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シンシナティ・レッズの進撃が素晴らしい

シンシナティ・レッズが現在10連勝している。
去年を覚えている方は少ないだろうが覚えている人は思い出したくなくても思い出してしまうほどひどい一年からこうなるとは思わなかっただろう。
あの2022年があったこらこそ、この10連勝を噛みしめているファンも少なからず、という感じだ。

しかし何が大きく変わったというのだろうか。
この辺りを整理したい

1、去年の下馬評とファンの見解

元々今年の前評判は高いものではなかった。
頼みの綱が誰もいない。プロスペクトであるハンター・グリーン、ジョナサン・インディア、タイラー・スティーブンソンくらいしか活躍のめどが立たない、という感じであった。

メジャーはあまりにも選手が多い。そのため多くの統計学から有名人を割り出してそこから話をする人が多いため、有名人がいないというのはもはや語るに値しないのだ。
特に前評判だけは高かったハンター・グリーンが去年は大炎上を重ねていたところから期待値は非常に低く、今年も最下位を争うかそれすらなく終わりであろうという見識は十分にあった。

一方ファンとしてのバイアスをかけると必ずしも悪いわけでもなかった。
去年足を引っ張りに引っ張ったトミー・ファム、マイク・ムスタカス、アリスディリス・アキーノ、タイラー・ネークイン、タイラー・マーレをFAしある程度若手が出しやすい環境になった。
また、そこを埋めるような形でT.J.フリードル、ジェイク・フレイリー、スチュアート・フェアチャイルド、ニック・センゼル、グレアム・アシュクラフトと言ったチームを再建していく選手が台頭してきており、彼らが使えるタイミングが重なっていたというのはあった。
名より実を取れる状況に入りつつあったのは間違いなかった。
エウニエス・スアレスやブランドン・ドゥルーリー、ルイス・カスティリーヨがいなくなったのは寂しさもあったがそれでも土壌は整いつつある感じはあった。

そこでフロントはどうしたかというと一番の欠点であった捕手の獲得に乗り出す。
正捕手候補として活躍していたタイラー・スティーブンソンではあるが去年二度の骨折をしてしまい、それが最下位の道を走るきっかけになってしまった。
当初はアラミス・ガルシアが入っていたものの彼も全く活躍できずクリス・オーキー、マーク・コロズスバリー、チャッキー・ロビンソン、マイケル・パピエルスキーなど多くの選手が上がり、全く活躍出来ないまま去っていく現状があった。
そこでシアトルからカート・カサリを呼び戻し、クリーブランドから控えであったルーク・メイルを招聘。どちらかというと控えであった二人を補填した。

この辺りが大きな変化であった。

2、先発に不安も強力なブルペンが支える投手陣

当初好評だったのは先発陣であった。
頭角を現してきたグレアム・アシュクラフト、ニック・ロドロなどがおり、コナー・オーバートンも活躍の可能性があり、ルイス・カッサもヤンキース以来の先発復帰もある、というように先発は苦労しなさそうという考えであった。
一方アレクシス・ディアス以外のブルペンが定まっておらず、ここがどう補強するのか、というところが問題点に上がっていた。

これがシーズン入ってみると面白い事になる。
ニック・ロドロ、コナー・オーバートン、ルイス・カッサがあまり活躍できず早期に離脱、一方で先発しては打たれるが基本であったハンター・グリーンがブレーキングボールを覚えて投球の幅を広げた事もあってか先発として完全に定着。近日ではグレアム・アシュククラフトが調子を崩しているが五月中旬まではエース級の働きをしていたものの不安定という印象を拭えない状態である。

一方で去年後半から出てきたイアン・ギバウト、ルーカス・シムズが台頭。
ブルペンで怒涛の活躍をすることになる。
特に難しい場面ではイアン・ギバウトが投げる機会が増え、現在チームでの勝利数ハーラートップ7勝を挙げている。

ここまでブルペンが安定するのは正直想像できなかった。
これも去年多くいた選手を薙ぎ払って新たな力に賭けたところが大きいのだろう。

先発は現在アンドリュー・アボットが三回先発して無失点のまま三勝。
現在防御率0.00のまま先発の一角を担おうとしている。
※JUN/23/2023 1:46現在、ついにロッキーズのブレントン・ドイルの開幕打者ホームランで1失点しました。

彼がチームのエースに収まるともっと面白い事になっていくだろう。

現在ハンター・グリーン、グレアム・アシュクラフトが15日のDLリスト入り。そこをベン・ライブリー、ルーク・ウィーバー、ブランドン・ウィリアムソンが固めている。

先発の安定力が向上する事が現在の課題であるので彼らに期待しよう。
特に今年は活躍の期待されたルイス・カッサを早い段階でリリース。五月下旬に大炎上をしたジョエル・クーネルをヒューストンにさっさと売りつけたりしているので投手に対しての本気度はすさまじい。去年なら残そうとしていただろう。
また、個人的には苦労人コナー・オーバートンの活躍をいまだ期待している。

