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「グランジの神様」第7話解説〜八百万の神さまたち

第7話で、ついにあのおじいさんがやっぱり貧乏神だったらしいことが明かされました。
ついでにほかの神様も登場したので、彼らについて少し解説しておきたいと思います。


貧乏神について

実はこの「グランジの神様」という作品は、単純に「ボロ着てる=グランジ」「ボロ着てる=貧乏神」という共通項がネタ元です(爆)。

貧乏神もグランジファッションじゃん!と思い、貧乏神に関することを調べてアイデアをふくらませているうちに、優しい貧乏神がいてもいいじゃないか…という発想で描き始めました。

「グランジの神様」第3話より

てか自分にも絶対憑いてると長年思っていたので親しみ深いというか…(笑)。
(本当はもっと怖いものが憑いてたらしいですが、それはまた別のお話に)

カズオは図書室の本で貧乏神のことを知り、おじいさんに似ていることに気づきますが、気にしていません。
それどころかもう実の祖父くらいに慕っているんですね。
第7話にあった通り、たぶん住所や名前はデタラメですが(だからカズオがドキッとした)会社に提出する身元保証人の書類も祖父として書いています。
まぁ、禍津日神のお墨付きもあったので、本当の祖父と孫になったと言っていいでしょう。

「グランジの神様」第7話より

貧乏神とは、本来作中(第5話)にあるように、人を経済難に追い込む神様です。
もう少し詳しく説明すると、以前の記事に書いたかもしれませんが、

「怠け者・他力本願・悪いことは人のせい、自分ファースト、だらしがなくて不潔…」

…な人のところにやってくるといいます。

そのいっぽうで福の神と表裏一体とも言われ、憑かれた人に優しくされたり憑かれた人がそれでも頑張っていたりすると福の神に転じるという伝説が幾つも残っています。

だから、ベースはベタなお話でもあるかもしれませんが、少年カズオの成長と因果応報を受けるお母さんのストーリーでもあります。
あと少し続きますので、行く末をお楽しみにもう少しお付き合いくだされば幸いです。


邪鬼(じゃき)

邪鬼とは悪鬼とも呼ばれ、どうやら特定の魔物や精霊を指すのではなく、広い地域を襲う災害や疫病をもたらすものから個人の精神を冒すものまでオールマイティに災厄をもたらすものを指すようです。

例えば「貧乏神」はお金に困らせることに特化していますし、「疫病神」は現代ではトラブルメーカー的な人を指しますが本来は文字通り疫病を運んでくる神さまです。
それに対して他にもいろいろできるのが邪鬼や悪鬼の類いという位置づけのようなので、作中でも「貧乏神より能力があって強い」としました。

「グランジの神様」では、月岡芳年の「邪鬼窮鬼」をモデルに容姿を決め、芳年作品のように「貧乏神と懇意にしている」設定です。


月岡芳年 芳年存画「邪鬼窮鬼」 山田書店のサイトから部分引用


「グランジの神様」での邪鬼

禍津日神(まがつひのかみ)

災厄の神様と言われている、古事記・日本書紀の日本神話に登場する古い神様です。
災いをもたらす神様ということですが、まあこの神様に関しても諸説あって、頑張ってるのに災難ばっかりの人はこの神様のせいだとか、人の心の中に根付くネガティブな感情を司る神様なのだとかいろいろ…。

焦げ猫は最初普通の神様を描こうと思ったのですが、貧乏神や邪鬼も絡めて描いてるうちに、

この神様って人間にバチを当てる担当っぽいな

…とキャラができてしまい、

「それなら禍津日神がそういう部署のボスだろうから、これは禍津日神にしよう」

…と。

邪鬼も貧乏神も禍津日神の部下だというなら存在も納得できます。
なので、怖いけど悪い神様ではないというのが焦げ猫の解釈です。

ちなみに描くのに参考にしようと「禍津日神」で画像検索しても、なぜか、ある程度古い人が遺したようなものは一切ありませんで、それらしくない創作イラストしか出てきませんでした。
昔の人は描くのも怖かったんでしょうかね。
なので姿は一般的な神様でも、服の差し色に禍々しい血のようなエンジを使い(実はこの色KNロジの作業着のキーカラーでもあるんですが)、あまり善人っぽくない、うさんくさい顔(笑)・処断は厳しいが的を得ている…そういうキャラにしました。

「グランジの神様」に登場の禍津日神(様つけないとヤバいかな)

