第18話 山梨⑥ バータイム/けんちゃん編
あいちゃんの次に、
けんちゃんのサインの列に並び、
写真も撮ってもらった。
その時は、
後ろで待っている人もたくさんいたので、
あまり長居はできなかった。
その後はだいちゃんの近くが
比較的空いていたので、
私はそちらへ移動した。
だいちゃんと写真を撮ってもらったあと、
昨日のユタカ会の写真を
だいちゃんに見せたりした。
そろそろメンバーのカラオケ大会をやろう、
ということになり、
だいちゃんとまなんちゃんが
機材の準備を始めた。
私たちはステージの前に
椅子を動かしたりして、
各々が好きなように移動した。
その時、後方では、
けんちゃんが目の前で
珈琲を淹れてくれていた。
私は普段、紅茶党で、
珈琲は飲まないのだが、
せっかくだからいただくことにした。
ドリンクチケットを渡し、
まなんちゃんのカラオケを聴きながら、
私はけんちゃんの横で
珈琲を待った。
けんちゃんは慣れた手つきで
お湯を注ぎながら、
「楽しんでますか?」
と私に声をかけてくれた。
「すっごく楽しいです!
来て良かったです、
あ、あの…演奏、かっこよかったです」
「ほんと?良かった」
優しい笑顔。
「名前なんて言うの?」
私はドキッとしてしまった。
名前…
どうしよう
本名を名乗るべきか、
インスタのアカウント名を名乗るべきか。
笑笑笑笑
アカウント名は違うかな、
と思って、
「(本名)です」
と答えると、
「(本名)ちゃん」
と名前を呼んでくれたのだ。
私は自分が爆発して粉々になるんじゃないかと思った。笑笑笑笑
結婚したら、〇〇さんの奥さん。
出産したら、〇〇ちゃんのお母さん。
自分が外で、男性から
ファーストネームで
しかも「ちゃん」付けで
呼ばれる機会が普段ないので、
妙にドキドキしてしまった。笑
私を私として見てもらえているような。
妻でもなく母でもなく、
1人の人間として。
私の分の珈琲が手渡された。
砂糖もミルクも入れずに味わった。
濃くて、苦くて、あたたかい。
いい香りがしばらく私を包んでいた。
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