【権力闘争】維新代表選で起こっていること ~真に恐れるべきは何か~
7月30日、松井代表辞任に伴う臨時党大会で特別党員に向けた松井さんの代表としての言葉である。
党大会での代表の発言は重い。この瞬間から維新の代表選は「権力闘争」として事実上スタートしたと言える。
党大会以前の話
実はこの数日前党大会での松井代表の発言に繋がったと思われるやりとりがTwitter上で起こっている。
発端は、囲み取材で梅村さんのが女性を重点的に立候補表明したことについて聞かれた松井さんが「それは違う」と答えたことだ。
これに足立さんが噛み付いた。
ひとつ前の記事で触れた通り維新の代表選は一般党員も同じ一票を持つ。
初の代表選で真の党員民主主義を表現したかった足立さんが、松井さんの水面化での動きを牽制したのだ。
(この時点では足立さんの発言は真偽は不明だったが、その後の松井さんの動きが明らかになった今となっては事実だったのだろうと推測できる。)
党員民主主義をめぐる混乱
足立さんが人に噛み付くのは守るべきものを守るときだ。代表に噛み付いてまで守りたかったものは何だろうか?
スペースで語られたのは真の党員民主主義の実現だった。この点は梅村さんも同様のことを述べていた。
この部分を理解するためには、維新の党員の仕組みを知ることが必要だ。
まず日本維新の会は全国におよそ3万人の一般党員がおり、その中で党員になって2年経過する2万人が代表選の選挙権を持つ。その一般党員には必ず「紹介者」の特別党員がいる。
つまり600人の特別党員の下に、2万人の一般党員がぶら下がっている形になっている。
足立さんと梅村さんが重視していたのが、候補者が2万人の一般党員にアクセスできるかどうかだった。
一般党員にアクセスができなければ電話作戦やビラの発送ができず、どこにいるか分からない相手に選挙戦をしなければならず、公平性が担保できない。
2万人の一般党員が議員(特別党員)と同じ一票を持つというルールは創業者の橋下さんがこだわった点だそうだが、極めて画期的である。
他の政党ではできない真の党員民主主義で代表を選べる土壌が維新にはあった。
はずだったが、結果として党員リストに候補者はアクセスできないルールとなった。
全員アクセスできないのであれば公平なのでは?という声もあるが、残念ながらそれは違う
例えば馬場さんの指示を表明している藤田幹事長は明確に電作や投票の呼びかけをすると表明している。
SNSで自ら情報を集めに行くような一般党員を除けば、「公平な党員民主主義による代表選挙」は事実上有名無実化されたと言える。
政治的には足立さんと梅村さんが甘かった
前の段落では執行部や選管酷いじゃないかと読めてしまうかもしれないが、善悪の価値判断はともかく権力闘争の中で足立さんと梅村さんが遅れをとったというだけの話である。それ以上でも以下でもない。
松井代表は別の会見でこうも言っている。
つまり党規約に則ってさえいれば、金を配る以外何でもありの権力闘争だと言っているのだ。
そして執行部や選管のこれまでの動きに党規約違反と言えるものは何もない。清濁含め松井さんはやはり天才的な政治家である。
党員投票のあり方については特別党員からも多くの意見が出ているが、これ以上今回のルールに対する不満を述べることに意義はない。
政治家としての甘さを受け入れて権力闘争の覚悟をして、不条理を将来の改善につなげることしかない。
だから足立さんもルールが確定した候補者説明会以降、一切言及していない。梅村さんはTwitterで以下のように表明した。
そう考えるとこのメッセージには未来を見据えた強さと今回の闘争への悲壮な覚悟が伺える。
権力闘争とはいったい何なのか
前出の梅村さんの覚悟を感じるTweetに対して、元市議の飯田さんが以下の苦言を呈した。
大阪での活動経験から「血みどろの戦い」「権力闘争」について一家言あるようだ。
ひとつ整理したいのは松井代表の言う「血みどろの戦い」や「権力闘争」は、28日の会見も30日の党大会も一貫して党内のことについて語っていた。
本文においても、権力闘争は党内のことと理解して読み進めてほしい。
では権力闘争とはいったい何なのだろうか?
自民党の歴史から振り返りたい。賢者は歴史に学ぶのだ。
自民党の歴史でもっとも激しい権力闘争と言われたのが東京オリンピックが開催された1964年の総裁選である。3選を目指す池田勇人首相の池田派に佐藤栄作の佐藤派と藤山愛一郎の藤山派が挑む構図で各派閥で議員票の切り崩し工作のために多額な現金が飛び交ったとされている。
この総裁選以降、自民党の権力闘争では金が飛び交うのが通例になったと言う。その選挙だけでなく恩義や貸しというかたちで次回に持ち越されることもある。
今現在どうなっているかは私には知り得ない。が前の記事に書いた通り自民党の幹事長には10億円以上の使途を明らかにする必要のない政策活動費が政党から個人に振り込まれている。同じことが起こっていないことを自民党は説明できないはずだ。
もうひとつ、権力闘争で必ずセットとして出てくる言葉がある。冒頭の松井代表の発言だが、どこかで似たようなことを聞いたことはないだろうか?
