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“催眠”(Gipnoza)から目覚め、世界を剥がしたら

 少し考える余裕が出てきたので、ちょっと考えてみたいと思ったことを書いてみる。あくまで今の私を投影した解釈であることを断っておく。

2013年に発売された核P-MODELのアルバム【гипноза (Gipnoza)】。収録曲は以下の通り。

01: гипноза (Gipnoza)
02: それ行け!Halycon
03: 排時光
04: 白く巨大で
05: Dμ34=不死
06: Dr.древние (Dr.Drevniye)
07: Parallel Kozak
08: Alarm
09: 109号区の氾濫
10: Timelineの東

アルバムの冒頭は、≪アシュオン≫と呼ばれる物質(としておく)と、その“培養中”に起こった2011年3月11日の東日本大震災に関する物語から始まっている。私の語彙力ではこの物語の本質を理解することは叶わないが、このアルバムを通して、“現実”として起こったこの困難と、生きるということの本質ー“催眠”状態にあったヒト科の可能性ーについてを象っていると思う。

01: гипноза (Gipnoza)
  真っ暗な中で、テレビのノイズが付いた中から聞こえてくるような、歪んだサウンドが、まさに今“催眠”がかかった今を訴えているよう。カタストロフィに襲われたこの地は現実なのか。

02: それ行け!Halycon
  かつての鍵盤奏者が参加した楽曲。走り去るシンセサイザーの音が、Halyconの作用なのか本質なのか、この甘いジャンクなキャンディーに似た音がきっとそのGipnozaを解く鍵なのだと訴えてる。

03: 排時光
「Good Mornig Human 汝光なり」 時をも排するその光は、一見不安定に見えて、実は規則的に回る影に見る“換気扇”なのかもしれない。Gipnozaにかけられた世界を剥がした後、キッチンやオフィスに、本当の光をもたらすのはきっとヒト科なのだ。

04: 白く巨大で
  タイトルに相応しい、聞くたびこう大きな包まれるようなドームがあって、その中ですべてが無に帰して、そして何かが生まれる。宇宙の中にある生命活動は、きっとここに始まりも終わりも属している。塵になり、洗われた命はまたここ刹那の夢を見る。

05: Dμ34=不死
  何か大きな白いドームに包まれ安心しきっていたのもつかの間、無に帰せなかった不死たちが不穏に蠢いている。目が回るほどの歪んだサウンドとテンポで、奈落へ。

06: Dr.древние (Dr.Drevniye)
  奈落はもっと不穏かと思いきや、“ドクター”がすべてを見渡していた。それは摂理に似た何かを包括している。ドクターなら無に帰せなかった蠢く不死を、導くことができるのかもしれない。

07: Parallel Kozak 
  リリースされた不死が疾走感を以て蘇った。織りなす“声”と変則的なリズムが、生と死のような対極や平行を加速器でぶつけるべく走り、ブレーキをかけ衝突した結果生まれたものは。

08: Alarm
  手に入れた生へのきっかけを掴みかけると、それは本物か、頭の中で反射的になるアラーム。キミの本物はどこへ行った。Halyconがあれば本物を見つけられるのではなかったのか。

09: 109号区の氾濫
  不可逆として起こったその氾濫は、逃げ惑う人を生み、とめどないエントロピーが押し寄せる。カタストロフィはこの世界の現実で、無かったことになどできない。それでもなお、これは現実だと迫って何かを探られまいとする世界を剥がすことはできるのか。

10: Timelineの東
  日は必ず希望の方角から上る。世界にどんなことが起こっても。だからこそ、死は生を、必ず循環しどこかで会うことができる。東を目指して、威光をたどれば、きっとそれは宇宙にあるキミにも会うことができる。希望の光はもうキミの手に。

  現実とは考えたくないような、目を背けたくなるような物事に直面し、初めてその催眠を知る。そして、その背けたい物事から本質を見出し、生きることをヒトは繰り返してきた。これまでも、これからもそうして命を紡いできた。唯一のキミも同じくしてその営みから生まれ、その循環の一員となる。死は決して無ではなく、有限の命に光を当て、宇宙の中にそれを見ることができる。

  大きな意味でのヒト科への讃歌だ。生きること、生き続けていくこと、唯一のキミが希望の方角へ歩みを進めていくよう、讃えているのだ。

希望の方角 道を東へ。

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