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「負うた子に浅瀬を教えられ」

noteのお題で「今年の振り返り」ってのがあったので、マンガを始めてからの技術的なことを絡めて書こうと思います。

今年は焦げ猫はいろんなことがあり変化・転機の1年でしたねえ…。
焦げ猫」という名前でお仕事を頂いてマンガを描き始めたのも今年ですし、昨年末からのヒドい体調不良の診断も6月にやっと降りてステロイド服用開始、難病申請・身体障害者手帳取得…。

マンガに関して振り返るなら、以前「グランジの神様」を描き終えたときにキャラクターへの思い入れが画風の変化や技術向上に繋がったことは書いてるのですが、

もう少し具体的に技術面で得たものを振り返りたいと思います。


環境について

デバイス…iPad Air 、Apple Pencil
アプリ…Sketches無料版→アイビスペイントX (プレミアム課金)

線画ペン入れ・アップロードだけはデスクで作業するようになりました。
普通に座ると腰や肩が数十分持たないので、現在はデスクの脚を嵩上げし、傾斜台を使ってかじりつくように作業しています。

椅子には厚手のジェルクッション。
それでも脚シビレますが…。


デジタルとアナログの違いを実感

以前は自分がデジタルで作画することになるとは思ってもいませんでした。
10年以上前の時点で、

「今から新しいことなんて覚えられない」
「Adobeのソフトやペンタブ…高額すぎる」

…というのがネックだったのと実際デジタルで描かれた作品で美しいと思ったものがなかったので、負け惜しみ気味に「アナログじゃないと味が出ない」なんてのたまってました。

Gペンのペン先からインクが紙に吸われるその瞬間に目を集中させて描いてるのに、「画面を見ながら板の上を先の尖ってないペンでなぞって絵を描く」っていうのが想像もつかなかったんですよねえ。
そういう先入観があったのでデジタルは拒否しておりました…。

今でも、iPadとApple Pencilをもってしても相当拡大しないと狙ったところになかなか線が引けません。

加齢や疾患で目・手先が弱ったので線がブレまくるというのもあると思いますが…。
それもあって、デジタルでの作画はユルい絵柄でスタートしたんです。
デジタルで技巧を求めたら若い人には敵わない、と。
でも絵を描きたいなら、もうデスクに長時間座っていられない身体なので、寝ながら描ける道具がせっかくあるならそれを使おうと。

ですが10年前と比べ現在はかなりの機能が搭載されたアプリが月数百円のサブスクで使えるのです。

とりまやってみよう…と、最初はSketches(無料版)で線だけのイラストを横になって描いていました。
こんなに肉筆のつけペンみたいなタッチが出せるんだと大喜び。

子どもの頃スリッパでこんな遊びをしていました

これが今年6月ごろの話です。

2月〜4月にライターの橋本愛喜さんの著書に描かせていただいたものは、出版社からはデジタルデータでの入稿を求められていたのですが、技術・環境が間に合わずアナログでした。

デジタルとアナログの違いは、操作に慣れが必要というデメリットに対し、デバイスが軽ければ横になっててもある程度描ける、ということのほかに、

「インクや絵の具が乾くのを待たなくていい」
「失敗してもレイヤーを別にしておけば修正がきく」
「オブジェクトのコピペも簡単」 
「自分で活字が入れられる」
「(自分が苦手だった)集中線やグラデーションもきれいにできる」
「サブスク払うだけで画材費がかからない」
「塗りつぶしにムラが出ない」

…というメリットがあると、アイビスペイントのほうを使いこなせてきた今、体感しています。
みなさんご周知のあたりまえのことなんですが(^^;)

まあそもそもレイヤーミスをしたり、知らない間に傷?汚れ?が入っててどこのレイヤーでやらかしたのかわからなくなると大変で、一瞬の操作ミスでゴミ箱行きになったものは返ってこない…ってのはデジタル独特のデメリットではありますが。

とくに「インクが乾くのを待つ」のが身体に染み込んでいたので、
「えっもう隣の色塗っちゃっていいの!?」
っていう驚きの感覚が未だにあります。

そしてレイヤーを増やせば増やすほど、煩雑にはなるけど表現も拡がりはみ出したり滲んだりせずきちんと仕上がるというのもデジタルならではだと実感しています。

ちなみに焦げ猫のこだわりは、だいぶ彩色に慣れてきた今でも、モブ以外の人物の肌や髪、一番後ろの背景はエアブラシ塗りということです。


レイヤーってなに?

