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長男の感覚過敏について

ASD長男にはいくつか感覚過敏がある。
一番わかりやすいのが味覚過敏、次が触覚過敏。
そして嗅覚過敏が最近になって判明した。

味覚過敏

これはわかりやすかった。何しろメシを食わないので。

・白ご飯しか食べられない(混ぜご飯、色付きご飯が無理)
・辛いものがダメ(カレー甘口、胡椒・唐辛子無理、ラー油死んでも無理)
・野菜ほぼ無理
・うどんに2mmぐらいのネギの欠片が入っていただけで食べられなくなる
・ピザをオーダーするときあらゆるトッピングを抜くのでただのチーズピザになっている

それに加えて冷めた料理がダメだとか、2日目のカレーがダメ(本人曰く味が変わるとのこと)だとかもある。

そんなわけで、給食の類はほぼ全滅である。
「これ美味しいよ?」「一口だけ食べてみよう?」
そんな誘いには乗らない。苦手なものを食べるぐらいなら空腹を選ぶ男、それが長男。幼稚園ではあまりにも食べないので手作り弁当持参(毎回同じメニュー)、学校の給食は食べたいものだけ食べて平然と残している。牛乳は好きなので、料理に一切手をつけず牛乳だけ飲んで帰ってくることもある。
外食は食べられるものだけをあらかじめ注文すれば良いので気が楽だ。
お子様ランチ的なものはどうしても苦手なものが入るので、回転寿司のように小さな皿をいくつも食べる方が都合よかった。
離乳食のことは思い出したくもない。

触覚過敏

・カサカサごわごわチクチクした服が苦手
・服のタグも苦手
・手に泥や砂がつくのが嫌い
・粘土も嫌い
・動物に触りたくない

ナイロンの服やニット類は全滅だった。
真冬でもダウン系が着られず、柔らかい裏ボアのパーカを上着にしている。

手足が汚れるのを嫌がるせいでお砂場遊びや海水浴は苦手だった。まったく遊べないわけではなく、彼の中で「面白そう、遊びたい」という欲求と「でも手に砂がつくのが嫌だ」の葛藤があり、結局「遊びたい」の欲求を優先するために感覚が刺激されて後でひどく不機嫌になった。
それまで機嫌よく遊んでいた長男が砂まみれになって怒り散らしているのが私には不思議だった。

海水浴もそうだ。海の生き物が好きで岩場を覗いたりするのは好きだが、砂浜で身体中砂まみれになるのは嫌がっていた。海に興味はある。でも砂は嫌…。
誰だって砂は嫌だよ、洗えばいいよ、それは感覚過敏のない人間の言い分である。彼はちゃんと申告していたのに、真剣に受け止めていなかった。単なるワガママだろうと思っていたのだ。
幼少期に残したメモにある「癇癪がひどい」にはこういう要素もあったと思う。

嗅覚過敏

これについてはよくわからない。日常生活に影響があるほどではないので。
まず、動物園の匂いが苦手というのは確実にある。
今年の夏に動物とのふれあいを売りにしていた動物園に連れて行ったところ、長男は走って土産物屋に駆け込んだ。鼻を摘み、顔を顰めて「臭い」と言った。
園全体にうっすらと漂う獣と獣の排泄物の匂いが彼には耐え難ったのだ。

数時間の滞在中、ほとんどの時間を土産物屋で過ごした長男は、「お母さん、動物に触ったら絶対に手を洗って!」と叫んだ。本人が触るのは当然嫌だが、家族が触るのも嫌らしい。
嗅覚過敏+潔癖気味+接触過敏の合わせ技だろうか?
動物の図鑑を愛読し動物を扱ったテレビ番組も録画しているのに、難儀なことである。



感覚過敏はざっとこんなもんである。
幼少期からのことも含めてまとめて書いたが、いくつかはだいぶ改善されてきており、大雪の日には防水のダウンを着る程度の社会性は身につけたし、粉を捏ねてクッキーを作ることもできる。動物が苦手なのは今も変わらないが、動物園に行かなければいいだけのことである。

そう、動物園も、砂場も、海も、近寄らなければいい。
食べられるものだけを食べればいい。別にお菓子だっていい。栄養だとか手作りだとか、そんなことにこだわる必要はなかったのだ。
今時の教師は「給食を完食しろ」なんて強制することはない。
誰も長男が嫌がることを強制しなかった。
私だけが強制したのだ。

家族で動物園に行って芝生の上で手作り弁当を食べる。
そんな一家団欒の光景に憧れ、長男にそれを強いた。
動物の匂いが充満する中、ちくちくする芝生の上に座って、出来立てとは味の変わった冷たい弁当を食べろと迫ったのだ。
そりゃ、嫌がるわ。
そりゃ、売店のソフトクリーム食べたいと言い出すわ。
何もわかっていなくて、本当に申し訳なかったと思う。

昨日は長男とクッキーを作った。
「俺も作る!」と嬉しそうに手伝ってくれた長男は、バターたっぷりの生地を捏ねたあと、それはそれは丁寧に手を洗っていた。

長男の感覚過敏は致命的なものではない。イヤーマフが必要になったり、365日同じ服を着なければならないほどのものではなかった。だからこそ目立たなく、だからこそ彼の言い分はワガママとして切り捨てられてしまった。
彼の言葉に耳を傾けよう。何が嫌なのか、何が不快なのか。
解決はできないかもしれないが、知らないよりは知っている方がいい。
克服しなければならないわけではないし、かといってそれによって人生の幅を狭められるのも避けたい。
感覚過敏とうまく付き合っていく方法を模索しよう。

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