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貯金20万円のアラサー女子が一念発起!ゼロから始める投資思考 ④お金持ちになるには必須のスキル「具体と抽象」の思考法


こんにちは。NVIC note編集部です。
8月は、モーニングサテライトやカンブリア宮殿といったテレビ番組で、CIOの奥野やNVICのことを取り上げていただきました。その関係で、このnoteも読んでいただいている方もいらっしゃるかもしれませんが、今後も様々な媒体で情報発信していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

情報発信という括りの中で、NVICとして最も力を入れているのが、“おおぶね”シリーズに投資いただいている受益者様限定で開催している「おおぶねメンバーズ・カンファレンス」です。
そのカンファレンスについて、今回も川代紗生さんにレポートを書いていただきました。NVIC note編集部で最初にタイトルだけ見た時は「具体と抽象という、難しいテーマで分かってもらえるかな…」とちょっと不安になりましたが、最後まで読むと「なるほど!」と伝えたいことがすーっと入ってきました。

それでは、カンファレンスの様子を川代さんの素晴らしい表現で味わってください!


ビジネスモデルの本質を見抜くには「抽象化」のスキルを磨け

「お金持ちになれる人に共通するスキルは何でしょうか?」

 あれは、奥野さんにはじめて出会った日のことでした。

 奥野さんが上梓した『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』の出版を記念し、インタビューをさせていただいたのです。「お金」とは、「投資」とはそもそも何なのか。15歳の高校生でも理解できるように噛み砕いて書かれたこの本に感動し、私は素朴な疑問を奥野さんにぶつけてみることにしました。

「本質的な課題を見つけられること、でしょうね」
「本質的な課題?」
「ええ。そもそも、お金持ちになれるのはどんな人か? という視点から掘り下げて考えてみましょうか」
 奥野さんは、順を追って説明してくれました。
「そもそも、『お金』とはありがとうのしるしである、というのが私の考えです。世の中の役に立つ商品やサービスなど、なんらかの価値を提供する。それを受け取った顧客の『ありがとう』という気持ちの総量をお金で評価する、というのが資本主義の仕組みです」

 つまり、お金持ちになりたければ、どうすればより多くの「ありがとう」を集められるのか考えなくてはならない。どうすれば世の中に価値を提供できるのか、世の中の役に立てるのか考えなければならない、というのが奥野さんの答えでした。

「となると、まずは顧客が求めていることは何かを把握しないといけないですよね。そのために必要なのが、『本質を掴む力』です。相手に価値を提供するためには、『顧客自身も気がついていない・言語化できていないニーズ』を見つける必要があります。顧客が本当にほしがっているものは、顧客自身に聞いても出てこないんですよ。だから、自分の頭で考えて、顧客の抱えている本質的な課題を見抜かなくちゃいけないんです」
「なるほど! たしかに、商品を手に取ってみてはじめて、『ああ、私はこれがほしかったんだ』と気がつく、ということもありますもんね」

 その答えを聞いて、私は深く頷きました。ただ一方で、ものすごく難しそうに感じてしまったのも事実でした。「本質的な課題」を見抜くとは言っても、簡単なことではありません。顧客ですら「私はこれがほしい」と認識できていないのに、提供する側の私たちは、どうやってそれを探せばいいのでしょうか。

 私が腑に落ちない顔をしていたからなのか、奥野さんはさらに説明を付け加えてくれました。
「本質を見抜けるようになりたければ、『具体化』と『抽象化』のスキルを磨くといいですよ」
「具体化と抽象化?」
ひとつの具体的な事象から『抽象化』して考える技術を身につけるといいと思います。『具体化→抽象化→具体化→抽象化』と無限ループのように繰り返していかないと、本質にはなかなか辿り着けないんです」


圧倒的シェア「三浦工業」のボイラ事業

 さて、こうして「具体」と「抽象」と言われても、なかなかぴんと来ない人も多いのではないかと思います。私自身、それって頭のいい人じゃないと出来ないんじゃないの? と思っていました。けれど、奥野さんにこの話を聞いてから少しずつ訓練を続けていった結果、徐々にこの「具体と抽象」の思考法の片鱗がつかめてきたような気がするのです。
 よくよく周りを見渡してみると、私の周りにいる成功者や、仕事ができる人たちのほとんどが、この「具体と抽象の行き来」が上手なのだとわかりました。むしろ、この思考法が身についているからこそ結果を出せていると言っていいかもしれません。

 さて、というわけで前置きが長くなりましたが、今回のレポートでは、この思考法についての学びをシェアしたいと思います。実を言うと、7月末に開催された「おおぶねメンバーズカンファレンス」でも、この考え方がキーポイントになっていたのです。

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「おおぶねメンバーズカンファレンス」では毎月、投資先企業の分析結果が受益者限定でシェアされています。今回、スポットを浴びたのは、「オイラはボイラ、ミウラのボイラ」というCMで有名な「三浦工業」です。
 そのキャッチフレーズのとおり、三浦工業の主力商品はボイラ。
 みなさんは、「ボイラ」とは何かご存知ですか? 私は、名前を聞いたことはあっても、その役割や仕組みについては詳しく知らなかったのですが、今回勉強してみて、私たちの生活になくてはならない存在なのだということを実感しました。

