育休をとるものと休暇を与えるものが見る景色の違い
私はここ1年くらいこう思っていた。
「今の時代、子育てを妻側だけに押し付けるなんてアンバランス。男性も育休、時短とって夫婦協力して子育てすべき」
だと。
(もちろん夫婦によって色んな形があって良いと思う。完全分業を選ぶ夫婦だってあると思う。大事なのは、選択肢があり、そこから選ぶと言う事。選ぶのではなくジェンダーロールで妻が育児、夫は仕事と最初から決まっているのはアンバランスだと思うのだ)
今もその気持ちは強い。
でも、そんなに簡単ではないと言う事を思い知ったような気がした。
1つずつ書いていきたいと思う。
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企業のリクルートページを見てみても「男性の育休実績あります!働きやすい風土です!」と打ち出す企業は増えている。
そりゃそうだろう。
女性だけが「女性の働きやすい企業」を探す時代は終わりに近づいている。
今までここ30年ほどで女性は「結婚しても仕事を続ける。産育休後に復職する」という雰囲気も強くなっている。
「共働きする女性」との結婚を希望する男性も増えているのではないか。
ともすると女性は「家事育児を丸投げしない男性」との結婚を考えるのも自然な流れだと思う。
:ピカピカ::ピカピカ:
つまり女性は「共働き前提」だし、男性は「育児する」のが前提になってくる。
ともすると「男性は正社員で大黒柱」という常識が崩れてくるのではなかろうか。
将来結婚するであろう女性からは「私は仕事を続ける。もちろんあなたも家事に育児するわよね?」と言われる可能性が高いだろう。
男性もただ給料の良い会社を選ぶのではなく、「男性でも時短がとれるような働きやすい企業」に優秀な男性は集まる。
だから企業側だって「女性はもちろん、男女共に育休、時短実績があります!働きやすいですよ!」と打ち出しリクルートをかける。
しかし、しかしだ。
しかし現実はそうも簡単にはいかない。
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例えばの話だが、私の親戚の話である。
妻側が「2人目出産に伴い、実家の手助けがないから育休をとって、上の子の世話をして欲しい」と夫側に持ちかけたとする。
夫側は「イヤイヤ、無理でしょ、ベビーシッターとか家事代行頼んだら?」とか言う。
これ。
ほんと多いんだよ、妻側の切実な願いに「いや無理でしょ、そんなこと(時短や育休)してる男性はうちの会社に1人もいないよ」といって断る夫はほんとに多い。
そういうことをおっしゃる男性に一回問い詰めたいのだが。
「上司に聞いたの?同じ職場の女性はどうしているの?なんで確認もせずに無理っていうの?」と詰めたくなってしまう。
私たち多くの女性も全く同じ状況だったではないか。
職場で妊娠したのは私が初めて。
前例もなく、右も左もわからぬ中上司に交渉してきたのだ。
「妊娠しました。産休はこの期間、育休はこれだけ必要で、保育園次第だが時短がこれだけ必要です」と。
上司にいつ言えばいいのか、同僚にいつ言えばいいのか、関わってるプロジェクトや担当顧客はどう引き継ぎ、復職したらどんなキャリアプランを描くのか。
多くの言いにくい交渉を「何と言われるだろうか」という不安と戦いながら上司と、企業と重ねてきたのだ。
多くの女性が十数年それを重ねて、やっと今、育休から復職する女性が増えているではないか。
では男性は?