娘にアイビスペイントを教えてもらい、初めて「レイヤー」を使って色をつけて描いたのがこれです↓

”Ashes To Ashes"のデヴィッド・ボウイのつもり(汗)

「レイヤー」の概念を理解するのにしばらくかかりましたね。

「アニメで背景の上にセル画載せることと一緒」

…と、娘から説明されて「そうか」とは思ったものの、デジタルでレイヤーを重ねることはセル画を作るのとはまた行程・意味が違うと個人的には思います。

今でも「クリッピング」というのがよくわかっていません…。
とりあえず線画から下を、最終的にコマを白く塗りつぶしたレイヤーに全部クリッピングすればいいんだな的な(爆)。

noteで描き始めた「グランジの神様」のスタート時はなんと、
「コマ」「テキスト」「線画」「カラー」「下描き」の5層しかレイヤーを使っていませんでした。

アナログ同様吹き出しも全部同じ線画レイヤーで描いてしまって、カラーはバケツ(塗りつぶし)とエアブラシしか使わず…クリッピングを知らなかったので、コマの外にはみ出した色はコマ線に沿って消しゴムをかけるというムダな手間をかけていました。
吹き出しにはみ出したものに至っては気にせずそのままの原稿が多いです。

(公開するつもりはなく登場人物の名前すら考えずに描き始めた作品で、公開にあたって描き足したカズオのナレーションによる2ページのプロローグから、いきなりもっと雑な絵で始まったのはそのためです)


わたしのようなユルい絵だと「線が閉じない」ので、バケツ塗りも楽なようで手間です(^^;)
「すきま認識」機能を使ってましたがそれも地味に手間なので最近は使ってません。

フォルダ機能・レイヤー結合も知らず、LINEでチャットしている画面を作った時だけレイヤーがえらい数になりました…。
このとき娘にレイヤー結合やフォルダを教わったんですが、今見てもなんだかよくわからない構造になっています(汗)。
たぶん増えたまんまになってるのはチャット相手のアイコンのコピー分ですね。

LINEの吹き出しは結合したものの…???

ラスタライズについても、失敗したらレイヤーを足し直せばいいだけなのに「修正できなくなる」と勘違いしていて、妙に怯えてしまいテキストをパース変形することができませんでした。

ラスタライズ〜パース変形してないので、本の表紙の角度と合ってない


初めてラスタライズしてパース変形をやってみた絵はこちらです。

「番外編 カズオの恋バナ」より

そして、徐々にレイヤーを細分化&フォルダ化するようになりました。

背景の上に人物をきれいに載せたい。
背景の上にエアブラシ塗りの人物を置くと透けるから、白塗りベースのレイヤーを作らなければ。
吹き出しも同様に最低でも線画と白塗りのレイヤーを作っとけば吹き出しを消した絵を使いまわせる。
めんどくさいのに何度も出てくる会社の寮などもカラーも線画もセットでコピペしたい。

…そんなところから始まって、

現在の原稿はとくに人物以外の建物や車、楽器等がある場合はやはりトレース用の画像挿入も含めると24層くらいになってますね。

下描き、前景線画・カラー、主に人物の場合は線画・カラー・エアブラシ・白塗り、背景線画・カラー・エアブラシ、加算・乗算、吹き出し線画・白塗り、背後にする吹き出しの線画・白塗り、コマ・テキスト・テキストのラスタライズ、…。

