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【in my book_#13】 北野武 『新しい道徳』

全5章から構成される本作は総ページ数は200ほど。
読みやすい文章でサクサク読める。

内容は是非読んでいただくとして、個人的な感想として次の一例をあげたい。

「電車に優先席なんて必要ない。お年寄りに声をかけて席を譲ればいいのだから」

北野氏のいう道徳とは、つまりは何かしらルールにしばられるのではなく、自分で考えて、相手のことを考えて、自分で行動できる人間のことを道徳的だという。

つまり、電車で座っていて目の前に年寄りがいたら、気を利かして席を譲ればいいだけのことを、優先席とか、こうしましょう、ああしましょうと、わざわざ言わなきゃいけない社会は人間の道徳的な成熟度が低いということだ。

たしかに、そう思う。

私ごとではあるが、小学生の頃から一人で電車に乗って塾に通ったり、学生時代もずっと首都圏の電車やバスを利用していた身としては、こういう出来事が社会の成熟度をはかる基準になると身をもって知っている。

これまで何度も老人に席をゆずり、時に感謝され、時に年寄りあつかいするなと断られ、「親切で言ってやったのに!」みたいな気分になる時もあった。

そして、ふとした時にこう思うのだ。
「老人に席をゆずるのはいいことなのか?ゆずられたくない老人もいるよな」と。

都会というのはともかく人の数が多いから、その後、同じ老人に出会うこともないし、毎回毎回、自分を教育して考えて暮らすしかないのである。
そして、結果的にそうした些細な積み重ねが、その人の道徳を作っている。

本書の第4章のタイトルは「道徳は自分で作る」。
昔からババ(祖母)が「人のふり見て我がふり直せ」と言っていたので、年寄りの道徳も聞いておくもんだと思った。

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