男性は自分が産まないからといって、女性側の企業に時短や育休の実績があるからといって、
男性の実績はないからといって、
なぜ簡単に「無理無理」と言うのか。
そりゃ会社に交渉して初の男性育休をもぎ取るよりも、妻の交渉を断るほうがはるかに楽だろう。
そうして多くの妻は「そうだよね、無理だよね」と諦めて、夫に恨みを募らせつつ育児を背負う。
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しかし、私自身も同じように、一方の側面しか見えていない。
私は私が歩いてきた道の景色しか知らない。
男性が、夫側が育休を取ったときの景色を、そしてその雇主である企業の幹部が見てる景色を知らないのだ。
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私が知らない、男性の世界を垣間見たのは正月のことだった。
親戚に大企業の幹部を務めていた方(数年前に退職済み)がおり、話す機会があった。
そこで聞いてみたのだ。
男性も育休や時短をとるという事を、企業幹部としてどう考えるかを。
その答えはやはりこうであった。
「サラリーマンの幹部コースは減点方式。育休や介護休暇を取った時点でエリートコースからははずす。
経営者の視点で考えると自分の家族の都合で社員に休みを取られると困ってしまう。
育休をとらない社員と、育休をとった社員を同じ待遇にするわけにはいかない。」
絶望感あふれるなぁ…。
―でも、それでは優秀な人材は集まらないのでは?
「そりゃ表向きはもちろん、"育休制度があります!誰でも使えます!"というスタンスを強調するよ。
でも人事では幹部コースとその他コースを20代のうちから分けていて、一度でも減点されたら幹部コースには戻さないよ」
とのことだった。
それを聞いて私が絶望していると、
「私が勤めていた時代はね。今はどうか知らないし、今後もどうなっていくか分からないけどね」と申し訳程度に補足された。
―――
その親戚の方には妊娠中の娘さんがいる。思い切って聞いてみた。
―夫側が育休や時短をとらないことでのしわ寄せは娘さんに行くとは思わないか?
仕事を制限され、孤独に育児するのは娘さんではないか?
「本人たちが決めることだからなんとも。
ちなみに僕はまさに家庭を顧みない働き方をし、そのしわ寄せは妻へいってしまった。
妻は一人で子供たちを育てた。家のことは任せきりにしてしまった。
しかし40代以降は年収1千万を超えた。年収600万円で過ごすのと1千万円で20年間の収入が違うんだよ。
妻は50歳で大学に入り直したし、その後妻が大きな病気をした時にも、お金を惜しまず使えたと、思っている」
これを聞いて、私は働き方における問題は、そう単純ではないのだなと思ってしまった。
また、やはり私は私が歩いてきた人生の景色しか知らず、これから歩く40代、50代、60代の景色は想像することしかできない。
なお、その幹部の方の配偶者様にはお話を聞くことはできなかった。
―――
夫婦の働きから、家事育児における考え方、どうしていくべきなのか。
根深いし考えれば考えるほど深みにはまってしまう。
女性の私が今、選ぶとしたら、
・自分も夫も働き、自分も夫も育休や時短を使いながら家事育児をしていく
という方法を選びたい。
(もちろんパートナーと相談が必要)
なぜならその会社でパートナーがエリートコースにのれるかどうかわからないし、
「夫が会社を辞めたら一家全員路頭に迷う」リスクは大きいと感じるから。
また、私自身が「稼ぐ力」を磨きたいという気持ちもある。
(夫と添い遂げないという万一の可能性もあるし)
しかし元幹部の方がおっしゃるように「夫が幹部職をめざし、妻が仕事をセーブしながら家事育児を担い、生涯世帯年収のアップを狙う」という方法もあるのだと。
その夫婦が何を選ぶのかは分からない。
育児で一番大変な5年を乗り切れば夫が出世できる、と、分かっているのなら頑張る妻もいるのかもしれない。
またその逆(妻が幹部をめざし、夫が家庭を守るというパターン)も。
―――
このロジックで行くと出産した女性は幹部になれないという性差別は?
この「休暇をとったら幹部候補から外れる」というロジックでいくと、出産する女性は必ず産休を取る必要があるため幹部にはなれないのではないか。
なぜ企業の幹部に女性が少ないのか、これも一つの要因であるように思う。
男性は結婚しても子どもを持っても休暇を取らずに働き続けることができるため幹部候補に残れるが、女性は妊娠したらアウトではないか。
この先、わが子が大人になった時、社会はどうなっているのだろうか。
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