見出し画像

THE ACT WE ACTレコーディング記 前編2021.8/12〜8/15

今から2年前、2021年夏にTHE ACT WE ACTは3枚目のアルバムの制作をしました。
今回は前作のアルバムのミックスとマスタリングをしていただいた君島結さん(ツバメスタジオ)にレコーディングからお願いし、お盆休みと9月の土日休みを利用して東京にてレコーディングしました(初日、2日目は門天ホールで、3日目、4日目はツバメスタジオにて録音、9/11,12にも再びツバメスタジオを訪れ録音とミックス作業をしました)。
アルバムの制作自体が6,7年ぶりでしたし、コロナ以降メンバーで遠征したり寝食を共にするのもかなり久しぶりだったのですが、感染者が激増した東京オリンピック後の独特な空気の中、緊張感がありつつも楽しかったので日替わりでメンバーにレコーディング記を書いてもらいました。
こちらではまず前編として8/12〜15の間に行ったレコーディングについて書かれています。

このレコーディング記は2021年に書かれたもので、時系列等は当時のまま掲載しています。
アルバム「フリッカー」のリリースに合わせて公開しました。

THE ACT WE ACT メンバー
・高木啓伍(Drums)
・大津直樹(Drums,Percussion,Chorus)
・金子哲(Bass,Percussion,Chorus)
・五味秀明(Vocal,Trumpet,Percussion)
・横山匠(Guitar,Percussion,Electronics, Sound collage)

8/12(木) レコーディング初日@門天ホール/高木啓伍(Dr)


朝6:30 車に乗って、大津くんの家に向かう。
今日からレコーディングが始まる。車2台に分かれて愛知から東京に向かうところ。
1台は、ごみちゃん(Vo)とてっちゃん(Ba)と匠くん(Gt)、もう1台に、大津くん(Dr,Per)と僕(Dr)の2台。
今回のレコーディングでは、アルバム用に全9曲を録る予定ですが、僕が参加するのは3曲です。
というのも、約1年前に2人目の子どもが産まれて、その前後の期間はバンドを休んでいました。休んでる間にレコーディングの話が持ち上がった時に、自分のせいでバンドが動けないのは嫌だったので、僕は可能な限りで参加することにして、3曲参加することになりました。
僕にとってもバンドにとっても、それが良い選択だったと思います。

大津くんの家が見えてきて、すでに外で待っている姿が見えました。
大津くんは、車に乗るとポケットからミンティアを出して、運転席と助手席の間の小物入れのとこに、「良かったら」と言って置いてくれた。 
こういう事って年を重ねる毎にできる人とできない人に分かれていく気がします。
東京までは4時間くらいでしたが、途中運転を代わってもらったりしながら、お互いの生活とか、家庭とか、仕事とか、音楽のこととか、たくさん話をしてたらあっという間に東京・両国の門天ホールに着きました。
これまでバンドを一緒にやっていても、2人でじっくり話す機会はあまりなかったので、大津くんのことがたくさん知れて面白かった。
大津くんは話をするのも聞くのも上手だった。他人に寄り添える人だと思った。いいドラマーってそういうことだと思う。
門天ホールで2台が合流した時、ごみちゃんに車中の過ごし方を聞かれて、ずっと話してたよって言ったら、「音楽もかけずにずっと話してたの?」って笑ってた。
俺からしたら、ごみちゃんは車中いつも必ず音楽をかけてて、どうかしてると思っている。