そして本当にどうでもいいがレッズからフリーエージェントを出されたらまたレッズでサインし、そしてついに五月リリースされてしまったハンター・ストリックランドの明日はどっちに向かうのか。これはこれで気になる。

3、変化した運用方法

現在起用や戦略の面で見てみると、大きな変化が起きている。
去年は一番にセカンドのジョナサン・インディア、クリーンアップにキャッチャー、タイラー・スティーブンソン、ファースト、ジョーイ・ボットという打線で勝負をしており、これが崩れると同時にチームが崩壊する不協和音が響き渡っていた。
特に四月はインディアの怪我から一番を誰に任せるか問題が勃発。そこを解決出来ないままずるずると敗北していく光景を見た。
結局チームは活躍の出来ないジョーイ・ボット、孤軍奮闘していたタイラー・スティーブンソンに任せる他なく、怪我などで二人が撃沈するとその時調子を上げていたブランドン・ドゥルーリー一人に任せるといった状態が続く。これによってドゥルーリーはオールスター出場にまでこぎつける事になるのだがそんな彼も途中でパドレスにトレード。現在はエンゼルスで頑張っている。
そんな誰かに任せるような起用が続いた。

しかし今年はどちらかというとチームの状況に合わせて変化させるところが多い。
一番セカンドジョナサン・インディアをやめたのはそれを象徴する出来事のように思う。
インディアの打力や総力を活かすために三番DHに置くなどが現在続いている。これは内野手にケビン・ニューマン、マット・マクレイン、ホセ・バレロ、去年は外野手起用であったニック・センゼルなどがしのぎを削っており、必ずしも彼である必要性がなくなってきているからである。
特にマクレインはその打撃力からショートに強く食い込んでいる。存在が楽しみな選手だ。

ファーストもスペンサー・ステアを中心にスティーブンソンやジェイソン・ボスラーが争う。
勿論セカンドインディアの存在は大きいが、体力面を考慮して彼らをセカンドに置いてみる事が増えたのも大きい。
またプロスペクトであるエリー・デラクルーズが今月にメジャーデビュー。ショートに入りさらに競争を激しくしている。誰が落ちるか分からないような熱い内野手争いが現在のチーム層を厚くしている。

また、先発投手に必ず5イニングを任せなくなってきている。
状況によっては4イニング付近で卸し、ギバウトを中心にシムズ、アレックス・ヤング、フェルナンド・クルーズ、デレク・ローなどに任せて試合を締めたりする。
そのためホールド、セーブ機会が増えており、特にアレクシス・ディアズは現在セーブがリーグ1位だ。調子のいい場所にガンガン仕事を与えている。

それを抑えるのが捕手、ルーク・メイルであり、カート・カサリである。
ここにDHと捕手を兼任するスティーブンソンが入る事で捕手の層がかなり厚くなった。スティーブンソンだけが頑張る構図がなくなり、打撃に弱いメイルやカサリには途中に内野手争いでその日控えに甘んじた選手を代打を送り、その後のイニングは控えだった誰かがそのままキャッチャーに入るような上手い構成が出来ている。カサリ→ニューマンまたはバレロ、スペンサー→メイルの流れは何度も観た。
誰にも比重がかかっておらず、全体にまんべんなく負担を届かせている状態が続いている。

また、触れていなかったが外野が固定化しつつあるのも特徴的だ。
センターを担い始めたT.Jフリードル、現在ホームランを量産しているレフト、ジェイク・フレイリーが中心となってチームを支える。ここに去年外野をしていたニック・センゼル、スチュアート・フェアチャイルド、ウィル・ベンソンが入る。
特にジェイク・フレイリーはここぞでの打撃をは発揮しチーム打点王。怪我から復帰したT.J.フリードルの存在が光る。また、打撃もありながらどこでも守れるセンゼル、打撃はイマイチながら足や守備でチームを陰から支えるフェアチャイルドの二人がチームを温める。

これが今年のシンシナティ・レッズの強さであると考えている。
10連勝は出来すぎにせよ、連敗に陥ったり長引くことが極端に減ったのは大きい。
後は帰ってきたジョーイ・ボットがどこまでチームにプラス出来るか、である。彼ももう39歳。記録は偉大ながら彼ももう挑戦者でしかない。引退も見えてきた彼がどこまでメジャーの新陳代謝に戦えるか。これも見ものである。

とにかく最近試合で苦しむ必要がなくなったので是非鈴木誠也を見るがてらシンシナティ・レッズを観てもらいたい。

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