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NSAIDsとアセトアミノフェン

皆さんこんにちは。とある大学病院の男性看護師です🙋‍♂️

今回はNSAIDsとアセトアミノフェンについてです💊

病棟勤務の看護師さんで、医師から必要時の指示に疼痛時・発熱時ロキソプロフェン又はアセトアミノフェンと指示が出ている事があるのではないでしょうか?🤔

ではロキソプロフェンとアセトアミノフェンの違いについてはご存知ですか?
どちらもや痛みがある時や熱が高い時に内服しますよね?

看護師として(本人の希望も含めて)熱は下げてあげたいし、痛みをとってあげたいですよね?
それでは、どんな事に気を付けて必要時の指示を使用して内服させるべきなのでしょう。


今回はそんな疑問に答えていきたいと思います。


前置きが長くなりましたが🙇‍♂️

NSAIDsやアセトアミノフェンはWHO方式の癌性痛疼痛治療3段階ラダーの第1段階に位置します。

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NSAIDsとはNon Steroidal Anti Inflammatory Drugsの略称で、非ステロイド性抗炎症薬と訳せます。

NSAIDsはアラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、プロスタグランジン(類)の合成を抑制します。

プロスタグランジンの中でも、特にプロスタグランジンE2(PGE2)は炎症発現物質・発痛増強物質です。

NSAIDsは主にPGE2の合成抑制によって鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮します。

✅アラキドン酸カスケード

アラキドン酸カスケードはNSAIDsの作用機序や副作用の理解に重要です。細胞膜リン脂質から合成されたアラキドン酸は、主に3つの経路で代謝されます。    

第一の経路はCOXによりプロスタグランジンやトロンボキサンなどを合成するCOX経路
第二はリポキシゲナーゼによりロイコトリエンやリポキサンなどを合成するリポキシゲナーゼ経路
第三はチトクロームP450(CYP)によりエポキシエイコサトリエン酸などを合成するCYP経路です。

COXにはCOX-1とCOX-2の2つのサブタイプがありますCOX-1は血小板、消化管、腎臓などに常時発現しており、臓器の恒常性維持に必要です。COX-2は炎症などで誘導され、血管拡張作用などを有し炎症を促進すPGE2などを合成します。

✅NSAIDsの副作用

炎症や痛みに関連するのは主にCOX-2ですが、古典的なNSAIDs(非選択的NSAIDs)はCOX-2だけでなく臓器恒常性維持に必要なCOX-1も阻害するため胃腸障害や腎障害などの副作用を生じると考えられていました。そのため、COX-1に比べてCOX-2を選択的に阻害するCOX-2阻害薬(COX-2 Inhibitory NSAIDs: Coxibs)が開発されました。Coxibsの使用により、非選択的NSAIDsに比べて胃腸障害の発生頻度は減少することが分かっています。しかし非選択的NSAIDsに比べて頻度は低いものの、Coxibsによっても胃腸障害が発生します。胃潰瘍の治癒促進にCOX-2が関与していることが報告されており、このことがCoxibsによる胃腸障害の原因であると考えられています。COX-2も腎臓や血管内皮には常時発現しており、臓器の恒常性維持に関与しています。そのためCoxibsを使用しても、非選択的NSAIDsに比べて腎障害の発生頻度は減少しません。また血小板凝集作用を示すCOX-1への阻害作用が弱く、血管内皮の恒常性を保つCOX-2を選択的に阻害するため、Coxibsは非選択的NSAIDsに比べて心血管合併症を増加させる危険があると考えられています。理論上はCOX-2選択性が強いCoxibsほど胃腸障害が少なく血管合併症が多いと思われます。しかし、実際にはCOX-2選択性よりも個々の薬剤の特性によって、これらの副作用の頻度は異なっているようです。

✅NSAIDs過敏症(NSAIDs不耐症)

喘息患者さんの中にはNSAIDsの内服によって喘息発作が誘発される患者さんがいます。
(以前はアスピリン喘息と呼ばれていました。現在ではNSAIDs過敏症という名称が好まれているそうです。)
NSAIDs過敏症には喘息型と蕁麻疹型があります。       NSAIDs服用後30分から数時間以内に発症します。      病態生理:NSAIDs過敏症はアレルギーではなく、アラキドン酸カスケードのリポキシゲナーゼ経路活性化によるロイコトリエン異常産生によるものと考えられています。COX-1阻害作用によって症状が誘発されるため、  多くの患者さんではアセトアミノフェンが安全に使用できます。

✅アセトアミノフェン

アセトアミノフェンは鎮痛・解熱作用を有しており、NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、その作用は弱く抗炎症作用はほとんどありません。
アセトアミノフェンの作用機序は、中枢神経におけるCOX阻害と考えられていますが、詳細な機序は未だに解明されていません。
アセトアミノフェンには鎮痛・解熱作用はありますが、抗炎症作用はほとんどありません。現在考えられている機序は、中枢性COX阻害に加えてカンナビノイド受容体やセロトニンを介した下行性抑制系の賦活化です。痛みのシグナルは末梢神経終末→脊髄→脳へと上行性に伝達されますが、逆に中枢側である脳から脊髄へと下行性に痛みを抑制するシグナルを伝達する経路があります。この経路のことを下行性抑制系と呼びます。アセトアミノフェンはこの下行性抑制系を活性化することで鎮痛効果をもたらすと推定されています。アセトアミノフェンの副作用として肝機能障害には注意が必要です。

参考文献・参考画像

日本ペインクリニック学会https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keywho.html
1)
麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン第3版(2012年・日本麻酔科学会)
2)
痛みの考え方―しくみ・何を・どう効かす―丸山一男・著(2014年・南江堂)
3)
Wall and Melzack’s Textbook of Pain, 6th Ed, McMahon SB, et al. Ed(2013, Elsevier)

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