大津くん

11:00 ごみちゃんと匠くんはギターアンプを選びにツバメスタジオへ。
てっちゃん、大津くん、僕の3人は、歩いて10分くらいのとこにあるお店にみんなのカツ弁当を買いに向かった。
歩いている時に2人がTシャツ短パンでとてもラフな格好をしているのが気になった。
特にてっちゃんはビーチサンダルを履いて、しまむらで買った寿司のキャラクターのTシャツを着ていた。
一方僕は、レコーディングという非日常に、なるべく普段と同じ服のがいいかと思って、仕事(農作業)で着ているカーゴパンツや仕事に履いていっている靴を履いていた。
他にもハーパンとか、違う生地のTシャツとか気分転換のための着替えも用意していた。その話をしたら2人とも全然そんなこと気にしていなかった。
そもそもてっちゃんは、ライブもレコーディングも全く緊張しないそうだ。俺からしたら異常者だ。
僕はライブ、ましてやレコーディングなんて、日が近づいてくるにつれ日に日に緊張してしまっている。色んなことに気を取られている僕は、てっちゃんのちょっとやそっとでは動じないメンタルをうらやましく思っている。
僕は、そもそも昼ご飯も事前に買っておいたバナナと栄養ゼリーで済ませようとしていた。お腹いっぱいになると、眠くなって集中できなくなりそうだし、コロナもあって出歩けないだろうと、チョコとか、ラムネとか、歯ブラシとか、コーヒーとか色々買って準備していた。
だから本当はカツ弁当なんて要らなかった。だけど、これからの共同作業の前にはみんなと同じものを食べることの方が大事な儀式だと思って、カツ弁当を食べた。でもやっぱりお腹いっぱいになるのが嫌なので、お米は半分にした。

てっちゃん

13:00~15:00の間に機材の搬入やセッティング、サウンドチェックなどをやっていた。その間に現在東京に住んでいる元メンバーのサトゥ(Sax)が遊びに来ていた。
久しぶりの再会に、緊張していた気分が少し和らいだ。
サトゥは、相変わらずだ。録音の合間にスナック菓子の袋を片手に食べながら、スタジオ内をウロウロして、僕の隣にいる大津くんにその袋を差し出して「いる?」と声をかけてました。
サトゥなりにみんなの緊張をほぐすためかもしれませんが、緊迫した空気の中でも存在感を出していました。そういう素質って、一般的に空気を読むとか読まないと関係なく、表に出る人に必要な素質なんだと思います。
その対照的に君島さん(エンジニア)は、存在感を最小限にしているように見えました。一見寡黙な印象だけど、機材にしろ録り方にしろ(僕は全然詳しくないですが)「見えないところ」は、とてもおしゃべりな印象を受けました。
レコーディングの間は、ほぼ君島さんから発言や提案することはなかったと思います。
僕は4歳と1歳の子どもがいますが、子どもに口を挟みたくなる場面が毎日あります。君島さんのようにバンドをじっと見守って、聞かれたときにどういう音を出したいのかを一緒に考えられるような、そんな父親になりたいと思いました。

サトゥ(写真中央)
君島さん(写真左)

16:00頃から僕が参加する3曲「呼吸」「振動」「反対方向」の順にレコーディングが始まり、1曲につき3テイクくらい録って、19:00頃には無事取り終えました。
録り終えたら達成感でホッとしました。その後ごみちゃんがUberでカレーの注文を取りまとめてくれて、夕食となりました。
今回のレコーディングでは、そういう段取りをごみちゃんが率先してやってくれました。
全日程のスケジュールを1時間単位で決めてエクセルで作ってくれたり、宿泊とか抗原検査キットの手配とか。とてもありがたかったです。
ごみちゃんがバンドや音楽が本当に好きだからやれるのだと思いますが、それだけやれる人って世の中に多くはいないんじゃないですかね。少なくとも僕の周りでこれだけやれる人はいない。
しばらくしてカレーが届き、袋を開けると、どれがなんのカレーなのか分かりづらかったり、頼んでいないサラダが付いてたり、極めつけにはスプーンが入ってませんでした。
緊張から解放された僕は、まったりとした気分で夕食を食べました。(みんなは、この後2曲録る予定で、実際は3曲録り終えました。)

ごみちゃん(写真左)

