどうなるだろう。わたしはこの子の選択肢を増やしたい。そう、中学受験をするのかどうかはまだ先の話だ。二シアサ圏なんて言われたけれど、星波学苑がどんな学校か、何も知らないのだから。どの学校を受けるのかなんて、ずっと先に出てくる話であって、今はただ、翼の未来への選択肢を増やしてあげたいだけなのだ。

そう思うと先ほど感じた心細さは溶け消えて、「この子のために」というまっさらな愛情には正しさしか見つからず、円佳の頬には笑みが満ちる。

かくして円佳と真治はしづつ少しづつ、翼の教育に傾倒していくのです。まさに中学受験に傾倒していく親の心理を言い得ているではありませんか。

2. 低学年からの入塾と、コンコルド効果


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