作業中、レイヤーを行ったり来たりしてるとかなりの確率でレイヤーミスをやらかします。
これはADHDの不注意のせいもあるかもしれません。
例えば彩色してて線画ミスや白塗りのヌケを見つけるとその場で修正しないと忘れちゃうので。
で、そのままそのレイヤーに色をつけてしまい、せっかくここまで仕上げたのにやり直し…があるので、ムダな時間もかなり喰ってます。
あとはもっとラクな方法があるのに知らないっていうのもまだまだあると思います。

最近やっと「今関係ないレイヤーは不可視にしとけばミスの確率は減る」っていうのを覚えましたが全体が見えないと作業はしづらい…。

レイヤー以外のデジタルならではのミスもあります。
意図せずほんのちょっと画面に袖が触れた等の操作ミスで、せっかく引いた線が無かったことになったり、拡大ピンチ操作で傷・汚れが入る、レイヤー変更が取り消されたりする、そしてそれに気がつかないまま作業を進めてしまい…あああああッ!!…ということにしょっちゅうなってます。
最近はちょこちょこ作業レイヤーを確認するようになりましたが、いつも脳がクリアなときばかりじゃないので…。


ロールプレイングゲームのよう

焦げ猫がゲームやってたのはゲームウォッチやらファミコン〜スーパーファミコンの時代でしたかね。
ドラクエもなんとなく覚えがありますが、いちばんハマったのは「桃太郎伝説」(すごろくの電鉄のほうではありません)でした。

その後「デコトラ伝説」だけをやりたさにプレステも中古で買いましたけど、反射神経がよくないので基本的にゲームの類いは好きではありません。
ただ、ロールプレイングゲームだけは時間をかけてできる(答えというか、コマンドを待ってもらえる)ので楽しんだ覚えがあります。

なんか、この1年で絵を描いていて、「なんか既視感のある感覚だなぁ」と思ったら、ソレなんですよ。

「焦げ猫 は レイヤー を 覚えた!」
「焦げ猫 は 投げ縄 を 手に入れた!」
「焦げ猫 は 乗算 を 覚えた!」
「レベルが 1  あがった!」

…という感じ(爆)。

作画に苦労して、気がつかないうちに技を知っているような。

まだまだ発展途上で、いろんな技を覚えつつあります。

「こうしたいんだけどどうすれば…」
…というのを、娘に教わったりネットで調べたりするだけではなく。
「この機能こういう効果に使えるのでは?」
…と自分で思いつくこともあれば、ケガの功名で操作を間違えて新しい機能に気づいたりってこともあります。

でもほんとまだまだです。

クリッピングとかブレンドモードの原理をよく知らないまま使ってるし、今かけてる手間のうち幾つかはもっとラクにできる方法があるように思います。

それにしても、娘が居なかったら焦げ猫はデジタルに手を出さず、マンガも描いておらず、ただの寝たきり廃人だったでしょう…。
たとえマンガで喰っていけなくてもですよ、1人でも読者・ファンがいれば「何もできない」と腐るより描いていられたほうがどんなにいいか。
「負うた子に浅瀬を教えられ」とはまさにこのことです…娘よありがとう。

ちなみにそうした感謝も込め、番外編「カズオの恋バナ」に登場の「のりちゃん」は娘がモデルでまた登場します。

中学2年生の「のりちゃん」

今の悩み!資料画像の少なさ

ラスボスというか今の悩み・来年なんとかクリアしたいことはですね…、トレースにしろ模写にしろ、必要なモノの資料画像が足りない!!ということです。

トラックドライバーの現場を描くので、必然的に企業・工場・倉庫の建屋やその内部、トラックも車両をいろんなところから撮ったモノが必要なんですが、自分の手持ちと拾い画像だけでは足りないんです。
工場や倉庫なんて撮影禁止ですしね…。
今後撮れるのはやっちゃ場(青果市場)くらいです。とっ散らかってるので絵に起こすのもかなりめんどくさそうですが…(汗)。

自分の経験を描いてるわけなので、「何が必要」なのかはわかるし、見て「コレは違う」というのもわかります。
でもうろ覚えの記憶だけでは描けないので…。
最近では冷蔵倉庫のバースやシャッター内部、トラックの冷凍機を拾い画像でチェックしました。