僕が参加するのはここまでなので、自分の機材や荷物をまとめて、車に運ぼうとしていると匠くんが「手伝いましょうか?」と声をかけてきてくれた。
匠くんに少し荷物を持ってもらい2人でコインパーキングまで歩いていた。匠くんとは東京までも違う車だったし、着いてからも機材搬入から、セッティング、サウンドチェック、本番まで割とテンポよくスケジュールをこなしていたので、2人でゆっくり会話するのは今日のところ初めてだった。
正直、匠くんには少し後ろめたさがあった。
先日のスタジオ練習の時、ごみちゃんがサトゥからレコーディングに遊びに来たいというのと、その際サックスを持ってっていい?みたいな連絡が来たけど、どうする?みたいな話になった時のことだった。
僕はとりあえず持ってきてもらえばいいんじゃない?と言った。けど、ごみちゃんと匠くんが今回のレコーディングは5人で録りたいってことでサックスは断ることになった。
ここ2年弱の間、バンドに参加できずにいて、僕はバンドやメンバーに対してとても鈍感になっていたことに気づきました。
現メンバーで初めてのレコーディングになるのに、元メンバーがゲスト参加することは、新メンバーが加わった新しい形を見せるのに水を差すことになる。無配慮な自分の発言にショックとともに、そういった後ろめたさが匠くんに対してありました。
そういう想いもあって匠くんに、「(荷物運ぶのを)手伝いましょうか?」って言われた時、その想いを伝えて、受け止めてくれた。
匠くんは優しさと大きな器を持っている。

匠くん

その後荷物を積んだ車の横で、サトゥと少し話して、一人東京を出発して自宅の愛知に向かいました。
車中は5時間ひたすら眠気に耐えて、深夜2時に家族の待つ家に着きました。


8/13(金) レコーディング2日目@門天ホール/大津直樹(Dr,Per,Cho)

一日目夜〜二日目

これを書いているのが9月で、今は小雨が降っている。
台風が日本の西の方にあり、この後の進路予測では偏西風に吹かれて日本にやってくるらしい。まだ夏の気配は残りつつもやけに涼しい。レコーディングの最中は夏の真っ盛りだというのにこんな気温だった。

さて二日目の日記ということだけど、一日目の日記を担当するけいご君は先日自分のパートを録り終えて愛知へ帰っていったので、一日目の8/12(木)の夜のことを少し書いておく。

残った私たちは車を30分ほど走らせる。このレコーディング期間中、FUCKERこと谷ぐちさんのお宅に泊まらせていただく事になっていた。
てっちゃんの車で両国を出る。程なくして現れるスカイツリーを見やる。でかい造形。私たちは緊急事態宣言下の東京の底を滑っていた。

________________


谷ぐち家①
五味君によると、谷ぐち家の近所にあるコンビニで待ち合わせをするらしい。谷ぐちさんはどうやらお風呂に入っていて、少し待って欲しいとの事。
コンビニで待っていると暗闇の向こうからママチャリに乗った体格のいい男性が現れて、絶対に谷ぐちさんだと遠目にも確信する。

イメージ。さすがにギターは持っていなかった
(メテオエブリデイPVより)

コインパーキングに案内するから、着いてきて!と、颯爽と自転車を漕ぎ出す谷ぐちさんを追って私たちは車を走らせた。しかし着いたパーキングは「満」の文字が。
「お盆だからかな〜…よし!もう一回着いてきて!」
と夏の夜に自転車を走らせる谷ぐちさん。この時点でお風呂あがりに全力で私たちを誘導したため汗に濡れていた事だろう。
パーキングに着いて、じゃあここにしようか〜、とメンバーと話していると、「値段が高いな…。もう一回チャンスちょうだい!」と谷ぐちさんは言うが早いがスプリントした。追わないと見失う。
もっと安い場所を、と誰であろう私たちのために爆走する背中を見ると、なぜここまでしてくれるんだろうか…泣と、お風呂もう一回入るんだろうか…泣、とこの人のやる音楽を好きで良かったな…泣と心から思った。その後無事駐車。

谷ぐち家について居間でささやかな打ち上げ。静かにビールを飲んだ。たまたまついていたテレビではTV千鳥がやっていた気がする。愛知と放送日が違うんだなと思って、旅に出てる実感が湧いた。
部屋に戻る。メンバー四人で並んで横になり、ブラックフラッグのロゴのように寝た。雨が降ってきていて、窓を開けると涼しかった。降り込むかもしれないけど大丈夫だろうか、そんなことを考えながらも心地良さにそのまま眠ってしまった。





