日記:場所に紐づく記憶
暖かい。むしろ暑い。人間がちょうどいいと感じる温度の範囲は思いのほか狭くて、服装の調整だけではなかなか難しいよなと思う。その日の最高気温と最低気温の幅が、服を1枚着脱することで調整可能な値に収まっていなければ、暑いまたは寒いと感じるわけだ。難しい。ちょうどいい服装なんてわからない。いっそ夏や冬に振り切ってくれたほうが楽だったりするのかもしれない。そんなことないか。
いつも乗っている電車から見える小さな茂みがある。ふと、芹沢あさひさん(シャニマスというゲームに登場するアイドル)が虫を探していそうだなと思ったことがある。ちょうどゲームであさひが蝶を探してうろうろするというストーリーが公開された頃だったと思う。
それからというもの、その茂みを目にするたびに芹沢あさひさんのことを思い出すようになった。正確には、茂みを見て芹沢あさひさんのことを考えた自分を思い出すようになった。過去の思考回路が場所によって喚起される。たまにこういうことがある。どうしようもない記憶が別の何かと結びついてしまうことが。例えば子供の頃、ポケモンのファイアレッドをプレイしていて、「6のしま」というマップを攻略していたときに、テレビではちびまる子ちゃんが流れていたっけ、みたいな記憶がある。そんなことを覚えていても仕方ないのに。
たぶん他の人もこういうことがあるのではないか。口には出さないだけで。それは夢の話と同じで、自分にしか伝わらない感覚だから、話しても仕方ないし、聞いても忘れてしまっているのだと思う。自分の中で結びついているだけで、他の人からしてみればまったく脈絡の薄い事象どうしにすぎない。
でも、そういう記憶が個人の中にだけとどまっているのもなんだか勿体ない気がしてしまう。人の夢の話が聞きたいし、取るに足らない些細な記憶の話も聞きたい。そういう益体もない話ができると、他の人も自身の人生を生きているのだと感じる。それが無性に嬉しくなることがある。
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