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日記:りっかとろっか

「六花亭」という北海道の製菓店がある。マルセイバターサンド(とてもおいしい)が有名だろうか。このお店の読みは“ろっかてい”である。

はじめ自分は、“りっかてい”と読んでいた。おそらく原因は、「六花」と書いて“りっか”と読む同名のキャラクターの存在によるものだと思う。『中二病でも恋がしたい!』の小鳥遊六花や、『ドキドキ!プリキュア』の菱川六花、『SSSS.GRIDMAN』の宝多六花。自分が覚えているのはこの3人だけれど(アニメばっかりだ)、きっと他にもいることだろう。このように、同じ漢字で読みが複数存在するケースは割とある。


「世論」という読みは本来“せろん”であるようだが、“よろん”という読みも一般的になってきているとかなんとか。「重複」は“じゅうふく”だったり“ちょうふく”だったりする。「早急」は“そうきゅう”だったり“さっきゅう”だったりする。

これらは誤読から複数の読みに派生するパターンであるが、そうではなくて正しい読みが複数存在する場合もある。「上手」という単語には“じょうず”と読んで技巧の高さを表す場合と、“かみて”と読んで舞台の客席から見た右側を指す場合がある。

結構あるな。


地名でもある。「川内」は“せんだい”だったり“かわうち”だったり“こうち”だったりするらしい。全然分からん。


こういった、同じ表記で異なる読みをする言葉のことを同形異音語というらしい。

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調べていたら、「大豆生田」という姓には非常に多くの読みが存在するらしい。頭がおかしくなりそうだ。

そういえば、LINEなどで文章を書くとき、“だいぶ”という読みで「大分」という言葉を使いたくなった際に、“おおいた”に読めてしまうので平仮名に起こして使用することがある。字面をどう読むかで意味が変わってしまう言葉というのは、なんとなく避けたい気になってしまう。「こいつ急に大分県の話を始めた」と思われても悲しいし。


漢字特有の現象かといえばそうでもない。台湾のPCメーカー、「ASUS」の社名の読みも人によって派閥が別れたりする。一応、“エイスース”が公式らしい。

勿論、実在する企業なのでその人たちが発音するある種の正解は存在するのだけれど、それでも人は誤読をしてしまう。「Among Us」だって“アマンガス”だったり“アモングアス”だったりする。別に自分は英語話者ではないけれど、自然な発音としては前者なのかなとぼんやり思っていたら、公式回答によると後者であるという記事を目にした。

マジかよ。


表意文字の限界なのかもしれない。しかし英語のような表音文字にこのような問題が見られたりはしないのだろうかというと、少なくとも日本人がアルファベットを読もうとすると、「ASUS」だったり「Among  Us」だったりといった事象が起こりうる。英単語の発音を字面だけではうまく想像できなかったりするからだ。例えば自分は「Ajax」を“エイジャックス”と読むのか“アヤックス”と読むのかわからない。そしてこれらの発音はどちらも存在する。イギリス海軍の軍艦を指すときは“エイジャックス”だし、オランダのサッカークラブを指すときは“アヤックス”だ。アルファベットで字面だけ見るとどちらの言語か判断はつかない。単語だけ与えられるということはないので自ずと文脈で分かるのだろうけれど。どんな時だって「六花亭」は“ろっか”で、「小鳥遊六花」は”りっか“だ。


読み間違いは読まなければ間違うこともない。文面でのコミュニケーションであるなのら(同形異音語を取り違えるケースでもない限り)さしたる問題はない。発話する段になって、そのすれ違いは起こる。でもまあ、別にそれでもいいかなと思う。読み間違いの方が人口に膾炙して、いつしか正しくなってしまうこともある。言葉は変化していくものと言って仕舞えばそれまでだけれど、誰かが読み間違いをしたとしても鷹揚に構えていたいし、自分が読み間違いをしても許してほしいなと思う。それはきっと誰だって嵌る可能性のある落とし穴なのだ。

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