________________

レコーディング二日目。
予想外の涼しさと、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、といういびきなのかうめきなのか判然としない声で起きる。なんだなんだと思って見回すと五味君だった。
様々なストレスに苛まれているんだろうか…。と心配になります。
同じく目覚めた匠君(てっちゃんは爆睡していた。眠る力が人並み外れているらしい)と朝のコンビニまで散歩。やはり雨が降っていた。
コンビニでホットコーヒーとシュークリームを購入。匠君はと言うと朝からカップヌードルを買っていた。
温かいものを腹に入れたかった、と匠くん談。買っている商品のジャンクさの割には健康的な理由をとうとうと真面目に述べるがそういうところが匠君らしいと思う。

レコーディングに出かける時は共鳴君が見送ってくれた。
「頑張ってください」とまで言ってくれた。僕が中学生だったらこんなことを言って見ず知らずのお客を見送れるだろうか?
二日目も門天ホールでのレコーディングだが、そこに行くまでに亀有駅に寄ることになった。
中々近くまで寄ることもないので、せっかくだからとこち亀の像を観に行くのだ。

両津勘吉像
両津勘吉像とてっちゃん
記念撮影。
麗子像の顔に傘をかぶす痛恨のミスをする私
(撮影五味君)

満喫した私たちは速攻で亀有を後にした。
途中コンビニでクラブハウスサンドとレッドブルを購入。門天ホールへ。

門天ホール。落ち着く木の香りに満ちている

レコーディングには自分の姿がそのまま写った。うまくいかない時に迷っている様がそのまま現れてしまう。
そんな風に考えていたし、考えていたというよりは実感していたし、実感していたというよりは確かめていた。
心と体がばらばらの時は言葉でさえ舌がもつれてつかえる。わからないままの自分であることは事実だしどうしようもないけど、居直りでもなくごまかすでもなく覚悟を決めることが大切で、だから考え中の自分がそこにいてもいいよなと思う。最後は無事に?録音ができて本当にホッとした。
ちなみにけいご君は演奏が上手くいかずハマった時のために着替えを用意してきていたらしい。
気分を変えるためとのことで感心した。真似してみればよかったなと思う。

遅めのお昼ご飯。豆花(トウファ)なめの五味君

お昼ご飯はエンジニア君島さんのおすすめで台湾料理(店名:家豆花)をテイクアウト。豆花だけではなく、鶏肉飯(チーロウハン)も食べた。
揚げ玉葱が入っていてパンチもあるけど、鶏肉があっさりしていてどれだけでも食べたくなるからSサイズにしたのを少し後悔した。セットの大根のスープが滋味深くて美味しかった。

浅草橋。屋形船とてっちゃん

この日、ツバメスタジオから持ってきた機材を、門天ホールから元に戻すという重要なミッションがあった。
夕方から降り出した雨が止むことを願ったが残念ながら小降り。
まだ少し残ったパーカッションパートを録り、また匠君がギターを重ねる作業に入ったため、先に片付けられる機材を五味君とてっちゃんが中心となり撤収しつつの録音となった。
門天⇆ツバメスタジオを必死で往復する二人に、めちゃデカくて重いミキサーを運んでもらおうと、「次ミキサーお願いします〜!」と軽い気持ちでラインを送ったところ、戸愚呂弟が闘技場を担いでくるコマが送られてきて必死さと殺気が伝わってきた。

________________

谷ぐち家②

全て搬出を終えて、少しのお酒とおつまみを買って谷ぐち家に帰った。
帰った私たちにゆかりさんがタコライスを作ってくれていて、ありがたくがっついた。本当に美味しかった。
緊急事態宣言中だから、夜はほとんどお店がやっていないのできっと食べて帰れないだろうという心遣いに感動した。
こういう家族なんだなと思ったし、自分もこうありたい。

お風呂をいただいて、着ていた服をビニール袋に入れて圧縮すると二日分の体臭が漏れ出して、帰って洗濯したいなと、もう明日帰るんかーがせめぎ合った。
透明な時間も曖昧な時間も36歳になった私にとってはもう光の速さで進んでいく。そういう変化を感じるようになったし変わっていく自分を楽しみたいと思う。
すぐに睡魔が襲ってきて眠った。五味君も匠君も先に寝入っていたが、てっちゃんだけは谷ぐち家のリビングで一人いいちこを朝三時まで呑んでいたらしくて、化け物じみた体力とお酒への執念に後日改めて驚嘆したし、お体を大切にねと思った。