これは前回の自民党総裁選を控え派閥の会合での麻生太郎外務大臣(当時)の発言である。こうも加えている。
そう、人事である。むろん派閥には教育や政策集団としての役割もある。が、自民党の権力闘争は究極的には金と人事とによる数(仲間)集めなのだ。
実は松井代表も同じことを言っている。
冒頭の党大会での発言と合わせて考えれば、派閥のような性格を維新は持たないものの、今行われているのは自民党と同じような権力闘争であると言える。
金については松井さん自らダメと言っているのでないと信じたいが、(ただし前の記事のように領収書の出ない金がある限り明確に否定できない。だからやめた方がry) 少なくとも人事はアイテムとして使われている。
残念ながら出馬を断念された東さんは以下のようにに語ったという。
松井さんが代表として自民党型の代表選挙を選択した以上、東さんの判断も仕方ないし尊重されるべきである。
だが足立さんと梅村さんと、まだ表明されてないが吉田さんは、この条件下で現状の執行部全員の支持を受ける馬場さんとの権力闘争を現在進行形で繰り広げているのだ。
自民党のマネで日本維新の会は自民党に勝てるのか?
自民党は強い。その強さを吸収しなければならないという点において異論はない。
しかし今回松井さんが仕掛けた権力闘争は本当に日本維新の会のあるべき姿なのだろうか?僕はそうは思わない。
創業者のこの言葉を忘れていないだろうか。
維新は金やしがらみによる政治を否定し、徹底的な政策討論と多数決による新しい政治を作ろうとしてたんじゃないのだろうか?
初の党員投票を控え、今の維新は足元からブレ始めていると指摘せざるを得ない。
足立さんが松井さんに「自民党ごっこ」と発言して炎上したが、これこそ守るべきものを守るための怒りである。こうした背景を踏まえれば自民党ごっこで何が悪い?という指摘は全くの的外れと分かる。
維新はどうしていくべきなのか
告示を前にして、松井代表と党三役の執行部全員が馬場さんの支持を表明するという異例の事態になっているのが今の維新である。
音喜多政調会長は今日馬場さんの支持を発表した。
要約すると、「ある候補者がかなり過激な踏み込んだ主張をしており党が割れることを危惧してまとめることを優先した。代表選は終われば必ずシコリが残る。」
まず足立さんの発言の多くを記事内で紹介しているが、過激な踏み込んだ主張などしているだろうか?誰よりも前を向いて維新の理念のために主張しているのではないだろうか?
また松井代表は、血みどろの戦いして決まったらひとつになると言っている。なのに終わるとまとまらずにシコリが残るのだろうか
どちらも、討論と多数決という維新のアイデンティティそのものを否定している発言と取られかねないと指摘をしておく。
やはり現在の維新は権力の構造に偏りができているように思う。
この問題点に真正面から向かった3共同代表と幹事長の合議性によるガバナンス論を提示したのが足立さんで、梅村さんも具体的なところまでは踏み込んでいないものの問題意識は同様である。
足立案
https://youtu.be/B1q0GKbbf_8
梅村案
https://youtu.be/jxo2jRN6YYw
一方で馬場さんは執行部にあり方変更についての言及はなく地方組織への活動費増額を提示した。同じ増額であっても合議による増額と執行部の差配による増額は、差配する執行部に大きな権限が残る点でまったく性格が異なる。
明言こそ避けたものの執行部は留任が匂わされた。
こんなつまらないことで疑心暗鬼にならないといけないのは10年来の支持者として非常に辛い。
今こそ維新は原点に立ち返りつまらない権力の探り合いをやめて、徹底した議論に立ちかえるべきじゃないのだろうか。
馬場案も足立案も梅村案も満点ではなく、まだまだ高められるのだ。
馬場さん、足立さん、梅村さん、吉田さんによるハイレベルな議論を告示前から盛り上げてメディアジャックしていくような動きをリードする役割を党には担ってもらいたい。
真に恐れなければならないものは何か
特別党員が恐れなければいけないのは本当に冷や飯を食うことなのだろうか?
真に恐れなければならないことは維新がそのアイデンティティを失い埋没していくことじゃないだろうか?
政権政党を目指すために自民党のよきを吸収するのは良い。ただし自民党に対峙できるための力は維新のアイデンティティである徹底した議論と多数決ではないのだろうか。
理念とアイデンティティに共感して維新の政治家になったときの原点に立ち返って選挙戦を見つめてほしいと支持者として心から願う。
候補者以外も巻き込んだ激しい論戦が行われて、最後は多数決で決まる維新の姿を見られるなら最高の夏である。
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