実在する特殊な世界を描こうとするとコレがネックになるんですよね。

家庭で起こるお話なら簡単かもしれませんが、専門職の世界は画像資料が少ない(「グランジの神様」でも、カズオが就職してからイッキに作画の難易度が上がりました)。
作画資料集めにいちばん難儀してると言っても過言ではありません。

コレを少なくともトラック外観だけでもクリアするため、ミニカーを買おうとしましたが…精巧な造形のモノはとても手が出せない金額で取引されていてビックリです。

ちなみにカズオのギターも、「グランジの神様」で中学生時代はカート・コバーンに憧れる少年という設定だったためジャガーを持たせたんですが、コレまた資料画像が少ないので「カズオの運行日報」が始まる18歳までに自分でもう1本王道で画像も多いレスポールカスタムを買ったことにしてます。
(それも色がチェリーサンバーストだと彩色が手間だと思ってブラックビューティーにしましたが、意外と黒いモノって描きにくいのでした…線が潰れるので。カズオにはジョン・サイクス並みに頑張ってもらいます・爆
緻密な作業が苦手なので、もうギターの弦引くのに気が狂いそうになりました(涙)。
それでも作画…とくに暴れながら斜めに構えてる角度のとかはもう弦とか省略しちゃってますけど困難を極めました(汗)。

特別編「カズオの一発芸」より。このサイズになると弦6本描けません

来年はそこをどうクリアしていくかが課題となりそうです。


それでもフルカラーにこだわるのでnote運営さんにお願いです

フィードバックにリクエストとして送ってはあるのですが…。

noteでは、テキスト記事・画像記事とまったく違う仕組みで記事をアップロードできるようになっています。
「テキスト記事」だとエディタやWordPress使うように記事が作成できます。
「画像」だと一括操作で何枚もの画像がアップロードでき簡単に順番も入れ替えられて、画像のデータサイズも大きくて大丈夫なので、「グランジの神様」のときは「画像」でやってました。

ただ、「画像」記事だと、文書はエディタとして編集できない仕様のようで、体裁のいいリンクバナーが貼れない(埋め込みができない)ようなのです。
カイゼンして頂けたのか試してないので現時点でわかっておりませんが…。

コレの何が困るかというと、続きモノのマンガの場合に前話・続き・マガジンへのリンクがURLのテキストまんまになっちゃうので読み手にはわかりづらいかと…。ので読み手へのユーザビリティ・体裁がよくないということがまずひとつ。

それと「カズオの運行日報」のような専門性の濃ゆい作品は文末に簡単な解説(詳しいテキストの解説記事とは別に)を読みやすく添えたいのでやはりエディタ的な編集ができるといいなと思うのです。
もちろん解説記事へのリンクもやはり埋め込みでも貼りたい…。
見出し画像に「今回のお話は…」みたいな短い文も添えられないので、焦げ猫のような雑な絵の見出しだけだと…。

なので今テキスト記事形式を選んでマンガ画像をアップしているのですが、「テキスト」の場合、焦げ猫程度のフルカラーでも概ね横800pxにリサイズしないとアップロードに失敗するようです。
そのサイズにすると、マンガ内の文字がぼやけるというか潰れるんですよ。
とくに吹き出し内ではなくラスタライズした看板のロゴとか、バックに色がついてるテキストがですね。読めなくはないけど輪郭が滲んでるような。

そもそもスマホの縦スクロールでも横スワイプでもどちらでも読みやすい作画・コマ割り・字の大きさを意識して今のスタイルになったのですが、作画・彩色に凝るようになったら800pxじゃちょっと厳しいんですよね。

「画像」記事にて、キャプション的なモノじゃなく文字数制限あってもいいから埋め込みや太字・改行等アリで文書入れられるような仕様にしてください…お願いします!



#今年のふり返り

皆さんのリアクションはすべて嬉しいので、サポートでなくてもスキやフォローお待ちしております(*^^*) もしサポートいただけたら、作画の参考に今トラックのミニカーの購入を検討してるのでそこに充てさせて頂こうと思っております。 どうぞよろしくお願いします(^^)