8月14日(土)レコーディング3日目@ツバメスタジオ/金子哲(Ba,Per,Cho)


3日目の日記を託され、案の定下書き提出が1番最後になった自分は悶絶しながらこれを書いています。

レコーディング3日目は1.2日目に録った物にそれぞれ重ねてく作業がメインで、既に完璧なベースプレイを繰り出していた自分はコーラス録りのみでした。
そんな情報量の中、みんなの素晴らしい下書きを見つつ、この続きを書く訳です。

scene1:本当にそれ食べたいか?
scene2:わかっちゃいない
scene3:完全同意
scene4:バンド内ダイバーシティ

scene1:本当にそれ食べたいか?
今回、基本的な流れが昼過ぎ〜夜レコーディングだったので、「昼飯」「レコーディング中の軽食※夜飯じゃない」は重要な要素、レコーディングの一部と言っても過言では無かった。

実は前日深夜から兆候があって、「明日昼飯どうする?」から、あーでもない・こーでもないってやり取りがあって「羊の脳味噌が食べれる店」ってので決着した。
※最近の五味ちゃんは食にうるさい

結局、時間がどうだの予約がどうだの準備がどうだので当日食べられなかったんだけど、今思うと、

「それ本当に食べたかった?」

って。「脳味噌味」が「思い出味」の座を狙っているなら100年早い。
カレーランチはとても美味しかった。



scene2:わかっちゃいない
コーラスは3日目の早い内に録ってしまった。

・全員一発コーラス
・単独コーラス

ケイゴ以外の全員、声を録ってるんだけど、みんな「コーラスは大丈夫」みたいなこと言ってて、みんな自信あるなーとか思ってた。

自分の単独コーラスの時は、みんなブースの外で聴きながらニヤニヤしてた。
全員で録ってる時にはそれなりに緊張した顔してたくせに!

けど、みんな分かっちゃいない。
一人きりになり、全力を解放する俺のコーラス力を!そして、逆の立場ならあんな緩い茶化し方を俺ならしないことを!

単独コーラス録音前


scene3:完全同意
ケイゴも書いてたけど大津君は気配りが出来るいい男なんです。

この日はほとんどが匠くんのギター重ねだったのでごみちゃん、大津君、自分は手持ち無沙汰で基本思い思いの過ごし方をしてました。

そんな中、大津君はみんな用にお菓子を買ってきてたり、絵しりとりで和ませたり、挙句の果てには君島さんに感謝のメモまでしたためる様な人なのです。

以前、バンド内で「自分の写真を逆の性別に加工する」ってのをキャッキャ言いながらやっていたのですが、最終的にモテるのは今のとこ大津君ということでいいんじゃないかと思います。

自分の仕上がりはこんなでした。


scene4:バンド内ダイバーシティ
無事3日目も終わり、大津君、匠くん、自分は愛知への帰路に着きます。
北上する台風に真っ向から立ち向かい、運転もままならない嵐の中、ただひたすらSAで嵐が過ぎ去るのを待つなんて時間もあったり。

車中の会話だったり、流す音楽だったりってのはそれぞれが独立してくほど、考えたり、見てる事、今聴いてる音楽がバラバラになる。
新鮮で刺激的でもあるし、共通項を探して共有したくもなる。

結局今回のそれは「匠くんの懐メロDJ」がそれでした。
現在進行形で共有してるバンドの事とかなら分かるけど、別に一緒に聴いた事は無い懐メロで一体感が出るのは不思議なもんです。
過ごした時代なんてものにそれぞれが思い入れがあるんでしょうか?

