日記:麻酔が切れるまで

昨日もお酒を飲んでしまった。そこまで多量に飲んだわけではないのだけれど、週の終わりの疲れもあって、目が覚めた頃にはそれなりに体が重かった。1日のはじまりをバッドコンディションで過ごさなければならないので、飲み過ぎた日の翌日はいつだって後悔と共にあるのだが、飲んでいる間はそんなことを考えない。考えたほうがいいと思う。

午前中に歯医者の予約があったので、なんとか体を起こして外出した。ここしばらく、虫歯の治療ということで通っていたけれど、今日で終わりとのことらしい。行くか行かないかで言われたら、行かないほうがいいとは思うので、それなりに安堵する。

「麻酔しますか?」と訊かれて、痛いか痛くないかで言われたら痛くないほうが好ましかったので首肯した。しかし数瞬遅れて、麻酔のあとはしばらく食事ができないことを思い出す(口の中を傷つけてしまっても気づかないから、という理由だったと思う)。重い体をなんとか叩き起こして歯医者に来たものだから、朝食も摂っていない。それでも、歯を削るときの神経に響くような痛みを味わうよりは、空腹を堪えるほうが幾分いいだろうと思い直した。その頃にはもう麻酔を打たれていたので、もはや選択の余地はなくなっていたのだけれど。

小さい頃は虫歯になったことがなかったので、「歯医者が苦手」「ドリルの音を聞くと身がすくむ」みたいなあるあるに共感できなかった。そもそも歯医者に行く機会もなかった。最近になって歯を削られるという体験を得たのだが、これは確かに恐怖だと思った。体の内側を、物理的に破壊されていく痛みにただ堪えることしかできない時間。それは拷問にも似ている。映画やゲームで体を傷つけられるシーンを見るたびに、心臓に冷や水を浴びせられたような緊張が走る。そんな拷問と同じようなことを、人は歯医者で体験しているのではないか。

でも今日は麻酔をされていたので痛みは全くなかった。それでも恐怖がなくなるわけではない。「もし麻酔の効きが甘いところを削られたらどうしよう」みたいなことを考えると、どうしても怯えてしまう。何事もなく治療が終わって胸を撫で下ろす。

外出したついでに買い物でもして帰ろうかと思ったけれど、空腹で頭が回らなくなったのでそのまま帰宅した。ぼんやりと日記を書いていたらそろそろ麻酔が切れると言われた時間が来たので食事を摂ることにする。今日は本を読もう。

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