囀る鳥は羽ばたかない・第47話
「囀る鳥は羽ばたかない」
考察その1
矢代の変化と井波との歪んだ関係
※2022年2月にTwitterに投稿したものを修正して再掲しています。
※誰の考察も参考にしていません。もし似通った解釈があった場合はご容赦下さい。
47話はなかなか衝撃的でした...
人は変わるもの?変われるもの?それとも、どうせ変わらないもの?/7巻42話・綱川
4年の歳月を経て、矢代と百目鬼はどのように変わったのか、あるいは変わらなかったのか。7巻36話以降、それぞれの状況の変化が描かれているが、今回は矢代の心身の変化に焦点を当てている。
・まず意識(心の感覚)の変化
井波の行為をレイプだと認識している。
以前の矢代なら"そういうプレイ"として応じていたんじゃないかと思うが、路地裏で襲われた時には抵抗している。
つまり襲われて「嫌」だと感じ、抵抗し、力ずくの行為をレイプだと明確に認識出来た。
嫌だと感じそれを行動で示すのは、とても大事なことだ。
これまで麻痺させてきた心が痛みを感じるようになった表れであり、普通の感覚が戻りつつある証拠だろうと思う。
・次に体の変化
勃たない。感じない。
井波に襲われて勃たない事実が判明したが、原因は百目鬼との一夜であり、今回で百目鬼にしか反応しないことがはっきりした。
百目鬼が矢代の存在で勃ったのに対して、矢代は百目鬼が原因で勃たなくなっている。 (この対比!素晴らしいですね!)
・よりによってなぜ井波なのか?
なかなか受け入れがたい関係ではありますが... 義父と井波の描写が重なることから、矢代の生い立ちに起因するものだと考えられる。
母からのネグレクト、義父からの虐待などにより複雑な心理が働き、どうしても同じような状況、暴力の方向へ戻ってしまうんだろうな。
もともと矢代にとってのセックスは 「やめたくてもやめらんねぇ/七原」自傷行為。
容赦なく暴力をふるって興奮する井波と、その暴力を受けたがっている矢代は、"いびつな共犯関係"と言えなくもない。
(もちろんレイプは論外ですが)
「痛いだけマシだとすら思っていた」
体が痛い方がマシだと思えるほど生きてるのがつらい、痛みを感じることでしか生きている実感がないということか。
井波との行為のあと
「お前にやるものなんか俺の体で充分だろ」 「オカマが随分高く見積もってんじゃねえか」
「高いわけないだろ。文脈をよみなさいよ」
この会話の文脈を読むならば
「(クズ野郎の)お前にやるものなんか(お前と同じ程度の)俺の体で充分だろ」
という事になる。
第14話でも竜崎に向かって
「俺のこともっとメチャクチャに扱ってよ。そのボロ雑巾と同じでいいから」
と言う場面があり、矢代は自分をクズ井波やボロ雑巾と同列に扱っている。
どこまでも自尊感情の低い矢代が痛々しくて切ない...
(逆に井波は自分のことを「ずいぶん高く見積もって」いることが窺える)
自分を痛め付けるだけの井波との行為。
その最中に、鮮明に浮かぶ百目鬼の姿。
どれほど自分が百目鬼を求めているか本当はもうわかっている。でも、どうにもならない。
影山とのことで、求めても「孤独」と「絶望」しかないと体に刻み込まれてしまったんだろうな。
過酷な状況の中で、生き延びるために自分の認知を歪めるしかなかった矢代。
「痛くないと感じないんだ俺/第25話」
この歪みが強固な殻となって矢代の心を守ってきたんだと思うけれど、百目鬼との一夜で一気に壊されてしまう。
はじめて好きな人と身体を重ね、大切に扱われて、本当の気持ち良さを知ってしまったから(=禁断の果実?)
自分を守ってきた殻(=認知の歪み)を壊された今、矢代の心は言わば"むき出し"の状態にあると言える。
生きなおす為に必要な過程とはいえ、この4年間矢代は深い絶望の中にいたんだな...。
百目鬼と再会して動揺し
百目鬼にしか勃たなくなり
百目鬼の冷たい態度に傷つき
百目鬼に女がいる...と拗ねてる矢代。
(どんだけ好きなん?)
第40話の「夢」が暗示するように、矢代は、求めているくせに強引に捕まえようとすると逃げてしまう(生存本能か)
おそらく百目鬼は、この矢代の矛盾を理解した上で行動しているのだと思う。
自ら百目鬼の腕を掴めるようになるまで、矢代にはもう少し時間がかかるのだろう。
これからの2人の進展と、三角・桜一家の問題が今後どう絡んでくるのか、杉本の「イヤーな予感」も気になり、まだまだ不穏な空気を感じるが...
でも大丈夫ですヨネダ先生! 覚悟は出来てます!(多分)
そして私は百目鬼を信じてます!
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