日記:フィクションと実在性

先日、金曜ロードショーで放送されていた名探偵ピカチュウを録画で見た。あの映画も、ポケモンが現実にいたらこうなるだろうな、みたいな夢の世界を描いているように見える。夢が現実になったら。そんな、フィクションの実在性が非常に心地よかった。ポケモン好きなら見て損はない映画だと思います。

ポケモンといえば、最近、剣盾のDLC第一弾が配信されましたね。まだ最後まで辿り着けてはいないですが、ちょっとずつ触ってます。DLC配信日に放送されていた新作発表会では、歯磨きをポケモンと一緒にできるアプリとかが発表されていて、ああ、生活の中にポケモンがいるみたいで、いいなあと思っていた。pokémon goとかも、ARと位置情報を駆使して、現実世界にポケモンの存在を飛び出させることに成功している。子供の頃に夢見た世界が現実になっていくようで、感慨を覚えます。

ポケモンというのは言ってしまえばフィクションであるから、現実には存在しない、つまり非実在であるわけだ(そりゃそうじゃ)。でも、ゲームの中のキャラクターが現実にいたらいいのに、考えたことのある人は多いと思う。自分も子供の頃はポケモンが現実にいたらいいのにとよく夢想したものだ。10歳になったらポケモンと共に旅に出ることを夢見ていなかったといえば、まあ嘘になる。非実在であるからこそ、その実在を願ってやまない。そして思う訳です。この世界にポケモンがいたら良いのに。現実が、夢みたいだったら良いのに。

ポケモンに限らず、フィクションというのはその実現をどうしても願ってしまう側面はあると思う。物語の世界が現実になったらどんなに素晴らしいだろうと、子供の頃は思っていたし、大人になってもその情動が完全に消えることはない(流石に、無邪気に御伽話を信じるということは無くなったけれど)。ファンタジーの主人公のように魔法が使えたら、ジャンプ漫画の主人公のように強く戦えたら、ラブコメ主人公のような青春を送れたら。そんな叶えたい夢が詰まった宝石箱が、フィクションであるとも言える。我々は夢を見る。自分が魔法使いや、正義の味方や、他にも物語の主人公になって、非実在の力を振るうことを。

夢は、非現実的でなければならない。フィクションは、非実在であらねばならない。現実とそっくりな世界に対して、強く憧れたりはしない気がする。フィクションに惹かれてやまないのは、逆説的に言えば、そんなものは現実に存在しない夢想の産物であるからだ。

いつからだろう、そんな夢物語を純粋に信じることが出来なくなってしまったのは。サンタクロースの非実在を知ったときのように、この世界に魔法は存在しないということを、自分はいつの間にか理解していた。夏休みに異世界への扉は開かない。転校生が異能を扱ったりはしない。謎の妖精と出会わない。誰しも、いつしか夢から醒めて、現実を歩くようになる。

フィクションへの憧れを捨ててしまったわけではない。私たちは夢に向かって手を伸ばす。それは、あの輝きに憧れ、掴みたいと願うからだ。現実離れした夢物語であるからこそ憧れる。叶わないからこそ美しい。でも、やっぱり、夢は叶って欲しいのだ。

夢はきっと、現実とは遠いところで輝いている。僕は、その夢が現実になり得ることを信じたい。信じていたいと思う。どうか、夢が現実に降りてくることを。

…………そんな、フィクションはフィクションであることを頭では理解しながら、夢を見ることを捨てきれない僕のような人間にとって、適度に実在性を持ったフィクションが結構突き刺さる。冒頭で述べた『名探偵ピカチュウ』とかが、その際たる例ではないかと自分では思っているのだけれど、あんな風に現実と虚構を接続したような、夢を現実に融合させてしまったような物語は、夢を純粋に信じられなくなってしまった捻くれた人間に、もう一度あのとき感じた夢の輝きを思い出させてくれるような気がするのである。

まあ、ある意味では、そもそもフィクションに実在性は不可欠ともいえる。あんなこといいな、できたらいいな、を視聴者・読者がイメージ出来なければならないからだ。あまりに荒唐無稽な物語を全て受け入れることができるように、人の頭や心が作られているかと言われればそれは否であろう。共感を得られない物語がダメというわけではないと思うけど、ある程度受け手側の理解の範疇になければ、少なくとも簡単には受け入れ難い作品になってしまうのかなとも思う。

だから当たり前かもしれないのだけれど、僕は実在性を持ったフィクションが好きだ。もしかしたら叶うかもしれないと錯覚させてくれるような、現実の重力に少しだけ引かれた物語が好きだ。ほんの少し未来、あるいはほんの少しの運命のズレで、出会えるかもしれない希望をそこに感じるから。たくさんの物語から、現実を歩いていくための希望を受け取って、今日も生きています。

要するに:『名探偵ピカチュウ』とても面白かったです。

p.s.
そう言えば『劇場版 ポケットモンスター キミにきめた!』は映画館に見に行ったんですけど、サトシがポケモントレーナーとして実際に旅をしている様子が描かれていて、こちらも実在性を感じていいなあと思いながら観ていました。

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