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カズオの運行日報 第2話「はじめてのおつかい」 解説

「カズオの運行日報」第2話「はじめてのおつかい」解説です。

今回、今まで免許がないゆえに助手だったカズオが、準中型免許を取ったことにより初めて独りでの仕事を任されます。

これは、日用品のバラマキ(ばら撒くように何軒も回って配達することから)です。
店配(みせはい、てんぱい。お店に商品を配る)でもあります。
中身は食品ではなくティッシュとか洗剤とかそんなようなもんで、○✖️商会ってのはメーカーではなく問屋さんか倉庫業だと思ってください。

ルート配送に近いですが、日によって注文する店が違うので、だいたいのエリアでひとまとめにして時間指定のある店を鑑みて自分で順番を考えて配達するパターンの業務です。


実際に起きたやらかし

焦げ猫が「レモン」と「オレンジ」の取り違えでミスったのは当時現場で語り草になったくらいなので、当時の関係者がコレを読んでいたら焦げ猫は身バレするかもしれません…。

作中ではドラストにしていますが、要は同じ業態の店でしかも町名・丁目まで同じ、看板が黄色っぽい柑橘系の果物の輪切りの絵なのも同じ、店名も果物の名前まんま…の競合店に間違って納品したことがありまして。
地元だったので先にできた方はときどき利用しており、店の名前なんか意識してなくて「あーあそこね」と、思い込みで伝票の住所の番地まで見ずに行ってしまったのです…。
表に回って看板を見たり、お店の人にも伝票の宛名が間違ってないか確認したりすればよかったんですけど、まぁコレもあるあるで店員さんが忙しそうだったり、発注した人じゃないと頼んでないかどうかわからなかったりで普通に受け取ってもらっちゃいました。

誤配したとわかったとき、はじめて、その町内にシレっとそのパクリのような競合店が新しくできていたことを知りました。
しかも、その場所も元は別業態・別会社の有名チェーン店の居抜きで、まだそれがあるとばっかり思ってた場所だったんです。

系列店だったらこんな近くに同じような店は出しませんから、あきらかにえげつない競合で、まさにその商売敵に下ろしてしまったわけです。

当時はロクなナビがない時代でしたが、知ってる場所だと思っても、伝票の宛名・住所は番地までしっかり確認は基本中の基本と思い知りました。


配達が終わったときの達成感


カズオの運行日報 第2話より

このコマでカズオが「やった感ある」って言い方してますが「荷台がカラになったときの充実感」は、こういう件数持ちの配達や細かい物のバラ積みだと格別ですね。

回収品がたくさんあるような業務だと多少薄れはしますが、

「ぜんぶ届け終わった〜!!」

…っていうあのときの満足感というか、荷台がカラになって運転もラクになって帰るときの達成感はなにものにも代えがたい。
この楽しさも、トラックドライバーの楽しみのひとつです。

焦げ猫は小さい頃、家の手伝いでいちばん好きなのが「おつかい」でした。
買い物だけじゃなくて、「誰それさん家にコレ届けて」っていうのが大好きだったんですよ。
お散歩がてらやチャリで外をウロウロできて、届けた先で「ありがとね」って言われて、母にも「ありがとう」って言われて楽しかったんです。

コレがきっと原点で、はじめて4t乗ったときに、「たくさん届けられればやり甲斐もデッカくなるな」と知って業界の沼に陥りどんどん大きい車に…(笑)。

なので作中で描いた「倉庫満杯」の絵図のようなときはガッカリ倍増でした(^^;;
コレは「あるある」ではありますが、そうしょっちゅうあるわけでもなく、基本「荷物を待っている人のところに届ける楽しさ」はキレイゴトじゃなくホンットウ〜に楽しいですよ。

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がぶ飲みしたいときー!なぜか歓迎されないときー!


カズオの運行日報 第2話より

で、この、

「なにも今日持ってこなくてもいいのに!」

…っていう荷受け側の言い草ですが。

これも本当にあった話というか、「あるある」です。
焦げ猫が当事者になったのも一度や二度ではありません。

いちばんズッコケたのは、「福岡から神奈川まで翌AM着 」って指示で、福岡で積み上がったのが15時近く。

まぁ、それでも別途全線高速代出ましたし、問題のコンプライアンスも2024年問題以前の現行ルールだったんで、途中4時間の分割休憩で仮眠して、なんとか午前中に着荷主に滑り込めました。
さぞ急いでる荷物だと思いきや、開口一番、

ええっ今日!?今!?

