言葉

他人の言葉を横から齧りとって、そのまま雑に口から吐き出しているのを見かけると、生理的に嫌だなと感じてしまう。そしてそういう人の多くは自らの汚さに無自覚であり、なんなら得意げな表情だったりするからキツい。

世の中には、完全にオリジナルなものなんてほとんど存在しないのだから、既存の言葉を齧りとるところまでは仕方がないとは思う。でも、せめて、口に入れた言葉を咀嚼して飲み込んで消化して、その栄養が血肉になった「自分」から、たとえば歌のように、自然に言葉が湧き出てくるのを待ちたい。仮に、出てきた言葉が、飲み込んだ言葉と同じ形をしていたとしても、きっと、それは、自分にしか歌えない歌になっているはずだから。

とはいえ、やっぱり理想通りにはいかない。

私は、まず「材料」を探すために、Google検索をして、片っ端から言葉を拾い集めてくることが多い。それらを繋ぎ合わせて一枚にして、折りたたみ薄く伸ばしてまた折りたたみ伸ばすような作業を繰り返す。この作業が雑だと材料が馴染んでいなくてツギハギが汚らしい……なんて、偉そうに、職人気取りなことを言ってしまったが、結局、口に入れたものをそのまま出していることに変わりない。どんなに頑張って作業したところで、美しくはなり得ない。人によってはゲロにしか見えないだろう。

他人の言葉を口には入れたら、消化されるまでは、口から出さないようにしよう。
もしくは、パッチワークのように、他人の言葉をそのまま縫い合わせて、その組み合わせを見せるようにしよう。

そんなことを自分に言い聞かせてみた。
これまた理想でしかないのだけれど。

ちなみにこのテキストは検索をせずに書いてみた。

洗濯機が仕事を終えた。
青空の広がるゴールデンウィーク初日の朝である。