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【in my book_#16】 吉成真由美 『知の逆転』

「有名な本だけれど、何を言っているのかわからない」

そう感じることはないだろうか?

僕もその一人で、学生の頃にニーチェやカントをバイトの休憩時間に読んでみても、通学の時に「罪と罰」を読んでみても、今覚えているのは、そのアカデミックでカッコいいタイトルだけだ。

しかし、そこで終わらないのが「知」を求める人とそうでない人のわかれ道だと思う。

ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』という世界的ベストセラーになった著書がある。

「世界的ベストセラーなんだから、読んでみるか」

なんて、軽い気持ちで読んでみても理解できない。しかも上下巻で疲れる。

「世界的ベストセラーですら理解できないのか。。。自分はダメなんじゃないか?」

学生の頃は、ついつい、そんなことを考えてしまう。
けれど、その必要はなかったのだ。

本書『知の逆転』は世界的に有名な6人の”人類の叡智”にインタビューをする内容だ。
インタビュアーの吉成真由美さんの知のポテンシャルもハンパないので、YouTubeで例えるところの「神々の遊びシリーズ」のようである。

人物像も突き抜けているのだが、インタビューということもあり、話の内容はとてもわかりやすい。

そのトップバッターが「ジャレド・ダイアモンド」。
意外と気さくで、話もわかりやすく、なるほどなと感心した。
一貫して主張していることの骨格が理解できたので、今読めば、あの世界的ベストセラーも理解できる気がしている。

続いて、言語学の授業で「この人とスティーブン・ピンカーだけは忘れないでください!!」と脳内をハックされた「ノーム・チョムスキー」。

おまけに「このチョムスキーはただもんじゃないんですよ。。。実は、、、政治活動もバリバリやってます!!」みたいなことを教授に植え付けられているので、インタビューを読んで「あっ、ほんとだww」と思わずニヤついてしまった。教授もよく色んなことを知っているもんだなあと。

そして、最後にジェームズ・ワトソン。
個人的には一番面白いインタビューだった。

特に「個人を尊重するということについて」という項目は、日頃から考えていたことが具体化された気がして本書のなかで一番の共感ポイントだった。

*文明の大きな進歩は個人が生み出す。しかし、組織が大きくなると個人は死んでしまう

*サイエンス(知の探求も含め)とは社交的なもので、色々な人とかかわり、様々な経験をしてアイディアを交換するものである。だから「専門外だから必要ない」とか「来年役立つかわからないものは必要ない」とか近い将来しか考えられないようでは、その分野のテクニシャンしか産出できない。

簡単に言ってしまえば、「知を探求する」ことを求めるならば、情熱も努力も競争も社交性も必要で、勉強ができればいいとか、自分に関係があることだけすればいいとか、そういう視野の狭い考え方では大成しない。諸君!!人間力を極めよ!!ということだと思う。

そして、最後におもしろいオチがあって、インタビューアの吉成さんがジェームズ・ワトソンに

「では、そういう人間になるためにはどうしたらいいのですか?」

と質問すると、超正直者のワトソンが

「そういうことができるのは生まれつきですね。わたしは例外です」

とバッサリ切り倒して、超人と凡人との差を見せつけられるのでした。

面白いと思った方は、オススメの本です。
860円で生まれながらに知を探求する人間の、偉大なる足跡を感じることができます。

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