 ボイラとは、お湯や蒸気を有効に活用するための装置です。やかんを火にかけたときにできる蒸気を別の場所で使うイメージ、というとわかりやすいでしょうか。クリーニングのプレスや乾燥に、施設の暖房や給湯に……と、私たちの生活を陰で支えてくれる存在です。

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そんなボイラ市場のなかでも、圧倒的なシェアを誇るのがこの三浦工業です。コンパクトで省エネ、オペレーションコストを抑えやすい「貫流ボイラ」という種類のボイラを日本国内に広めたのが三浦工業だったこともあり、なんと国内で約50%のシェアを誇ります。
「中国市場での成長を見込めるのも、三浦工業が強いポイントですね」とアナリストの方が分析していました。というのも、中国では現在、石炭焚きが主流なのです。今後、ガス産業が成長することを鑑みると、それにともなって中国でのシェアも伸びるのではないか、というのがカンファレンスでの見解でした。


「モノを売って終わり」ではなく「メンテナンス」を売る

 さて、そんな圧倒的シェアを誇る三浦工業ですが、ここまでの競争優位性を保てている理由はいったい何なのでしょうか。
 実はその秘密は、三浦工業のビジネスモデルにありました。

「この会社の強みは、圧倒的なメンテナンス網が構築されている点にあります」と、奥野さんが解析しました。

「モノを売って終わりのメーカーはすごく多いんです。でも、三浦工業はそうじゃない。ボイラ購入後、トラブルが起きたときでもすぐに駆けつけるメンテナンスサービスが整っている。これは競合他社も簡単に真似できることではありません」

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 三浦工業は1972年にZMP(保守メンテナンス契約)を開始しました。機器販売だけでなく、メンテナンスを付加した「情報」を販売するビジネスモデルにいち早くシフトしたのです。

「今でこそ、『モノ売りからコト売りへ』とはよく言いますが、三浦工業は1972年の時点でそれをはじめたんです。当時、営業サイドからは大反対されたそうですが、経営者側がメンテナンスの重要性を強くプッシュした。その結果、国内メンテナンス人員は約1,200名。国内シェア2位の日本サーモエナーの約450名と比較すると、倍以上の数です」

 いくら貫流ボイラが高効率の機械でも、やはり長く使っていれば綻びは出てきます。たとえばクリーニング店で突然ボイラが壊れたら、対応が遅れてクレームにつながりかねません。そんなときすぐに駆けつけてメンテナンスしてくれるサービスは、どんなに心強いでしょうか。

「実は、僕たちがアメリカで投資しているディア・アンド・カンパニーという農業機械の会社でも、三浦工業と同じことが言えます。彼らの競争優位性は、全米に張り巡らされたディーラー網なんです。トラクターが壊れたとき、ディーラーに連絡すればすぐに飛んできてくれる。すごいですよね。『いいモノをつくって売る』まではできでも、呼ばれたらすぐに飛んでいく営業マンをちゃんと教育して、お客様のニーズをいつでも聞ける状態にしておくのは、ものすごく難しい。簡単には真似できないからこそ、これが三浦工業にとっての参入障壁になっているのかなと思います」


「投資家」目線を持てば、思考法も磨かれる

 さて、三浦工業がなぜ「構造的に強靭な企業」と言えるのか、ひとつずつ紐解いていくことによってわかってきました。「投資するに値する企業か?」というシビアな視点で見ているだけあって、やはり企業の強み・弱みを見つけるのが上手だなあと、聞いているだけで惚れ惚れしてしまうくらいです。

 ただ、やはり勉強する以上、憧れているだけではもったいありません。そこで、奥野さんの視点と私の視点、いったい何がちがうんだろう、と考えていたとき、ふっと記憶に蘇ったのが「具体と抽象」というワードでした。

 そう、奥野さんがここでしていたのはまさに、「具体化」と「抽象化」の行き来だったのです。

「異なる産業でも、国が違っても、参入障壁の築き方には類型があります。だからこそ、グローバルで活躍する日本企業を見つけることができるんです」と奥野さんは最後にそう締めくくっていました。この企業はどんなビジネスモデルなんだろう? と分析するとき、アナロジー(類推)で考えていたのです。

 今回取り上げた「三浦工業」という具体的な事象を抽象化していくと見えてきたのは、「モノを売るのではなく、メンテナンスを付加した情報を売る」というビジネスモデルでした。「何かトラブルがあってもすぐに解決してもらえる安心感がほしい」という顧客の本質的な課題を解決しているからこそ、三浦工業は業界トップを走り続けられているのかもしれません。今度は、三浦工業と共通する参入障壁を持つ企業はないだろうか? と探してみると、また新たに投資したい企業が見つかるかもしれません。

 めまぐるしい速度で技術が発展している現代。近い将来、ほとんどの仕事はAIに奪われ、生き残れる人とそうでない人の差がどんどん開いていくとも言われています。そんななかでも世の中に価値を提供し続け、お金持ちになれるのは、こうした「具体化」と「抽象化」の技術を持っている人ではないだろうか──。
 投資をきっかけに思考法を磨いてみようと決意した、私の人生においてもちょっとした分岐点になった日でした。いやー、今回もめちゃくちゃ面白かったです!


【参考】
・お金持ちになる人の考え方は、ここが違う/奥野一成インタビュー(ダイヤモンド・オンライン)
https://diamond.jp/articles/-/267646
・奥野一成『15歳から学ぶお金の教養 先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)
・細谷功『「具体⇄抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問』(PHPビジネス新書)