それもあるんだろうけど、レコーディングだったり、嵐の中のドライブだったりっていう。

そう、それは非日常のせい。

深夜に帰宅後、収まりの付かなかった自分はお土産用の牛タンを開けて、心ゆくまで酒を飲んだ。2個お土産買っといて本当に良かった。


おまけ
これを書いてるのはレコーディングが終わってから結構時間が経っていて、その間にアルバムタイトルやら、曲順やら、素材用写真撮りやらいろんな事が進んでます。

自分がいい加減な性格なのもあるけど、始まったり、終わったら、続いたりってのは数が多けりゃ多いほど楽しいなーと思います。

写真:三浦知也さん



8/15(日) レコーディング4日目@ツバメスタジオ/五味秀明(Vo,Tp,Per)


東京滞在4日目は自分だけが残り、ボーカルとトランペットのレコーディング。
前日の夜は翌日にライブを控えたDEATHRO君も一緒に谷ぐちさんの家に泊まり、リビングで谷ぐちさんを交えた3人で色々話していたのですが、DEATHRO君から聞いた某バンドのボーカリストの方の凄まじいエピソードや、谷ぐちさんから聞いたU.G MANの話がめちゃくちゃ面白くて死ぬ程笑った。
あとGAUZEに対する2人の考察も興味深かったです。
この2人の関係性を見ていると、less than TVイズムを一番継承しているのはやっぱりDEATHRO君だよなと思います。
AM1時頃、谷ぐちさんが翌日のライブの練習をしている音をBGMに就寝したのですが、途中でギターの音が聴こえなくなったと思ったら、案の定ギターを弾きながら寝落ちしていたそうです。

DEATHRO君の朝は早い。
確か6時くらいにはもう起きていたような気がします。
昼からのライブという事もあり、シャワーやメイクの時間を計算してとの事でした。
確かに夜型というより朝に強そうなイメージはあります。
この日は小岩BUSHBASHで夕方から谷ぐちさんが主催でFUCKERのライブ、ゆかりさんがDEATHRO君のバックバンドとして同じくBUSHBASHで昼からライブという事もあり、MOTHER FUCKER(谷ぐちさん一家とless than TVのドキュメンタリー映画)で観たような慌ただしい家庭の光景が朝からそこにありました。

この日のBUSHBASHのDEATHRO君企画と谷ぐちさん企画はどちらとも投げ銭制で収益はBUSHBASHに渡されたそうです。
ステージの前に初詣で賽銭を投げ入れるようなスペースを設置し、お客さんはそこに投げ銭をするスタイル。
投げ銭する為の両替用の小銭を慌ただしく準備しながら、谷ぐちさんが今回の企画にまつわる概要(金銭面の工面の仕方等)を何気なく話してくれたのですが、それが自分の想像の斜め上をいく内容でめちゃくちゃ食らってしまいました。
谷ぐちさんを見ていると、人のためにこんなに楽しそうに動ける人もなかなかいないよなと思います。
改めてマジで半端ない人だなと実感しました。

発言や行動の対象が自分に向けられたものでなかったり、自分が直接関与していなくても、見たり聞いたりした朧げに残っている記憶が後々の自分の行動に影響している事って結構あるような気がします。
支援活動や募金にしろ、まとまった金額等を渡す事はもちろん重要なのですが、その行為を見ている人がどこかに誰かしらいる、という事も同じくらい重要なのではと思います(そういった事が可視化されやすくなったのはSNSの良い点の一つだと思います)。
一つの行動が一次的な影響だけでなく、間接的に二次的、三次的な影響を与える事がある。
そういった意味でも行動とそれに伴う周囲への影響について近年色々と考える事が多かったのですが、今回BUSHBASHで行われた谷ぐちさんやDEATHRO君の企画も自分は観に行く事ができなかったけど記憶の中にはしっかりと残りました。
こうやってその場に居合わす事ができなくても心が動いたのなら、それは体験と言って良いのでは、と最近は思います。

谷ぐちさん達が準備している間にDEATHRO君が最近チェックしているという中南米の現行のパンク/ハードコアバンドを色々教えてくれました。
相変わらず掘ってますね…勉強になります。

DEATHRO君が教えてくれたバンドの一つ、LOS BLOBS。
他にもPUNK!っていうバンド(もしくはコンピの名前だったかな…)もかっこよかった記憶があるけど、かなり検索しにくい名前なので詳細分からず…。

