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PADISって知ってますか?

ICU・救命救急センターで仕事をしていると、色々な患者さんと関わる機会があります。入院が長期化することで色々な弊害が出てきます。そんな中、以下の視点でケアを考えると良いでしょう。
簡単にまとめてみました。日本集中治療医学会HPからPADISガイドライン日本語訳が見れるので、もし興味がある方は覗いてみて下さい!!

PADISガイドライン(2018)

① 痛み(Pain)
・定期的に疼痛の評価を行う

【評価方法】
・自己申告できる場合:NRS、VAS(3点以下を目標とする)
・自己申告できない場合:BPS、CPOT(BPSは5点以下、CPOTは2点以下
 を目標とする)

【疼痛管理】
・鎮痛薬としてオピオイド静脈投与を推奨
・フェンタニルを第一選択
・アセトアミノフェンやNSAIDsの併用
・デクスメデトミジンのみ、鎮静鎮痛作用あり

② 鎮静(Agitation/Sedation)
・人工呼吸器管理中の重症患者では、可能な限り浅い鎮静を推奨
・鎮静薬を使用している場合、RASSを用いて統一した鎮静評価を行う
・毎日の鎮静中断(SAT:Spontaneous Awakening Trial)は単一時点で
 鎮静を浅くする方法であり、終日行うものではない
・ベンゾジアゼピン系鎮静薬よりもプロポフォールあるいはデクスメデト
 ミジンを使用


③せん妄(Delirium)
急性に出現し、症状に変動性を有する意識、注意、知覚障害
せん妄の発症は身体予後を悪化させ、認知機能低下へ影響する

【せん妄の診断】
DSM-5によるせん妄の判断
術後集中治療管理が必要な高齢患者の80%がせん妄を発症すると
言われている。評価には、ICDSC,CAM-ICUを用いる

【せん妄の分類】
1. 過活動型せん妄
 →24時間以内に2項目以上の症状
 ・運動活動性の量的増加(ソワソワしている、落ち着きがない)
 ・活動性の制御喪失(暴れている、静止がきかない)
 ・不穏
 ・徘徊
2. 低活動型せん妄
 →24時間以内に2項目以上の症状
 ・活動量低下
 ・行動速度低下
 ・状況認識低下
 ・会話量低下
 ・会話速度低下
 ・無気力
 ・覚醒低下/引きこもり
3. 混合型せん妄
 →24時間以内に過活動ならびに低活動型療法の症状が認められた場合

【せん妄の治療】
・せん妄予防として、ハロペリドールやリスペリドン、オランザピンを使用
・ベンゾジアゼピン系はせん妄を誘発するため推奨しない
・内服可能な患者の場合は、クエチアピンやオランザピンが有効
 (クエチアピンを使用する場合:糖尿病歴に注意)
・内服困難な患者の場合は、ハロペリドールを使用。必要の応じ、
 ミダゾラムを併用する

④ 不動化(Immobility)
・早期リハビリテーションの開始
 →せん妄発症減少、人工呼吸器離脱促進、ICU-AWの予防、廃用萎縮の
  予防、日常生活動作の早期獲得(ICU在室日数、入院期間の短縮)が
  期待できる
・適切な鎮痛、浅い鎮静での管理が必要

⑤ 睡眠(Sleep)
 睡眠を妨げる要因として以下の4つが挙げられる
 ・環境因子の調整
  →騒音、光、ベッドの快適さ、空調、悪臭、訪問者、オープンスペース
     でのプライバシーへの配慮など
 ・診療・ケア関連因子の早期介入
  →気管チューブ、尿道カテーテル、(夜間の)処置・投薬・検査、
           モニター、ルート・チューブ類による行動制限など
 ・生理的・病態生理学因子の改善
  →疼痛、呼吸困難感、咳嗽、口渇、空腹、悪心、嘔吐など
 ・心理的因子の緩和
  →不安、ストレス、慣れない環境、恐怖、孤独感、時間感覚の喪失、                 プライバシー欠如、理解できない医学用語など

原文
Devlin JW, Skrobik Y, Gelinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018; 46(9):e825-e873.

【参考文献】
1)古賀雄二・深谷智惠子編集 日常性の再構成をはかる クリティカルケア
      看護 基礎から臨床応用まで,中央法規,2019.