地域のブランディング
こんにちは、タカハシジュリです。
今回も、CL特論レポートシリーズです。
第3回 CL特論の登壇者は 雨上株式會社代表 平井俊旭さん。
平井さんは、1993年に武蔵野美術大学空間演出学科を卒業された数年後、株式会社Smilesに入社され、そこで経理の仕事も任されながらスープの専門店 Soup Stock Tokyo のアートディレクションを担当し、事業の創業期からブランディングに携わられた経歴を持つ方です。
Smilesでは多岐にわたって活躍され、Smilesでできることはやったと思った平井さんは新しいことをしようと2014年、Smilesにも背中を押される形で雨上株式會社を設立されました。
平井さんは、そんな雨上株式會社を「日本の地方にある価値を見つけ出して、『人やお金を循環させる仕組み』を作る仕事をする」会社だと仰っていて、また、サイトには「企業と町おこしの連携をサポートする」とあるように、滋賀県高島市を本拠地として、地域資源のブランディングを図り、交流人口や定住人口の増加につなげるために働かれています。
そんな平井さんの講義で、私が印象に残ったことは主に2つあります。
1:行動力と実行力
平井さんはとにかく行動力と実行力がすごい方で、今回の講義では平井さんの携わられたプロジェクトがたくさん紹介されたのですが、とにかくその量が本当に一人の人が関われる量なのか疑わしいほどで、特に雨上株式會社を設立されてからは依頼された仕事は断らないと仰っていて、その行動力と実行力に本当に驚きました。
今回の講義で一番印象的だったことはまずこれだと思います。
平井さんが高島市の地域おこしのために企画自体もまだ不透明だった段階で高島市に移住されたという話には本当に驚きました。縁の深い土地ならまだしも、それまで深い縁があった訳でもなく、当初高島市にとって平井さんはどちらかというと「よそ者」であったそうなのです。地域おこしに関しては、当初は一部の地元の人たちから批判されたりもしたそうだったのですが、それでも平井さんは高島市の復興に取り組まれました。
そして高島市でも実に多くのプロジェクトをされています。
平井さんの、お話をされている時の印象は、比較的淡々と飄々とされている感じがしたので、どこにそんな熱いソウルを隠しているのだろう…と不思議に思いました。
きっと平井さんは、「たくさんのことを、クリアなビジョンを抱きながら、過不足ない完璧な力加減で取り組まれていて、そしてそれらが積み上がることで、より豊かなものを創造し続けているのだ」とそんな風に思いました。
実際、高島市でのプロジェクトにおいて重視されていたことの一つに「小さく、数多く続ける」というのがあり、説得力があるなあと思いました。
私は自分自身に「物事に取り組む際の力加減のコントロールする力」や「行動力と実行力を持続して発揮する力」が足りないと深く思っていたので、平井さんの働き方は、食らいつくように見習っていきたいと思いました…
2:魅力の最大化
先ほど一つ紹介しましたが、改めて、高島市のプロジェクトで平井さんが重視されていることは以下の5点だそうです。
⑴ 小さく、数多く続ける
⑵ 同じ視点で見て話す
⑶ 共感のネットワークを作る
⑷ 集めて、編集する
⑸ 色々な手段を重ねる
私がこの5つの中でもう一つ、特に印象に残ったのが「集めて。編集する」というところです。これはつまり「魅力の最大化」なんだと平井さんは仰っています。
この「魅力の最大化」のポイントは以下の5つだそうです。
⑴ 当たり前ではないという視点で見てみる
⑵ 要素を削ぎ落としてポイントを際立たせる
⑶ 魅力が際立つ小さな仕掛けを施す
⑷ 美しくまとめる
⑸ 共通した方向性を持たせる
私は地域創生に興味があり、地方にあるものをどう「価値化」、つまりその土地に魅力・価値があるということをより多くの人と共有するのか、できるのか、ということに興味があります。
何に対しても「消費」の意識が行き過ぎた現代にとっては、地方には確かに消費できるようなコンテンツはあまりないかもしれません。そういった意味では確かに言われるように地方には「何もない」のかもしれません。
しかし、私は、消費されるものがあまりないことこそが、訪れる人にとっても住む人にとっても魅力になると思っていますし、何もないと言われる中に「あるもの」を価値として共有できれば、と思っています。
なので今回、魅力を共有するまでの平井さん流のメソッドのようなものを伺えたことはとても参考になりました。
そして実際に高島市での地域おこしに臨む上で平井さんが最初に考えたことは
「高島をもっと知ってもらうために、まずは市民の人が高島を自慢できるようになることが重要だ」
ということだったそうです。
この考えには私自身とても共感しました。
私も地方を旅している時、住んでいる人たちがその土地に誇りを持てていない様子を時々目の当たりにすると、とても悲しい気持ちになりました。これでは、人は減っていく一方だと思いましたし、行政がいくら何かを企画しても、それが人口の増加につながることは難しいだろうな、と思いました。
「窮地に陥ったとき、自分たちはいいものをつくっているのだという揺るぎない信念がないと、途端にうまくいかなくなるんですよね。
人から言われたからやっているというスタンスだと、やめる選択肢があっさり出てきてしまう。ブランドは一朝一夕でできるものではないので、市民が本当に高島をいいと思ってブランド化しない限り、自分みたいに外から来た人間がロゴや仕組みだけをつくったところで、うまく機能しないと思うんです」
上記の記事で平井さんはそう仰っていました。
そして市民が自分たちの地域を知ることを目的に、平井さんがまず立ち上げたのが「高島の食と人 –3つの◯◯−」というウェブサイトです。
ここでは高島で食材がつくられて食べられるまでの一連の流れを紹介しており、ずらりと並んだストーリーからは、高島の多彩な食材と、それらをさまざまなかたちで提供したり、味わったりする人たちの豊かさが伝わってきます。
その土地に住む人がその土地のことを知り、誇りを持つ、それが魅力を最大化するための土台になる。
自分たちが住む土地を愛している人たち、愛されている土地は、訪れても空気がきもちいいです。
今回の平井さんのお話を聞いて高島市の空気を感じてみたいと思った人は私だけじゃない気がします。きっと実際に訪れた方が平井さんのお話が理解できることも多いんだろうな。訪れる頃にはコロナももう少し落ち着いていればいいのですが…
地域のブランディング
平井さんは高島市を「ブランディング」することを「高島市って○○なところだよね!」という共通のイメージを持ってもらい高島市のファンになってもらうことだと仰っていました。
地域が元気であることは持続可能な社会に必要な大切な条件でしょう。今の東京一点集中型の社会は本当に危険だと思います。
今後テクノロジーがもっと発達して、仮に地方に仕事がものすごく増えたりしなくても、地方に住みながら働ける時代が来ると予想されています。
私はその時のために、地方に憧れを持っている人たちがそんな時代が来た時住みやすいように、地域をブランディングすることが今本当に求められているなと、今回改めて感じました。
開講日:2020年6月1日
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース
クリエイティブリーダシップ特論 第3回 平井俊旭さん(雨上株式會社)
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