「何かあったら言ってね」と言っては消えていく、紳士淑女の皆さまに置かれましては
小さい頃、私は母のことを、なんでもできる「スーパーマン」だと思っていた。
子供とは往々に両親のことを美化し、理想化しがちであるが、私のそれはちょっと度を越していたかもしれない。
なぜかというと、母はたいそう物知りな上、子供の「なんで?」を曖昧に誤魔化さず、きちんと向き合って答えてくれる人だったからかもしれない。空はなぜ青いの、本はどうやって本になるの、どうしてあひるのおもちゃは水に浮くの⋯⋯子供特有の終わりのない「なぜ」「どうして」に、母は嫌な顔せず付き合ってくれた。