神ついでに、会社の神対応について

最後のページでやっとカズオが出てきますが、例の内勤さん…。

カズオ母はおそらく、彼氏のDVにより頭部挫傷・脳出血を起こし、邪鬼の采配で命は助かったものの半身不随かなにかになったと思われます。
当然収入がないので生活保護で入院→親族の扶養照会って流れで学校から辿ってカズオの勤務先に(当時のカズオは電話を持ってない)連絡が行ったんだと思いますが、従業員の家庭事情もいろいろ見てきて察し慣れている内勤さんの対応はさすが。

「グランジの神様」第7話より

扶養照会とは、生活保護を受ける人の肉親や親族で頼れる人はいないのか確認し、いたら援助をしてもらったうえで生活保護はその足りない分を支給するものとして少しでも遣う血税は少なく…というシステムですが、親族がいても彼らもアップアップだったりトラブルがあって事実上離縁されていたりというケースも多く、照会の問い合わせが来ても援助は義務ではありません。

そして確かに本来、未成年の親族には扶養照会はされないものですが、カズオ母には頼れる親族がいないというのはお話を最初から読んでいる方はなんとなくわかると思います。カズオ母の性格からして甘えられる場所があれば離婚後即帰ってるはずですからね。
役所の担当者は虐待の経緯を知らないし、「働いているから」「唯一の肉親だから」とダメ元で連絡したんでしょう。
けっこうお役所って本来のルールを守らないことが多いし、倒れたのを親切で報告するつもりもあったかもしれませんが。
それをわざわざカズオに話さないのも内勤さんの思いやりある対応だったと思います。

運行管理者はドライバーのメンタルケアも仕事のうちですので、人知れず陰ながらでも、これも本来の理想の仕事のしかただと思います。

ワケアリに対応するのに慣れている

さいごに、DV男について

同棲していたカズオ母をボコボコにして追い出したDV男ですが…。

仕事はできるんだろうし、働いて稼いだお金をパチンコに遣われちゃ、確かに怒るのもムリはありません。
生活のお金をもらってるのに、貴方が帰ってこないから…と子どものような言い訳をするカズオ母もカズオ母ですが、コレはどっちもどっちですね…。

正論言ってても暴力はいけない。

こうなると痴話ゲンカとしてレベルの低い沼ですねえ…。

「グランジの神様」第7話より

この男性も、カズオ母も、ステレオタイプなんですよ。

男性のほうは「面倒みてやってる」「オレ様が稼いで喰わせている」っていうスタンスなわけだし「風俗や水商売やってた女は嫌」(←まぁそういう人に限って利用してるんですけども)なんて古いというか幼いというか。
生活に困ってせざるを得なかった人は焦げ猫も含めていっぱいいます。

焦げ猫も何度か男性にぶん殴られてますが、ドライバー職でさえ「客先に出せない顔」と言われ休まされたこともあります。

カズオ母のほうは、以前の記事でもお分かりのとおり、女は小綺麗にしてれば男が喰わせてくれるし優しくしてもらえるもの…それが叶わないのは不当な苦労だから、何して遊んでも許されるというような甘えが強い。

そういう2人だから縁ができてしまった。

これは貧乏神のせいじゃありませんね。

ちなみに焦げ猫も体調面でトラックに乗れず生活に困って水商売したことはあり、向いてないと思って数ヶ月で辞めたという経験もあるので、カズオ母がそういう仕事をしていることは悪いとは思ってません。偏見はないです。

問題はそれを生活に充てないことと、健康なのに「それしかしない」自分を疑問視しなかったり、他のことやってみようっていう気概がなかったりってことです。

しかもこの期に及んで放置した未成年の息子に金銭的に頼ろうとする始末。
まぁマンガなんで大ゲサに描いており、実際こんなひどい人は居ないと信じたいですが。

ただ、DVを受けた上に神様からは厳しい処遇…それもひどいなと思われるかもしれませんが、禍津日神が言ったようにこれは単なる不遇や不幸ではなく「変わらなくてはならない」ということなのかもしれません。

考えてみりゃ健気な息子に恵まれたこと、財力のある男性にご縁があったことなどは、感謝して大事にすればよかったのに

ちなみにコレお説教とか教訓とかじゃなくてね…、自分の経験も入ってるんですよ。
変わらなきゃならないときは、変わるまで運命に叩かれるというところがです。


次回の「グランジの神様」、アップまで少々日数かかるかもしれませんが、読者の皆さまどうぞお楽しみに!

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