日記:振り返らない/振り返る

Amazonで注文した荷物が届いたので、中身を取り出した段ボールに今度は書籍を詰めていく。不要な本を整理しようと思い立ったためだ。昔読んでしばらく読み返していないものだったり、中途半端な集め方をしていたシリーズものをとりあえず入れてみる。普段部屋の掃除をしていると、「これはいつか読み返すかもな……」という想いが頭をよぎり、結果として一冊も本の整理は進まないのだが、そういう脳の回路を意図的に働かせないようにして、あくまで機械的に手を動かす。後ろは振り返らない。決して振りむいちゃいけないよ。トンネルを出るまではね。「あっ、この本初版だな……」とか気付いても気にしない。そもそも初版にどのような価値があるのかよくわかっていないし。熱狂的なファンを持つ作家の本とかであればまた話は変わってくるのかもしれないけれど、あいにくとそのような本は持ち合わせていない。

さて、一箱分を詰め終わったのでどれだけ部屋が片付いたかなと振り返ってみれば、先刻と全く変わらない光景がそこには広がっていた。本とは場所をとるもので、それは書籍による空間の圧迫に悩まされていたところであるから体感としてはちゃんとわかっていたはずなのだけれど、しかし「本を整理しようと自ら行動を起こした」という行為がすぐさま現状を解決してくれるのではないかという根拠のない希望を抱いていたから、変化のないビフォーアフターに少しやるせない心持ちになった。というかむしろ笑いがこぼれた。「こんなにたくさんの本に囲まれていたんだな」という実感が少し嬉しかった。それはそれとして整理は進めるのだけれど。「読みたくなったら電子書籍で買えばいいか」と割り切った瞬間、本を手放すことの郷愁が思い悩ませてくるということはなくなった。しばらく読み返していない本であるから、もう一度読みたくなるというタイミングも恐らくは遠いのではないかとは思っている。先日話をした知人は「その本を持ち続けるために占有する部屋の面積と、東京の土地面積の価値を比較して、大量の本を持っておくことのコストを勘案して整理する本を決めた」と言っていた。なるほど、と思った。そういうことが背中を押したのもあって、とりあえずは少しずつ部屋の整理を進めていこうかなと思う。



FGOの6周年配信を見ていた。今年は何日間かに渡って配信で実施するようで、今日の内容はこれまでのストーリーを振り返る朗読劇であった。これまでの周年記念イベントでも何度か実施されていたものだったかと思う。自分はFGOのイベントに足を運んだことがなかったので、聞くのは初めてだった。

配信であることを活かしたARの演出が盛り込まれていたり、そもそもゲーム内ではテキストのみだった数々の言葉に声が乗せられることによる興奮があり、非常に楽しかった。こういう機会でもないと以前のストーリーの振り返りをあまりしないというのもある。

FGOは膨大なボリュームの物語を強みとしているところがあるけれど、それは新規参入者にとってのハードルをあげたりもするし、既存のユーザーからしてみてもストーリーの振り返りに関しては少しずつ腰が重くなっていくということでもある。現在ストーリーが進行している第2部は、途中から読んでも楽しめるという物語にはあまりなっていないし、そもそもゲームの設計としてストーリーを進めなければ新しい章は読めないようになっている。これを解決するためにFGOはどのような方策を取ったかというと、進行に必要なAP(スタミナのようなもの)を減らすキャンペーンを行ったり、最新の章まで進めると聖晶石(いわゆるガチャを回すためのアイテム)を配布したりと、「とにかくストーリーを進めてくれ!!面白いから!!」といった声が聞こえるようなある種の力技のような戦略になっている。インタビューを読んだりするとゲームとしての体験を重視しているようなことを話されており、実際シナリオとそこからつながる戦闘の緊迫感やそれを乗り越えたときの達成感はFGOというゲームに欠くことのできない要素であると思う。ストーリーだけを切り離して読ませるということができないため、どうしても「とにかくゲームをやってくれ!!!」と言うしかない。

ただ、それがユーザーにとって負担の大きいことも確かである。特に戦闘と連なるゲーム体験の部分はもう一度体験しようにも再戦などはできない仕様になっており、それもあってストーリーの振り返りを難しくさせている。シナリオを読み返すことはできるのだが、それは戦闘部分を欠いたものとなってしまうので、どうしてもあの時の感動をそのまま、ということが難しい。コンシューマーゲームであればもう一度はじめからプレイすればいいのかもしれないが、キャラクターが蓄積されていくソーシャルゲームではそうもいかない。その一回性がゲームとしての旅のような体験を強めているという側面もあるが、そうした理由もあってFGOは再読が難しいという問題を孕んでいる。


上記は6周年イベントの一環で行われる、これまでのFGOを振り返るクイズの企画の練習問題がTwitterで投稿されたときのものなのだけれど、アンケートによるユーザーの解答を見ると6割の人間が間違った答えを選択している。自分もしっかりと間違えた。それくらいには、ストーリーの最初の方の出来事を詳細に記憶してはいないということになる。


だからこそ、今回のような朗読劇といった形で物語を振り返ることができるのはとても嬉しい。他にもアニメや劇場版、コミカライズといった形でのメディアミックスが行われていて、そうした媒体でもう一度ストーリーを追想できるのはなかなかに有難い。キャストの方の熱演もあって、はじめてプレイしたときの感動が呼び起こされ、さらに鮮明なイメージとなって心に焼き付いたような気がする。

個人的には2部2章が朗読で聞くことができたのがとても嬉しかったですね……。あの締め方は当時とても心に残っていて、そのときのことを思い出したこともあり、今回朗読を聞くことができてよかった。今後もやってほしいな……。

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