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日々の壁打ち:自分専用のAI秘書にレポートを精読させ、ディスカッションをしてみる

ChatGPTで、自分のためにMy GPTsを開発すると、とても面白い体験を味わえる。このnoteは、My GPTsとの付き合い方の記録である。


はじめに

マッキンゼーが『生成AIがもたらす潜在的な経済効果』というPDFレポートを出していた。

こちらのレポートの一部を引用して、「今後、生成型AIが大規模に導入されると、高学歴人材の需要が少なくなる」と判断している人が一部にみられた。
この見方が、自分がChatGPTなどを普段使って受けている印象とはまったく逆だったので、疑問に思い、本レポートを精読してみようと思った次第である。
精読にあたっては、これらのレポートを効率的に読むことを支援してくれる、自作GPTの機能を使う。その機能のことを、自分は『精読支援モード』と呼んでいる。

精読支援モードとは?

精読支援モードは、与えられたドキュメントを判りやすく要約しながら読むだけではなく、関心のあるトピックに関しては深掘りしていく仕組みのことだ。
ちょうど大学におけるゼミの輪読会と同様な方式で、以下のようなステップでドキュメントを分析していく方式をとっている。

第1段階 : 文章構造を把握した上での大まかな要約の作成

まずドキュメント全体の章立てなどの確認も兼ねて、文章構造を把握し、それぞれにどんなことが書かれているかの要約を作成してもらう。これは見出しを抽出するようなものだ。ここからドキュメントが概ねどんな内容なのか把握することができる。
特に長いレポートの場合、そのレポートがどんな内容を含んでいるのか事前に知っておくことは、詳しく読んでいく際にも理解のしやすさに繋がる。

第2段階:各章ごとの詳しい分析

次に、ドキュメントの構造にもとづいて、各章ごとにその内容を詳しくみていく。この時には、ChatGPTに与えているドキュメントを自分も手元で開き、時にはChatGPTを支援しながら読む。なんでChatGPTの支援がいるのかというと、長いPDFとかになるとしばしば目次に書かれているページと実際の記述ページがズレていることもあるからだ。こういう時には、ChatGPTからヘルプがくるので、それに応える必要がある。
今回実際にそのような例があったので後ほど見てみよう。
この段階を通じて、全ての章について実際に読み込んだのとほぼ同じぐらいの情報量がこちらも得られることになる。

第3段階:ドキュメントに基づいてディスカッション

最後に、全ての章を通じての総評をChatGPTが出してくる。それらの総評には、ChatGPTから本文を読んで検討すべきアジェンダが添えられている。それらのアジェンダを見ながら、ChatGPTとディスカッションすることで、分析するドキュメントについての理解をさらに深める訳だ。

ゼミの輪読会なら、教授が指導しながらゼミ生と一緒にディスカッションをするシチュエーションである。

ではそのログを実際に見ていこう。

ドキュメントの構造
PDFを見ると、本PDFは図のような構成になっている。

重要なのは、「1. 事業価値の創出が見込まれる領域」~「4. 企業と社会に関する考察」の部分である。途中で、最初に疑問に思った違和感の部分に直接触れる箇所があるだろうから、そこの箇所を精読する時に、ChatGPTとディスカッションしてみよう。

第1段階 : 文章構造を把握した上での大まかな要約の作成

精読のやり方自体は、GPTに前もって教え込んであるので、開始の宣言は上の1行だけでよい。My GPTを作る意義はこんなところにもある。自分のノウハウを前もってGPTに教えてこんでおくことができるのだ。
その出力は以下である。

なかなか興味深そうな内容である。𝕏のポストで見たような、挑発的な「辛辣な内容」のようには思えないが…。これはもっと深く読み込んでいく必要がありそうだ。

第2段階:各章ごとの詳しい分析

いよいよ精読を開始する。最初の出力はこちらだ。

出力されているメッセージを読むと、ChatGPTがこちらにどの章を深く読んでいきたいか求めている様子が感じられる。おそらくだが、PDFの文章構造自体にタグが打たれていないので、分析しにくいものと思われる。
ここからは一部マニュアルモードで進めてみよう。
といっても簡単である。分析したい章を指定するだけだ。

まずは「1. 事業価値の創出が見込まれる領域」から

つづいて「2. 業界へのインパクト」

「3. 仕事や生産性に与える影響」を分析させようとしてトラブル発生!

次に3章に進ませようとして、ChatGPTがヘルプを求めてきた。対象とする記事が見つからないという。

ここでPDFを調べてみると、実際にその章が載っているページは実ページで27ページ目だとのことだ。前書きがあるので、表記上のページ数と実ページがズレているので、ChatGPTが迷ってしまったようだ。

そこで、対象のトピックが27ページから始まる旨を教えてやり、再開する。
今度は上手く読み込めたようである。

本トピック内の35ページの位置に、そもそもこのレポートを精読しようと思ったきっかけになった箇所がある。黄色のアンダーラインが引かれている部分だ。

この箇所に関して、こちらが感じている疑問をChatGPTにぶつけてみよう。

上の問い合わせに対して、ChatGPTがこのレポートの文脈(コンテキスト)に沿って評価した回答が下だ。

この結果から、「高学歴人材は企業に不要になる」という意見と「生成型AIを使いこなす上で、高学歴でありかつ高い能力を持つ人材が不要になることはない」という意見のどちらが妥当かという問いに対しては、後者の見解が報告書の文脈により合致していると考えられます。

こちらが抱いていた違和感は解消した。本レポートは、「生成型AIが普及することで、高学歴かつ高い能力を持っている人材が不要になる」とは言っていないと判断してもよさそうである。

