日記:散策と散財
第三十三回文学フリマ東京に行ってきました。
自分はいわゆるコミケに足を運んだことがなく(オタクなのに)、こうした同人誌即売会の存在はなんとなく遠いもののように感じていた。人混みが苦手だと言い訳はしていたものの、要するにそこにある熱量のようなものが怖かったのだと思う。うまく説明できないのだが、そこにいる人たちが本物で、自分が偽物であるということを暴かれてしまいそうだという感覚が心を支配していた。
年をとるということは多くのものを忘れていくことでもある。時が過ぎ、上述のような感覚もいつしか忘れてしまった僕は、なんとなくタイムラインに流れてきた文学フリマの情報を見て、なんとなく行こうと思った。会場に足を運んでも負けないだけの自信を持てるようになったという訳ではなくて、単に自分がどうしようもない人間であるという諦念が年々大きくなってきていることが理由なのだと思う。
開場の12時に到着するように家を出ようと思ったが、目覚めた時間は既に間に合わない時間になっていた。着いたのは13時頃で、受付の確認で少し並んだものの、すんなりと入場することができた。中に入ってみると、広い会場にたくさんの人が歩き回っていて活気がある。これが同人誌即売会というものか……と勝手に一人で感動していた。
まずは会場内を散策してみる。どれも魅力的なものばかりで、会場の本をすべて買うことができたらどんなに良いだろうと思う。特に同人誌は、ここで手に入れなければ出会うことのない本ばかりである。「限定」という言葉に弱い人間は、このような場所では財布の紐を固くした方がいい。自分は、立ち読みとかしたらなんだか申し訳なくて買ってしまう傾向にあるのでなおさらである。
しかし、事前にチェックしていた本を手に入れ、折角だからと気になった本も手に取っていくうちに、そうした自制は消えていった。最終的に、用意していた千円札と小銭がなくなるまで、収集は続いた。財布は軽くなったが、鞄はそれ以上に重くなった。散財してしまった…………。
文学フリマというのは扱うものが主に文字(小説や批評、詩や短歌)であるので、本の表紙だけを見て買うということはできない。これがイラストや漫画であれば、そこから窺い知ることのできる情報のみである程度の決定を下しても良い気がするが、文章である場合はその中身がどんなものであるのかを知る必要がある。
自分はタイトルや、ブースに簡単な作品紹介がある場合はそれを遠目で眺め、琴線に触れる部分があれば購入するということをしていた。そんなことをするからすぐにお金が無くなってしまう。次に来るときはもう少し振舞い方を考えなければならない。というか、ジャケ買いをするのではなくて、試し読みしてノットフォーミーだった場合にちゃんと辞去することができるようにならなければならない。なんて言って立ち去れば失礼がないのかな……。
たくさん買ってしまったのでゆっくり楽しみます…………。
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