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米国市況レポート – 2024年5月17日:堅調な米株式市場とインフレ懸念の行方

はじめに

株式市場が熱気に包まれ、歴史的な節目を迎えた。昨日のダウ平均は初めて終値で4万ドル台を突破し、S&P500も4週連続で上昇するなど、力強いパフォーマンスを見せています。一方で、米国債利回りの上昇やインフレ懸念も引き続き市場に影響を与えています。
また今後の市況展開に寄せる各市場関係者のコメントも、ポジティブからネガティブまで幅広い印象です。


本日の米国市況レポート - 2024年5月17日

株式市場

今日の米株式市場では、S&P500種株価指数とダウ工業株30種平均が上昇し、特にダウ平均は史上初めて終値で4万ドル台を突破しました。S&P500は4週連続で上昇し、2月以来の長期連続上昇局面となっています。この堅調なパフォーマンスは、米消費者物価指数(CPI)などの物価統計が利下げ観測を強めたことや、企業業績の底堅さが背景にあります。

テスラの株価は上昇した一方で、エヌビディアは下落しました。ビデオゲーム小売りのゲームストップは3日連続で大幅安となり、最大4500万株のクラスA株を売却する可能性を発表しました。また、第1四半期の暫定決算で減収を明らかにしたことも、株価に影響を与えました。ソーシャルメディアのレディットはオープンAIとの提携が好感され、株価が上昇しました。

国債市場

国債市場では、米国債利回りが上昇し、米30年債、10年債、2年債の利回りが全て上昇しました。これは、原油先物の価格上昇に伴い、利回りがさらに上昇したためです。米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事は、インフレが「当面」高止まりするとの予想を示しつつ、政策金利を現行水準に維持すれば、いずれ物価上昇圧力が後退するだろうと述べました。

外為市場

外為市場では、ドル指数が小幅安となり、週間ベースでも下落しました。円は対ドルで155円台後半に小幅に下落し、ドル/円は155.67円、ユーロ/ドルは1.0869ドルで取引を終えました。米経済指標の弱い内容が年内の米利下げ観測を支える格好となっています。

原油市場

原油先物価格は続伸し、WTI先物は1バレル=80.06ドルで終了、週間では2.3%上昇しました。米原油在庫の減少やインフレ沈静化の兆しが相場の追い風となり、原油相場は堅調に推移しています。供給とインフレの見通しに注目が集まっており、次の材料として、6月1日に開催される石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」の会合に注目が集まっています。

金市場

金スポット価格と金先物価格は上昇し、4月の最高値に向けて上昇しました。銀と銅も高値を付け、金相場も買いが優勢となっています。ニューヨーク時間午後2時33分現在、金スポット価格は前日比40.40ドル上げて1オンス=2417.27ドル、金先物6月限は31.90ドル高の2417.40ドルで終了しました。

コラム: 原油市場とOPECプラス会合

原油市場にとって、6月1日に予定されているOPECプラス会合は非常に重要です。この会合では、主要産油国が集まり、原油生産量について協議します。特に現在の市場環境において、供給制限の延長や追加の減産措置が取られる可能性があり、その結果は市場価格に大きな影響を与えることが予想されます。投資家は、この会合の結果を注意深く見守る必要があります。

ここに来て、先物原油価格の上昇傾向が米国債利回りにも上昇圧力を加えている(≒コアインフレ指数の再度上昇懸念のため)のが気になりますね。

各市場関係者のコメントを分類してみる

本レポートの元になっている、Bloombergの米国市況速報を眺めていて、今後の市況やインフレ傾向についての見通しに関して、市場関係者のコメントがバラバラだなと感じましたので、分類して方向性を再確認してみました。

ポジティブなコメント

  1. ラリー・テンタレリ氏(ブルーチップ・デーリー・トレンド・リポート)

    • 強気スタンスを維持し、「ゴルディロックスのシナリオが続けば、ダウ平均が年内に4万2500ドルへと上昇する土台が作られる」と述べた。

  2. マーク・ヘーフェル氏(UBSグローバル・ウェルス・マネジメント)

    • インフレ圧力がもっと急速に和らぐ、あるいは企業利益の伸びが力強さを増せば、S&P500種は年末までに5500に達する可能性があると述べた。

  3. マーク・ニュートン氏(ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズ)

    • 強気姿勢でいるのが正しく、S&P500種が5400へとさらに上昇する上で、値固めが同指数の魅力をさらに増すことになると述べた。

ネガティブなコメント

  1. ゲームストップの株価動向

    • ゲームストップは3日連続で大幅安、最大4500万株のクラスA株を売却する可能性と第1四半期の暫定決算で減収を明らかにした。

  2. 米国債相場の利回り上昇

    • 米国債相場が続落し、利回りが上昇。大きな手掛かり材料はなく、前日の流れが継続した格好。

  3. 米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事

    • インフレが「当面」高止まりするとの予想を改めて示したが、政策金利を現行水準に維持すれば、いずれは物価上昇圧力が後退するだろうと述べた。

ニュートラルなコメント

  1. シティグループのスコット・クロナート氏

    • 個人投資家に人気の銘柄の上下両方向への非常に大きな値動きが話題になっている。従来の論理で説明するのは困難だが、依然として流動性があふれていることを示す。

  2. ユーロ圏の状況

    • 欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事は、6月と7月の連続利下げには慎重を期すべきだとの考えを示した。

  3. マイケル・ハートネット氏(バンク・オブ・アメリカ)

    • マクロ経済環境の軟化を受けて2024年後半には長期債が復活すると予想した。

これらのコメントを踏まえ、今後の市況やインフレ傾向についての見通しは以下のようにまとめられます:

  • ポジティブな見通しとしては、強気の市場関係者は株式市場がさらなる上昇を続けると見ています。特にダウ平均やS&P500の上昇が期待されています。

  • ネガティブな見通しとしては、インフレが高止まりする可能性や米国債の利回り上昇が懸念されます。特定企業の減収や株価下落も市場に対する不安材料となっています。

  • ニュートラルな見通しとしては、流動性の高い市場環境や、ユーロ圏の利下げに対する慎重な姿勢が見られます。市場の動向は依然として不確実性が高い状態が続いています。

以上のようにまとめてみると、現在のFRBによる高金利政策がいつ利下げに向かうのかというポイントと、FRB自体が現状の高金利政策の継続に関して完全に手綱を握れているのかというポイントについての見方の違いによって、市場関係者の意見が分かれているようです。現在の金利水準で「ゴルディロックスのシナリオが継続する」というのは、「FRBの金利と市場の状況に関する認識が正しく、金融政策を十分にコントロールできている」ことが前提ですから。
故に、下のような記事も同時に載っているんでしょうね。


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