天狐

どの町にも どの土地にも 不満が澱となって 吹き溜まっている
それは人の目に、仕草に、見て取れて 垂れ込めた空から 何かが舞い堕ちてくる

気がつけば、幼い頃から一人だった
教えるものも誰もいなかった
そんな別れの積み重ねのような人生にも、出逢はあったのだ…
それが縁と言うものだった

こんなことをやっていられるか

昔から、そう思っていた
気がつけば 己の弱さと向き合っていたのだった

自分とは何か?

人の世のありよう、国のありようとは?
正しく生きるとはなんなのか?
命じられた通り働けば良いのか
戦うのか

それぞれに戦う意味はなんであるのかと、考えるべき時代になっているのではないだろうか

私は立ち尽くし、向き合ったまま 声を上げる

それは叫びに近く 逃げることは考えなかった

貴方には、考えている事が手に取る様にわかってしまう
自分の全てが

と、わからなくなった

心に痛かった一言と、耳元の呻きが感情を逆立て
遠い呻きは、心の底に響きわたる

痛みを、率直に痛みとして感じようとしない自分が、どこか悲しい

獣ではない、人の形を
自分は持っているのだった。