谷ぐちさん一家とDEATHRO君を見送って(というか見送られてというか)からツバメスタジオへ。
レコーディング4日目という事で若干感じる疲労感に少し不安になる。
レコーディングはこの日で一旦区切り。
状況的にも金銭的にも東京にそう何度も来れる訳ではないので、できれば1日でボーカルとトランペットを全て録音しておきたい、何とか乗り越えられたらと思っていたら、君島さんが
「ボーカルのレコーディングにはお湯と蜂蜜が良いですよ」
と助言してくれ、用意してくれました。
蜂蜜を舐め、お湯を口に含むと少し喉の通りが良くなった気がしてきて、そのままブースに入りレコーディング。
前日にもメンバーが帰った後に2曲程ボーカルを録ったのですが、久々のレコーディングだったというのと、演奏がかなり良い感じだった事もあり、これは良い作品にしなくてはと力が入り過ぎて声が空回ってる気がしたので、できるだけリラックスした状態で録音できるよう心がけた。
が、後で聴くと、落ち着いたテンションの音楽をやりたい訳ではないし、少し空回ってるくらいの方が自分らしいのではと思ったり、でも荒すぎるのもちょっと…と思ったり…難しいですね。
いつまで経っても慣れないです。
レコーディングの合間合間にお湯を飲んで蜂蜜を舐めながら少しずつ録音し、夜には何とか全曲録り終える事ができました。
お湯と蜂蜜良いですよ。1日でとりあえずボーカルを全て録れたのはこのセットのおかげです。
トランペットの録音では、今まで自分が吹いてきたフレーズの一部の音がズレている事が判明。
自分がトランペットを始めてから最初にできた曲のフレーズだったので、おそらくよく分かっていない状態で作ったんだと思います。
トランペットの事は実際未だによく分かっていませんが…。

トランペットを吹くようになってから簡単な曲やフレーズなんて無いんだなと思うようになった。
アルバム収録曲にトランペットで同じ1音を繰り返して吹く曲があるのですが、1音1音同じ音を繰り返すだけなのだけど毎回同じように綺麗な音を出すのは実は難しかったりする。
ベースのルート弾きやワンコードの曲にも同じ事が言えると思います。
得意な曲はあっても簡単な曲などない。
音楽はナメていると痛い目に合う。
と、普段からそんな事を考えているようなストイックな人間ではないのでライブやレコーディングの度に痛感しています…。

とりあえず一通りアルバム収録曲を録り終えた事に安堵し、夜行バスの出発までまだ時間があったので小岩BUSHBASHへ。
もう既にライブは終わっていましたが、帰る準備をしている谷ぐちさんとDEATHRO君に会う事はできました。
この時点でおそらく9月にまたミックスや録り直し等でツバメスタジオに行く事は何となく決まっていたので、谷ぐちさんに
「本当に申し訳ないんですけど…9/11にまたミックスで東京に来ることになりそうなんですが…また泊まらせていただけないでしょうか…?」
といった感じでお願いさせていただくと、
「良いよ!あ、ちょっと待って!9/11…この日リミエキで名古屋でライブだー…でも多分良いよ!ゆかりにも相談するけど…何とかする、また連絡して!」
みたいな感じで応えてくれました…。
え、谷ぐちさん達が家にいないのに…!?
そういう方なのです。

DEATHRO君とその日のライブの様子について等の話をしていると、昼から自らの主催でライブをしてかなり疲れているだろうに、
「東京駅まで車で送っていこうか?」と気遣ってくれました。
この人もそういう人なのです。

BUSHBASHはこれまでTHE ACT WE ACTでたくさんライブをやらせてもらい(東京のライブハウスの中では一番来ていると思う)、店長の柿沼さんともかなり長い付き合いになるのですが、コロナ以降しばらく行けていませんでした。
久々に柿沼さんともゆっくり話せて、元気そうには見えたけどきっと今も日々色々ハードな状況を試行錯誤しながら生き抜いているのだと思います。
自分にとっても思い入れのあるライブハウスなので、アルバムがリリースされたらまたライブしに行きたいです。

帰りの名古屋までの夜行バスは予想はしてたけど物凄い人でほぼ満員でした。チケット2000円でしたからね…。
東京滞在中は食事は全てテイクアウトかUber eatsを利用し、できるだけ人が多い場所を避けて自分なりに感染しないように気をつけていましたが、「最後の最後にこの状況かー」と思いつつ、シートに座り録音した曲をイヤホンで聴きながら気づいたら眠っていました。

THE ACT WE ACTレコーディング記 後編へ続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?