薄暗い朝に
ここのところ、調子が悪い。
秋から正月あたりにかけて精力的に活動できたのが嘘のように、ぷつりとエネルギーが途絶えた。
疲れが溜まっているからだろう、寒いからだろう、低気圧だからだろう、冬だからだろう。そのすべてが当てはまるし、当てはまっていないかもしれない。冬季うつかもしれないし、単なるうつかもしれないし、そうではないかもしれない。すべてが漠然として、どろりと灰色に曇った冬の空のように心が澱んでいる。
しかし、こうなることは予想していなかったわけではない。長年自分の体と付き合っていると、バイオリズムのようなものが見えてくる。冬の初め頃妙に調子が良くてあれこれと手を出していたが(このnoteもその頃書き始めた)、その時点ですでに予兆があった。「いずれダメになる」と。
私の体と心は調子がいい時と悪い時があって、山と谷を繰り返す。大きな山と谷のあいだに小さな山と谷もあり、気圧や冬の寒さなども関係してくるしホルモンバランスなども関わってくる。そして今は深い谷底にいる。
谷底にいるあいだは体が常に重く、頭がぼんやりしている。判断力が鈍って、スーパーに買い物に行くと買うべき物が何なのかわからず、うろうろと歩き回って無限に時間を浪費してしまう。
仕方がないから、メモを使う。家にいるあいだに必要なものを思いついたらその都度メモアプリに書き込み、それをiPhoneのウィジェット機能でホーム画面に表示させている。これによって買い忘れは減ったが、逆にメモに書かれていないものは一切思い出せないので、メモ命の人間になってしまった。
メモによると私は明日学校に行くらしいし、明後日は美容室に行くらしい。ふーん、そうだったんだ。
メモがなければ買い物もできないし、すべてのやるべきことを見失ってしまう。そもそもメモに書き込むという行為すら忘れがちなので、家族には「必要なものがあったらしつこく言ってくれ」と申し伝えている。
なぜこんなに体が言うことを聞かないのか。疲れやすく、頭が回らないのか。
うつだからだよ、と言ってしまえばそうなのだろうが、時折自分がひどく無能な人間に思えて嫌になる。常に焦燥感に追い立てられ、出口の見えない暗い穴に落ちてしまったように先行きが見えなくて苦しい。
夜明け前、いつも目が覚める。
それは睡眠障害だからなのだが、それでもこの早起き体質だけは悪くないと思う。
しんと静まり返った部屋、物音が聞こえず空気そのものがキリキリと冴え渡ったような時間は心地よい。自分のために朝食を作って紅茶をいっぱい飲むのもいい。
このままずっと夜明け前だったらいいのにとすら思う。
世界が動き出さず、snsのタイムラインも動かない、誰も呟かない静かな時間。何にも心動かされることなく、焦ることもない。誰の声も聞こえないし、何者にもならなくていい──。
いつ谷底から抜けられるのかはわからない。春かもしれないし、夏かもしれない。おそらく冬の終わり頃に気温が上がってきたら抜けられるのではないかと予想している。
同じく谷底に落ちていた母は、年明けに閉鎖病棟を退院してきた。
ちなみに、治ったわけではないらしい。薬を使って低空飛行状態を維持しているのだとか。
母は病院がよほど嫌だったらしく、低空飛行状態を何とか維持したいという。
「無理しないのが一番だよ」
そう母に言ったが、自分自身に対してもそう思っている。
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