もっとも肩書きだけの高学歴人材は、その真価を問われることになるかもしれないが、それはまた別の話だろう。

最後に「4. 企業と社会に関する考察」

引き続き、残りの章も見ていこう。
念のため、ページ数も教えることにする。

第3段階:ドキュメントに基づいてディスカッション

ここまでで、全ての章の精読は終わったので、引き続き全体を通じてのディスカッションに移る。ここではSTEP 4というのが、その実際のタスク名だ。

STEP 4を実行した結果、以下のような要約とアジェンダが提案された。

それではアジェンダに沿って、内容の深掘りをしてみよう。

教育とリスキリングについて

つづいて、「倫理と規制」に関して

さらに深掘りしていく。冒頭でメフィラス構文で指示を出しているのは、どうもこんな感じに話しかけてやるとChatGPTがより適確に応えてくるようだからだ。要するに、ノリを与えてやっているのである。

(あれ?返答のツッコミが甘いな)と感じたので、確認してみる。
特にナレッジベースの辺り。その辺りの具体的記述がレポート中にあるならば、挙げているはずである。

このGPTには、「事実と推測を分けて語れ」と指示が与えられているので、極端に憶測的なことは語らない。故に、材料が十分でない件に応える場合には一般論的なことを応えてくる。だからそれをこちらの感想という形で確認した訳である。リポートに書かれていないことを突っ込んでもしょうがない。

最後に「3. 社会的および環境的責任」に関して

最後の話題は、社会的および環境的責任に関してだ。途中で気になるワードがあったので、確認を兼ねながらディスカッションを進める。

これでレポートの内容を大体把握できたので、この辺りでもう少し自由な話題で関連しそうなディスカッションをしてみよう。ちょうど生成型AIの開発に関する話題が出てきているので、そこに沿ったテーマを提案してみる。

生成型AIの今後の開発の主体に対して

つい先頃もOpenAIで大きな騒ぎがあった件だから、それに関して本レポートの文脈に沿ってChatGPTとディスカッションをしてみよう。お題はこうだ。

その回答がこちらだ。

本レポートが強調しているのは、生成AIの潜在的な経済効果と社会への影響を最大化するためには、技術の進歩を倫理的な枠組みと規制の中で行うことの重要性です。そのため、オープンソースに基づく広範囲の人々が参加する開発が最も適している可能性があります。これは、技術革新を促進しながら、社会全体の利益を考慮し、倫理的な基準を維持することができるからです。

正直、もっと漠然とした曖昧な回答をしてくるかと思っていたので、びっくりした。きちんと本レポートの文脈にそって回答をしてきている。

最後に良いディスカッションだった旨を伝えてやり、終了。
お疲れ様!

〆も兼ねての感想


このレポートを精読するきっかけとなった、「今後、生成型AIが大規模に導入されると、高学歴人材の需要が少なくなる」という見方に対して、なんで自分が違和感を感じたかというと、それは「生成型AIが出すレポートを元に意志決定をするのは、人間だから。」だ。

むしろ自分が日々ChatGPTを使っていて感じるのは、ChatGPTも含めて、生成型AIからのレポートが磨かれれば磨かれるほど、それを理解する側の知識や経験が試されるという印象だ。

結局のところ、生成型AIのサジェスチョンがそのままアクションへと繋がっているシステムでも作らない限り、生成型AIのサジェスチョンを検討して判断し、行動に移せる人が必要になる。つまり企業にとっては、永遠に人がいることは変わらない。むしろAIをちゃんと使いこなせることが、高度人材であったり、高い教育スキルを積んできたこととイコールになるのではないだろうか?

むしろサジェスチョンのレベルが高まれば高まるほど、本当にその会社のボードメンバーは有能なのかが、明確に判ってしまう時代が来るんじゃないかしらね? そちらのほうがよほど興味深い変化だと思う。

おまけ:実際にレポートを全部読んでみる

上の分析後、実際にレポートを全部読んでみました。
ひとついえることは、上のように一度内容を精査した上で、実際にレポートを全部読んでみると、理解がとても速いということです。
おそらく全文読んでから、内容をさらに深めようとすると、レポート全体を数回読み返さないと見えてこないようなことが、一読でポイントが判ります。これは大きなことです。

生成型AIが知的労働者に与える真の意味での生産性の向上って、こういうところから生まれてくるんじゃないですかね?

ちょうど視力が弱くなった人がメガネを掛けて補正するように、生成型AIの力を借りて、自分の理解力のスピードをブーストできるということです。

さらにおまけの戯れ言

最後に実際に読んだからこそ判ったことも追加しておきます。
このレポート、妙に会社幹部クラスが自身の判断に生成型AIを導入した場合に、彼ら自身に対するパフォーマンス向上が図れるかについて、あまり触れていない印象があったんですが、やはりそこのところはぼやかしてますね。
要するに、この手のコンサルを呼び込もうとするお偉いさん達の仕事や立ち場を積極的に奪ってしまう「生成型AI像」を持たれるのは、困るんだろうなぁ…そんなことを読んでいて、ふと思いました。
そこの辺りは、レポートの18ページ目にある図表4の表す意味を理解すると、よくわかりますよ。
見方を変えれば、今後は生成型AIを積極的に活かす会社経営っていうのもありうるということです。その可能性に関しては、このレポートは敢えて避けていると言ってもよさそうです。
そういう新しいタイプの会社が生まれてきたら、それは面白い未来になるのかもしれませんね。
それでは!

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