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11/24「BOUNTY LIVE」予選2日目のMC永田敬介さん

シアターマーキュリーで始まる「BOUNTY LIVE」の予選会で、永田敬介さんがMCを担当されるということで、観にいきました。

このライブは、芸歴10年未満の芸人による階級分けのライブ(ピラミッドライブ)であり、今回の予選会には、エントリーした全芸人が参加。客の投票により、1月にスタートする本戦の「レギュラークラス」「サブクラス」「待合室」の所属が決まるとのことでした。

私が観に行った予選会2日目は41組が参加。ここから3組がレギュラークラス、4組がサブクラスに所属。それを客、劇場スタッフさん、事務所マネージャーさんの投票で決定します。

前日が2時間のライブ予定だったところ、3時間くらいになってしまったとのことで、MCの永田さんも「自分の話もしたいんだけど。特に今日は。でもサクサク行きます」と、ほぼ台本を読み上げる形でスタートしました。

ネタ時間を守らないことが多いという永田さんですが、以前の事務所ライブ「どっきん!」の「芸人がネタをやったあとに、永田敬介がその面白さを語るライブ」で進行を任された時には、スマホ片手にしっかりタイムキープされて、時間内にライブを終わらせていました。この時、自分に任された仕事に対する真面目で責任感のある姿勢が、本当に信頼できるなと思いましたが、この日の永田さんのMCぶりには、同じ誠実さを感じました。

ライブは前半21組、中MCを挟んで後半20組が2分ネタを披露。前半はコントが多かったです。

中MCで出てきた永田敬介さんは、自分が若手の頃に、MCの人が自分たちのネタを見ずに楽屋でゲームをやっていたのが寂しかったので、自分は袖で全ネタを見たと話していました。「みんな見てるよ」と言うのが優しいお兄ちゃんぶりで、素敵でした。

この時、特に、永田さん、素晴らしいなと思ったのは、そのMCの方を一方的に悪く言うのでなく、「その先輩は売れていて、こういう時くらい休みたかったかったのかもしれない」と、相手の立場への想像力を働かせた部分です。こんな風に、物事を俯瞰で見られる方の話は、悪口ではなく「論」だなと思うので、とても聞きやすいなと思います。

永田さんは、袖でネタをしっかり見て、スマホにメモもとったので、語りたいこともたくさんあったようです。中MCの直前の出順で手話ネタをされた「ちからいっぱい牛込」さんのネタが面白かったなぁと言いかけてから、客票に影響したらいけないとグッと我慢された様子が、とても誠実だなと感じました。ネタの話が出来ないということで、ネタ中で使われた音楽を取り上げて、「やっぱり、ビートルズとエアロスミスは名曲だなと」なんて言っていたのは、ちょっと面白かったです。

後半20組終了後は、客の投票タイムです。投票の間は、永田さんが1人で繋ぎます。特定の組に言及すると、得票に影響するからと、全体的な感想を主にお話されました。「みんな本当に面白かった。センスも良くて、悪い先輩だったら設定パクるかもしれないというネタも多かった。もう少し磨いてから外に出した方がいい」と仰っていました。永田さんは本当に褒め上手だなと思います。基本的に、愛に溢れた人なんだろうなぁと、こういう時に感じます。

投票が終了したところで、「俺の友達」として事務所の後輩であるスパイシーガーリックを舞台上に呼び込みました。俺の話の聞き役になってくれとのこと。

若手の頃、MCと仲の良い芸人だけが特別扱いされて、自分は疎外感を感じていた。だから、誰かを特別扱いしたくない。MCの俺が、41組のうち、スパガリだけに話を聞くのは違うだろうということでした。この公平性を正義とする感覚は、永田さんに大いに共感させられ尊敬しているところです。「俺のバランス感覚を知って欲しい。こんな見た目だけど意外とちゃんとしてる」と永田さん。絶望ラジオリスナーは、そんな永田さんの優しさと公正さをよく知っているけれど、やっぱり、そういうことって、自分で言わないと人にはなかなか伝わらないですから、ご自身で言ってくださって良かったなと思いました。

ここで、永田さんが話したのは、準々決勝の結果発表を見るまでのこと。悔しいと仰っていました。敗北の事実を受け入れるまでに、随分と長い時間がかかったんだなと思いました。誰にも邪魔させず、たったひとりで、自分自身の感情に向き合った22時間。家族や友達ですら踏み込めない、分かち合えない、永田さんの世界。客は言及することも憚られるなと思いました。ほんとうに、そっと見守ることしか出来ないなと思いました。そして、そんなひとりの世界を、客に垣間見せてくれたことを嬉しく思いました。

自分の話だけでなく、スパイシーガーリックにも、直近の活躍ぶりについて少しだけ話すようパスを送ります。

こういうところ、本当にバランス感覚が良いなと思います。永田さんが、自分で自分の良いところを語るときは、根拠がきちんとあって納得できます。誇大広告でなく、本当に、バランスが良いのです。

スパイシーガーリックに、ガキの使いの第二の安村オーディションを見たよという永田さん。後輩が松ちゃんと共演した姿が悔しくて見られないと、一年位前には話していたけれど、今は、こうして、きちんと後輩の出演番組を見て、面白かったところを楽しい雑談的に喋り、海外でも活躍できたらいいよねとあたたかいエールを送っていました。この一年、永田さんの中でどんな変化があったのかなぁと思いました。本心がどうなのかは想像もつきませんが、少なくとも表面的な変化は、とても素敵だなと思いますし、人としての魅力が増して見えるなと感じます。

投票結果の集計が終わった後は、結果発表。そして、41組の全ネタには言及出来ないのがもどかしそうでしたが、時間の許す限り、ネタを褒めるコメントをされました。途中、時間も気にして、もうやめた方がいいかな?と心配していたのも誠実です。片山さんに「まだいいよ」と言われて、もう少し続けてくれました。ここは、まさに「芸人がネタをやったあとに、永田敬介がその面白さを語るライブ」の短縮版のようで、非常に聞き応えがありました。片山さんにも感謝だなと思いました。

一番面白いなと思ったのは、オオスミの「ぎなた言葉」のネタへのコメント。人力舎の「うちまつげ」が、同じネタをやっているから、自分たちのネタと比較してみたら、色んな発見があると思うと仰っていました。先生みたいだなと思いました。永田さんの頭の良さが感じられて、とても素敵でした。押し付けがましくなくて本当に良い先生。

そして、永田さんは、一番最後に客のことも褒めてくれました。投票結果も納得がいくものだったと言って「みんなのセンスも良かった。素晴らしい。」と。

これを聞いた瞬間、私は、2021年のM-1の準々決勝で、大トリの出番だった阿佐ヶ谷姉妹が「全員ごうかーく!!!」と叫んだ時にも似た感動を覚えました。

2023年3月の東京コントメンRを見た後に、私は、YouTubeで永田さんのネタ動画を見て、「誰も傷つけない(とされる)笑いを見た後の自分の気持ちと、恨み嫉みしか言ってないように見える笑いを見た後の自分の気持ち、そんなに違いが無い気がする」という感想を持ちましたが、ここでまた、私の好きな2組の根底に流れる何かが、同じであるような気がしました。