…と困惑され、荷受けの段取りにアタフタしている様子…。
フォークリフトでないと降ろせないちょっと特殊なモノだったんですが、ここにリフトがねえとか騒いで結局隣の部署からリフト借りてきて…。

夜っぴて走ってきたのに、コレじゃなにも翌着じゃなくてもよかったじゃん!!…って思いますよね。


あとは作中のように倉庫がいっぱいで、ドライバーは積んだ荷物を「いつまでに」と指定されてるからそのとおりに来てるのに、

「置くとこないのに来ちゃったの!?」

…って八つ当たりされるパターンが多かったです。

まぁ片付くまで待つしかないですけどね…。
倉庫の整理を平然とドライバーに手伝わせるお客さんもいますが、本当は自分が持ってきてもいない荷物で破損なんかやったら面倒なんで断れるなら断って待ったほうがいいんです。

そんな「附帯作業」も、問題になってるのでいずれ描きます。

個人宅に届く宅配は時間や日付の指定ができて皆さん身近なので理解しにくいと思いますが、コレも商習慣が多重構造になってるせいもあるのかもしれませんね。
運搬だけでなく仕入れそのものにおいても多重構造になっていて、発荷主と着荷主のあいだで直接日にちが決められないケースも多いのかもしれません。


カズオの運行日報 第2話より

本日のこだわり

毎回解説時に、その回で焦げ猫がこだわった作画や演出を毎回ちょこっと紹介しようと思います。
べつに重要な情報ではありませんので、スルーして頂いても全然オッケーです(爆)。

台車の扱いがサマになる

こういう小口配達やり慣れてくると、手押し台車の扱いがサマになってきます。
このコマ(再掲)、下描きでは腰に手を当ててドヤ顔してるだけのカズオだったんですが、それを表現したくて台車を折りたたんでる絵に変更しました。

初日とはいえカズオは下積みが長いですからね。
慣れてる人は台車の出し入れが速いです。

そういえば昔、佐川急便の集配ドライバーさんで空になった手押し台車を華麗に乗りこなしてトラックに戻る人がいる…とテレビで取り上げられてたのを見てまして、「おおっこりゃカッコいいし速くて合理的だな」と思ったんですが…。
倉庫内でハンドリフト(人力でパレットを移動する道具)をキックスケーター代わりにする人は未だにどこにでもいるのに、路上では危ないからヤメロってなったんでしょうか、実際に遭遇したことはありません。

でも折りたたみにしろそうでないにしろ、このテの台車は扱いがサマになってるかどうかでスキルが見抜ける部分はあります。
そのまま押すと段差でひっくり返るような場所では「引く」ほうにスイッチしたり、高積みしたら片手で台車のハンドル持って片手を荷物の頭に添えるとか、台車に複数の荷物を載せるのに棒積みせず「組ん」だりですね(カズオがやっていた、1段ごとに方向を変える積み方)。

小さなコマなのでちょっとわかりにくいですが…「組む」とはこんな感じで、ただ同じ方向に積み上げるより崩れにくくなります。

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Bluetoothイヤホンの名機

カズオが作中でBluetoothイヤホンを使ってますが、コレ焦げ猫がかつて愛用していたプラントロニクスのPT90か70です(デザイン、機能ほとんど一緒)。

コレ、何年くらい前だったかな…、かなり前です。
当時主流だった耳の穴に押し込んで完全に塞いじゃうカナルタイプのイヤホンが苦手で、いろいろ調べてコレは着け心地がヨイし聴こえもいいってことで買ったんですよ。
噂どおりで愛用しまして、紛失すると同じモノを買って数年…4回目に買おうとしたときに(4回も失くすな)、値段が10倍になってて目を疑いました。

3000円台で気軽に買えてたはずが、万札何枚!?って値段です。

優れた商品が生産終了すると値段吊り上がるってのやめてほしいですわ、ホントに。

それ以後、元のPTシリーズの値段と同じ価格帯で同じような使い勝手のイヤホンに未だ出逢えていません。
耳にフィットする形状は同じようでも、音が聞こえにくかったり…。

失くしてしまった幾多のPTシリーズに感謝と追悼の想いで登場させました…(爆)。

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現場のとっ散らかり感

青さんとカズオの回想「倉庫満杯」のコマ。
倉庫内のパレットにはラップが巻いてあって、ラップとラップの芯が転がってるトコですね(笑)。
フォークリフトもほとんど吹き出しに隠れちゃいましたがあとから描きたしました。
現場のとっ散らかってる感が少しでも伝われば(笑)。

もしかして空パレットも足りない事態なのでは

青さんとカズオのプロレスについて


コレはもう完全にエンタメとしてのマンガの演出だと思ってください。
普通にマンガのギャグシーン・ほのぼのシーンと思っていただきたいのですが、なんでもハラスメントになっちゃう時代なんで一応但し書きです。

まぁ実際いい大人が何年も一緒に仕事してて悪ふざけでじゃれるのはよくありますよね。
このシーンも作中では珍しくない設定で、カズオはもうイジられ役に徹してるというかべつに嫌がってはいないのです。槍杉さんも完全スルー。
クソ真面目な槍杉さんとの対比がおもしろいと感じていただければ狙いどおりです。
頭わしわしは私も娘にやります。意識したことがないですがある意味愛情表現かなぁ。

今後もこういう絵は描きますが、くれぐれも「運送業はみんなこういう体育会系のパワハラをされる」とは誤解しないでくださいね。

無難な優等生しか出てこないマンガって気持ち悪いでしょ。
公的機関が啓蒙のために外注に描かせるマンガじゃあるまいし…。
まぁ、ギャグの演出にこんな但し書きが必要な風潮になったのは時代の変化ですねえ…。

長いおしゃべりにお付き合いくださりありがとうございました。
「カズオの運行日報」第3話をお楽しみに!


「カズオの運行日報」第2話↓

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